テクノロジー TECHNOLOGY

世界最大級の電子機器展「CES2019」で発表された話題のアイテム5選

富山英三郎

2019年1月8日~11日の4日間、アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級の家電・エレクトロニクス技術展示会「Consumer Electronics Show (CES) 2019」。毎年開催される世界最大規模のこの見本市では、この1年のみならず、これからの未来を予見させる製品や技術が集まるだけに、全世界から18万2000人以上が来場。参加企業はなんと4400社以上というビッグスケール。今年は最新のテレビやオーディオといった家電の分野だけでなく、5G回線を使った製品や、AI搭載製品、モビリティ関連、ヘルスケアといったジャンルが話題になっていた模様。その中から、気になる製品を5つピックアップしたので紹介していきたい。

高い場所にいても車イスのまま乗り込める!?
災害時にも役立つ四足歩行可能なモビリティ

韓国の自動車メーカーであるHyundai(現代自動車)は、通常は4輪自動車のように高速走行ができ、いざというときには四足歩行での移動ができる「Elevate」のコンセプトデザインを発表した。

車輪を変形させて四足歩行モードになると、前後左右だけでなく上部にも移動でき、高さ5フィート(約152cm)の段差をも登ることができるという。もちろん、障害物をまたぐことも可能。これにより、地震や噴火、水害、大雪といった各種自然災害時の救助に役立てることもできる。また、欧米のアパートなどに多い、建物の正面階段を上ることができるため、タクシーとして利用すれば車いすユーザーも容易に乗り込むことができるといった使い方も披露された。

動力はEV(電気自動車)であり、Hyundaiではこれを「Ultimate Mobility Vehicle(究極の移動手段)」と謳っている。

自動運転機能搭載の車イスに
シェアリングサービス機能をプラス

横浜に本社を置くWHILLは、自動運転・自動停止機能を備えたパーソナルモビリティを発表。これは空港や商業施設などでのシェアリングを想定しており、アプリでWHILLを呼び出したり、乗り捨てたあとは自動で待機場所に戻るといった機能も搭載されている。

開発のきっかけとなったのは、空港や駅、商業施設などで、車いすの介助や、車いすの回収に多くの人手が必要とされている現状がある。とくに先進国の多くは「旅客の権利」が保護されており、EUでは乗客の乗降に必要な支援を無償で提供することを、事業者に法令で義務付けている。そのため、航空業界では車いすの介助や回収のための人手やコストが年々増え続けているというのだ。運用側にとっては費用が抑えられるという利点があるが、利用者にとっても人の手を借りずに好きな場所に移動できるというのは大きなメリットである。

すでにオランダのスキポール空港や英国のヒースロー空港などで実用化に向けた協議が進められており、いずれはスポーツ施設や商業施設、観光地などでも順次実用化されていく予定。なお、「WHILL自動運転システム」は、CES2019のAccessibilityカテゴリで最優秀賞を受賞した。

自分の健康状態を常にチェック!
いつでもどこでも心電図、家庭で心血管疾患検出

フランスのメーカーWithingsは、いつでもどこでも心電図が取れるアナログウォッチ「Move ECG」と、自宅でさまざまな心血管疾患を検出できる血圧・心拍数・心電図監視・デジタル聴診器を搭載した「BPM Core」を展示。

「Move ECG」はウォッチケースに指を置くだけで、20秒後に心電図が記録されるというもの。データは専用アプリを搭載したスマートフォンなどにリアルタイムで表示され、専門家に相談が必要な場合は警告が発せられる。さらに、心電図記録を医師に送信することも可能だ。

本体は、12ヶ月という長期のバッテリー寿命と最大50mの耐水性を実現。運動を促進させる機能としてのウォーキング、ランニング、スイミングの自動追跡や、体重や睡眠状態も記録してくれる。さらに階段昇段用の高度計も搭載。

「BPM Core」は、Afib(心房細動)と心臓弁膜症のリスクを検出するための心電図とデジタル聴診器を統合したスマート血圧モニター。腕に巻いた状態で3種類(血圧モニター、心電図、デジタル聴診器)を測定することができ、すべては90秒で終了する。本体のLED表示で結果を確認することができ、専用アプリを使えばすべての履歴を確認することも可能。

アメリカでは成人の3人に1人が高血圧に苦しんでいるといわれ、米国心臓協会と欧州高血圧学会は共に、高血圧症に苦しむ人に向けた腕用カフスタイル機器による在宅血圧モニタリングを推奨している。

「Move ECG」「BPM Core」ともに、CES2019のINNOVATIONアワードを受賞。

世界初の8K OLED(有機EL)テレビは
これまた世界初の巻き取り式!

