プロダクト PRODUCT

できなかったことが、できる。実用性を突きつめた究極の義指

中村竜也 -R.G.C

我々が日常生活の中で行う、掴む、摘む、持ち上げるといった指を必要とする動き。この当たり前の動作が、1本ならまだしも5本すべて指を失った人たちからすると、不可能に近い大きな壁となってしまう。その悩みを解決すべく、欠損した指を隠すために装着する代替え品的な義指では到底実現できなかった、それらの動作を可能とした優れものが、どうやら登場したようだ。

補うだけではない、高いレベルでの実用性ある動きを実現

身体の欠損部位を人工物で補うことを主に言い、義肢やインプラント、人工臓器などがその代表例である “補綴(ほてつ)”という言葉をご存知だろうか。パラリンピック選手が、オリンピック選手の記録を上回るなど、10年前では想像もできなかったことが現実となっている裏には、その分野の目覚ましい技術の発達があるからだ。

そして今、ある意味、今まで不可能と思われていたことを可能とした、ものすごい製品が話題を呼んでいる。究極の義指 “The MCPDriver™ (https://www.npdevices.com/mcpdriver)” である。この優れものを開発したのは、アメリカを拠点に義指の開発をする企業 “NAKED PROSTHETICS” 社。高靭性、耐薬品性、耐摩耗性を備えた “ナイロン12” と、工業的に最も優れた素材のひとつである “スチール” を素材に採用することで、強度と繊細な動きを同時に手に入れた。ムービーを見ていただけば分かるが、この唯一無二の完成度は秀逸すぎると言わざるを得ない。

本来実現することの難しかった人間の関節の動きを補助することで、一般生活で必要とするほとんどの動作をカバーしてくれる。これさえあれば、たとえ5本全ての指を失っていたとしても、苦なく一般的な生活が送れるというわけだ。しかも、“The MCPDriver™” の製作に必要な情報が彼らの手に届いてからわずか、4~6週間で完成するというスピードも、これからの時代には最も求められるところ。

このような製品が実際に存在することを、必要とすべき方たちにまだまだ伝わっていない現状がある。そう思った時、もっと手軽に入手できる情報として広く提供することがHERO Xの使命なのだとあらためて感じさせられた。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/UGriTgS4078

(text: 中村竜也 -R.G.C)

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コロナウイルス影響化で進むバリアフリー。注目のプロダクト2選

Yuka Shingai

もはや生活の一部分になった感のあるマスク。素材や機能性を追求し、常時つけられるものが増えているが、先日、HERO Xでも紹介した口元が隠れないマスクが新たなスタンダードのひとつとなりつつあることをご存知だろうか。コロナウイルス対策としてある夫婦が始めたひとつの取り組みが、ノーマライゼーションを後押しするように、世界をゆっくりと動かし始めている。

聴覚障がいのある仕立て屋夫婦が
「口の動きが分かる」マスクを縫製中

欧州や米国に比べ、大きく報道されるケースが少ないものの、感染者数が急増している東南アジア諸国。なかでもインドネシアは感染者数が約15000人、死者数が1000人を上回っている。
スラウェジ島のマカッサル在住のBadaruddin夫妻は元々、仕立て屋としてクッションやシーツ、カーテンなどを製作していたが、ロックダウン以降、貧しい人向けにマスクの縫製に取り掛かり始めた。聴覚障がいを抱える2人が作っているのは自身と同じように耳が聴こえない人々、補聴器を使用している人も使える、口元がシースルー状になったもの。1日あたり約2ダースのマスクを生産し、1個10000~15000インドネシアルピー(約72~108円)で販売している。

「ある日、マスクをつけた人に話しかけられたのですが、私たち夫婦には聴覚障がいがあり、唇の動きを読まないと何を話しているのか分からないのです。だから私は自分自身のためのマスクを作ろうと思いました。耳が聴こえる人もそうでない人も着用できるマスクですから、人が話していることも理解できるし、耳が聴こえない人もコミュニケーションの機会を損なうことがありません」と妻のFaizah さんは語っている。

聴こえない不自由を知る当事者だからこそのアイデアとも言える透明マスクは、手話通訳者が着用していることで、昨今TVニュースや動画サイトでも目にすることが増えた。障がいによるコミュニケーションの齟齬を解消するデバイスやプロダクトの台頭が、バリアフリーに対する私たちの意識と理解を少しずつ変えてくれることは間違いないだろう。

次に紹介する「Dot Watch」も、障がいによるコミュニケーションの困りを解決するプロダクトのひとつだ。視覚障がいを抱える人の情報アクセスを、より簡単にしてくれるものである。

着信もテキストも点字でお知らせ!
新世代スマートウォッチDot Watch

韓国のスタートアップDotによる「Dot Watch」は、世界初の試みとなる情報を点字で表示してくれるスマートウォッチ。スマートフォンとBluetoothで接続し、着信やアラーム、スケジュールやメッセージなどの情報を文字盤に浮かび上がる点字から確認することができる。1回につき4文字表示され、クリアするタイミングは自分で調整が可能。

また、点字学習プログラムが内蔵されているため、デバイスの利用開始時には点字が完璧に理解できていなくても問題ないというのが嬉しいポイント。目が見える、見えないに関わらず、点字ってなんだか難しそう…と抱いていた先入観が払しょくできるかもしれない。
デバイスはわずか60グラムと非常に軽量で、防水&防塵加工も施されており、充電も1週間に1度でOK。アプリは9言語に対応、自動アップデートされるなど手に取るハードルがとことん低く設定されているところも非常に魅力的なアイテムだ。

障がいの有無やバックグラウンドに関わらず、誰もが意思疎通を阻害されないゴールを目指して、このようなプロダクトがどんどん生まれることに期待したい。

(text: Yuka Shingai)

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