医療 MEDICAL

MONTHLY PICK UP:自宅を拡張せよ

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業が在宅勤務を実施するなど、人々の自宅待機が推奨されている現在。一方で、“不要不急の外出”のレベルは、個人の仕事や環境、状態の違いに依存するところも多く、すべての人が一斉に自宅待機とはいかないのが実情です。そこで今月のまとめでは、自宅でできることの幅を広げるためのプロダクトやサービスをご紹介します。

自分の分身が接客!?
職場と身体を切り離すVR遠隔操作ロボ

企業の在宅勤務が進む今だからこそ注目したいのが、昨年の5月にご紹介したJALの遠隔操作ロボットによる接客の実証実験です。実験に使われたのは「JET(ジェット)」という遠隔操作で動く分身ロボット。自宅にいながら接客サービスを提供することは可能なのか。実験の様子をご紹介します。

スマホひとつで医師の診察が受けられる!
5Gで進化する疾患管理システム「YaDoc」

以前から注目されてきたオンライン診察ですが、今回の新型コロナ騒動を受け、その活用が加速する兆しが見えています。そんな中、改めてご紹介したいサービスが、スマホひとつで医師の診察が受けられる「YaDoc」。医療の常識を大きく変えるサービスとは、いったいどのようなものなのでしょうか。

妊婦の不安を自宅で解消!
IoT型胎児モニター
「分娩監視装置iCTG」とは?

ただでさえ、病院に行くのが不安なこの時期、妊娠中の方はなおさらかもしれません。そんな妊婦さんの不安を和らげてくれるアイテムが、国内初となる IoT型胎児モニター「分娩監視装置 iCTG」。自宅にいながらにして、胎児の心拍と妊婦のお腹の張りが計れる装置にできることをご紹介します。

サプリメントもオーダーメイドの時代!
「healthServer」とは

慣れない在宅勤務や自宅待機は心身の疲弊にもつながります。そこでご紹介したいのが、個人のデータに基づき、最適なサプリドリンクを提供するオーダーメイドサプリメントサーバーサービス「healthServer」。個人用にも販売されている注目のサプリメントサーバー、ぜひこの機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

ベッドの上で、行きたい場所へ。
完全オーダーメイドのVR映像サービス
「360VR omoieizo」

外に出られない日々が続くと、どうしても気が滅入ってしまうもの。そんな時は、VRで旅をしてみるのはいかがでしょうか。完全オーダーメイドの映像を使ったVR外出擬似体験サービス「360VR omoieizo」は、本来、終末期の患者さんなどをサポートするために開発されたサービスですが、今後、その活用の場はより多く広がっていくかもしれません。

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医療 MEDICAL

たった1分で病理診断が可能に。AIで医療を変革する会社「メドメイン」に注目 前編

下西 由紀子 | Yukiko Shimonishi

「精密検査」と聞くと、検査を受けてから結果が出るまで時間がかかるもの、というイメージをお持ちの方が多いだろう。時間がかかる最大の理由は、細胞組織を診断する病理医の不足だ。そんな中、わずか1分程度で病理画像を解析するAIソフトの開発に取り組み、急成長を遂げている会社がある。九州大学医学部の学生が立ち上げたスタートアップ、株式会社メドメインだ。

医学部生が立ち上げた
医療に特化したスタートアップ

社名のメドメイン(Medmain)は、医療を表す「Med」、IT用語でネットワーク領域を表す「Domain」、将来的に医療の中枢にという願いを込めた「Main」の3つの言葉を組み合わせた造語。九州大学の医学部生、飯塚 統(いいづか おさむ)さんが中心となり、2018年1月11日に立ち上げた医療ITの会社で、九州大学「起業部」第1号のスタートアップだ。患者から採取した細胞組織にがん細胞や腫瘍がないかをAIで診断する病理画像診断ソフト「PidPort」(ピッドポート)を開発し、2019年中の製品化を目指している。

創業時4名だったスタッフは、わずか1年で約60名に(うち4名は大学在学生)。資金も2社を引受先とした第三者割当増資により、1億円を調達した。開発の中枢を担うのは、飯塚さんと韓国人のAIエンジニア、フランス人のWebエンジニアで、ほかにもイギリスとクロアチアのエンジニアが母国よりリモート参加している。開発にあたっては、19名の病理医と契約、また国内外20の医療機関と連携して共同開発を行っている。

日々データ画像を見ながら開発を進めている

PidPortは、大量の病理画像をAIに学習させるDeep Learningと独自の画像処理技術によって開発された。患者の病理画像データをアップロードすると、AIが診断項目をチェックして解析を行う。かかる時間は、わずか30秒から1分。スピーディーなだけでなく超高精度。その解析をもとに医師が最終的な診断を行い、早ければ検査当日に患者に結果を告げることが可能だ。

従来、病理医が行う方法は、患者から採取された細胞組織の標本を、顕微鏡を使って確認し、診断していくというもの。現在、日本には約2000人の病理医しかいないことから、ほとんどの病院では、病理医のいる施設へ標本を送り、診断結果を待つことになる。患者は結果が出るまで1週間から3週間、待つことを余儀なくされる。メドメイン社の事業開発責任者、岡本 良祐(おかもと りょうすけ)さん(熊本大学 医学部在籍)によると、「乳がんの疑いがあると言われた患者のうち、約3割の人が検査結果が出るまでに軽いうつ病にかかるというデータがある」という。

患者側、医療者側、
双方に生まれる大きなメリット

現時点では、研究のためα版として特定の医療機関のみでテスト運用しているが、もし製品化されれば、患者側、医療者側、双方にとって大きなメリットがある。

患者にとっては、待つことに伴う精神的な負担が軽減される。また、待つ間に症状が進行してしまう場合もあるので、それを食い止めることも可能になる。

一方、医療者側にとっては、早めに適切な医療サービスを提供できるという利点がある。

しかし、それだけではない。「このソフトは病理医の労働環境の改善にもつながる。病理医の仕事は、膨大な量のデータを顕微鏡で見て慎重に診断を行う過酷なもの。ソフトを導入することで、病理医1人にかかる負担を軽くすることができる。AIはレアな病気を発見することも可能なので、支援ツールとしても活用できる。また、病理医の多くは、病気を発見するだけでなく、その病気の原因や進行の様子を研究したいと考えている。AIを導入することで、病理医が自分の研究に力を注ぐ手助けになると考えています」(岡本さん)

現在は、ニーズの多い胃と大腸の診断に限定しているが、次は乳がんなどの婦人科系にも力を入れ、最終的には全部位を網羅したいと意欲を示している。

メドメイン株式会社HP https://medmain.net/

後編へつづく

(text: 下西 由紀子 | Yukiko Shimonishi)

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