韓国の家電メーカーLGからは、世界初の巻き取り式テレビ「The LG SIGNATURE OLED TV R」が登場。テレビを観ないときは自動でくるくると巻かれてボックスに収納されるというのは画期的。ディスプレイは、すべてを露出させるFull Viewと、時計や写真フレームなど必要なサイズの画面を露出させるLine View、すべてを収納させるZero Viewの3つのモードを用意している。

今回発表されたのは、8K(7,680×4,320)で88インチという末広がりな仕様。これまではテレビの置き場所次第で部屋の使い方が限定されてしまったが、これがあれば設置場所のバラエティも増え、何より空間を美しく演出することができる。

CESでは他に、中国のスタートアップ企業ROYOLEより曲げられるスマホ「FlexPai」が展示されるなど、OLED(有機EL)は今後も大きな発展が期待される。

役に立たない家族型ロボットに
海外メディアも注目!

日本ではすでに購入予約も始まり、さまざまなメディアで取り上げられて話題になっている家族型ロボットの「LOVOT(ラボット)」。日本のロボティクスメーカー、GROOVE Xによる製品だ。これは、家族の一員として愛されるペットのような存在を目指したもので、掃除や洗濯をするなど家事を担ってくれるといったことはしてくれない。しかし、人肌に近い体温があり、抱き心地にもこだわって作られているなど、とにかく愛くるしい。また、世話してくれる人の顔を覚える顔認証(イヤがることばかりする人には寄ってこなくなる)、視線を合わせる機能、後ろをついてくる追従機能、抱っこするとホイールを自動で収納して抱っこをねだるモード、障害物を検知してぶつからずに移動する機能などを搭載。

基本的には愛でるものだが、本体にはAIや各種センサー、カメラなどが搭載されており、人を検知すると撮影して報告してくれるお留守番機能や、赤ちゃんの見守り、家の見回り、抱っこされた時間やお着替えされた時間など毎日の様子をプライバシーに考慮しつつ記録するダイアリー機能などを有している。

家族の一員としてのロボットは極めて日本的な発想だが、その愛くるしさやユニークさにBBC、CNETといった大手メディアからも取り上げられ、大きな注目を集めた。

(text: 富山英三郎)

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【イベントレポート】世界の叡智を結集!ビジネスカンファレンス「Innovation Garden」

小泉 恵里

ポストコロナ時代の日本流イノベーションを海外へ発信するビジネスカンファレンス「Innovation Garden」が、2020年10月9日(金)・10日(土)の2日間に渡って開催された。世界最高峰のイノベーター達をスピーカーに迎えたプログラムでは活発なディスカッションがオンライン上で繰り広げられ、盛り上がりをみせた。注目のカンファレンスや、編集長・杉原行里とプロデューサー佐藤勇介が登壇したワークショップを中心に紹介していく。

「Innovation Garden」とは

本年初開催となる「Innovation Garden」は「ARS ELECTRONICA」「BORDER SESSIONS」「C2」といった世界最先端の3つのカンファレンスが一堂に会し世界の叡智を集結させたイベント。オンラインとオフラインを融合させたカンファレンスで、東京・晴海の施設CLT PARK HARUMIを配信拠点にカンファレンスの模様が世界同時オンライン配信された。
時代を牽引する多彩なビジネスリーダーたちをゲストに迎え、国境や業種の壁だけでなく、登壇者と参加者の壁も越境するセッションやオンラインの手法を導入したワークショップが開催され、2日間の会期中、30以上に及ぶプログラムと、行動ログに基づくマッチングを体験するイベントとなった。

「共創と共生を生む日本型イノベーション」を共通テーマに、様々な業界を横断して価値観をぶつけ合い、そして混ざり合うトークセッションが繰り広げられた。登壇者には建築家の隈研吾氏、⼤阪⼤学基礎⼯学研究科教授・⽯⿊浩氏、台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏、田村淳氏、三浦瑠麗氏という豪華な顔ぶれ。従来の一方的なトークセッションとは一線を画す聴講者参加型のスタイルで、参加者が自由に質疑応答やリアクション機能(♡、!ボタンなど)を使うなど、インタラクティブなコミュニケーションがはかられた。

DXの活用は、一人ひとりの豊かさ、
その人らしい人生に寄り添うためのもの

数あるラインアップの中でHERO Xが注目したのは、「超高齢化社会の幸福とデジタル」をテーマにサントリーウエルネス 代表取締役社長 沖中直人氏と、慶應大医学部教授の宮田裕章氏が行なうディスカッションだ。今後ますますDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む医療業界だが、海外の例はどうなのか、今後期待できる分野は、そしてどのようにすれば高齢者たちにも使いやすいものになるのか、という問題解消に向けたビジョンも議題に上がった。

慶應大医学部教授 宮田裕章氏

宮田氏は、超高齢化時代だからこそDXによって一人ひとりに寄り添う医療が可能になるはずだと、DXが牽引する明るい未来について示唆した。
「超高齢化社会に突入する今、病気になってからの対応だけではなく、より早い段階からの対応が必要です。これまでの医療機関が保有するカルテなどのデータだけではなく、5G 環境下で活用可能になる IoT データや、個々のスマートフォンなどから得られるライフログデータが重要になります。例えば、一人ひとりを個で捉えるデータベースがあれば服薬歴なども把握することができますし、食事管理も可能になります。一人ひとりの健康が自然にサポートされる世界観がやってきているのでしょう。デジタルを使うことで、コストを大幅にかけることなく、医療が一人ひとりに寄り添えるようになってきた。これがDXの大切なところだと思います。また、病気の時だけではなく人生のいかなる時も、マイナーな不調がある時もカバーできるようなケアが必要です」

サントリーウエルネス 代表取締役社長 沖中直人氏

サントリーウエルネスの沖中氏は「サントリーウエルネスはデジタル技術を使って一律のサービスを提供するのではなく、個客起点でのDXに取り組みたいと考えています。我々は人間の影の部分を理解し、共感した上で個客一人ひとりの伴走者でありたいと考えており、これは社是にある『人間の生命の輝きを目指し〜』という考え方ともつながっています」とデジタル技術を駆使することで目指すべきゴールについて強く訴えた。

さらに沖中氏は、超高齢社会に突入するわが国の現状と、時代の変化に伴い、健康の定義をそろそろアップグレードする必要があることも示唆。「例え病気があっても、その人らしく人生を輝かせながら生きることができます。それは、人それぞれまた、瞬間瞬間で違うのです」(沖中氏)

「私は介護の分野も見ていますが、要介護レベルの方でもウェルビーイングを諦めるのではなく、散歩や手芸など一人ひとりが大事にしている趣味や生きがいに寄り添うことが大切だと思っています。一人ひとりの豊かさに寄り添うことにとって、その人がこの先の人生を幸せに生きていくことができる」(宮田氏)

「人間の命の輝きは誰かに見ていてもらわないと分かりません。そこで最後はコミュニティーが大事だと思います。生きている実感は人との支え合いがあるからこそ感じる幸せなんだと思います。一人で生きていくことができないからこそ、デジタルというツールを使って人との繋がりをサポートしていければと思います」(沖中氏)

一人ひとりに寄り添う、共有する価値づくりへと時代は変化している

 

一方、社会がデジタル化していく中で高齢者の方々はデジタルを活用することができずに取り残されてしまっているという話もある。これに関しては、わが国でも早急に取り組むべき問題のひとつだ。

「どういうきっかけがあればデジタルを使いたくなるのか、利用する側に立ってフックとなるものを作っていくしかありません。例えば中国では、お孫さんへのお年玉はスマホを使ってアリペイであげるようです。また、お見舞いに行くのは大変だったけれどZOOMお見舞いで対話すればもっとゆっくり話せるし、ラクです。韓国でも高齢者のスマホ利用率は90パーセント以上です。日本だけが高齢化社会という訳ではないので、今後はデジタルをどう使うかのきっかけ作りが必要です。日本はDXで世界に遅れをとってしまいましたが、デジタルがあればコストを大幅にかけることなく、一人ひとりに寄り添えるようになる。これがDXの大切なところです」(宮田氏)

コロナ禍、さらに注目される
“防災” イノベーション

イベント参加者も参加できるワークショップのコーナーでは「ポストコロナの防災プロダクトをプロトタイプする」の回に弊誌編集長・杉原行里と日本での「BORDER SESSIONS」開催に携わる弊誌プロデューサーの佐藤勇介も登壇した。

現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響により生活様式が大きく変わるなか、防災に関する意識が高まっていることをご存知だろうか? コロナ禍で豪雨等の災害に見舞われたここ日本でも、感染を恐れて災害時も「自宅で待機する」「車中泊をする」「親戚や知人宅で待機する」という人が多くみられ、たくさんの命が危険にさらされる恐れがある今、防災プロダクトも新たなものが求められているはずだ。
また、その一方で、防災産業の市場規模は年々拡大傾向にあり、テクノロジーの進化とともに、様々な防災プロダクトが誕生している。今回のワークショップでは、斬新なアイデア、実例を含めて世界中から気鋭のプロダクトメーカーやデザイナーたちのプレゼンテーションが行われた。

冒頭では、テクノロジーと災害事例について紹介。英国北部向けの専用ヘリコプター緊急サービスを運営するGravity Industriesが開発したジェットエンジン搭載スーツ(ジェットスーツ)を用いた山岳救助向けテスト飛行実験した様子が映像紹介された。生き埋めになったしまった人の微弱な電波を検知し、探索と救助に役立てる。人間がジェットスーツを着て空を自由に飛び、山岳で怪我をした人をいとも容易く発見する様子は圧巻だった。

また、オランダのデザインチーム・SAFE CASTからはフィリピンの洪水地域に住む人々の生活をFloating Homes という “水に浮かぶ持続可能な建物” が救った例が紹介された。

編集長でRDS代表の杉原行里は、モータースポーツで培った技術を防災産業に活用すると話した。
「新しいモノ作りのカタチを世界に発信する研究開発型の企業のRDSは、F1チームをはじめ、モータースポーツ、医療・福祉、最先端ロボットの開発など、多数の製品開発に携わってきました。RDSの技術力や培ってきたノウハウを使い、全国で頻発する自然災害に対して、防災意識の向上や災害時でも平時でも活用することができる移動手段、デュアルなプロダクトの開発・販売に取り組んでいきます。日常の暮らしも便利になるモビリティ・プロダクトの開発が可能で、ロボットが遠隔操作で危険な場所を調査・捜索、また災害時の避難サポートをしたりすることで逃げ遅れる人を助け、一人でも多くの命が救われるようにしたいです」

また、ワークショップ参加者のなかには、日本ではおなじみのポイントに目を向けて防災に繋げるプロジェクトを立ち上げたBOSAI POINTの亀山淳史郎氏の姿も(関連記事:http://hero-x.jp/movie/9138/)。参加者のなかでも注目されたこのプロジェクトについて次のように説明した。

「日本には、ポイントサービスが数多く存在しており、その9割が使用されずに失効しています。『BOSAI POINT』は、お買い物時に得たポイントを使って寄付することで、未来の被災地に支援を届けるポイントドネーションシステムです。寄付されたポイントはお金に換算して、非常食や充電機器などの支援品の購入にあてられます。未来の災害に備えてストックし、災害時に全国各地の避難所に届けています」

弊誌プロデューサーの佐藤勇介は、「今回参加されたさまざまな企業がコラボレーションを行ない、新しいプロジェクトや製品が生まれたらいいですね。また近いうちに集まりましょう」と、参加者がそれぞれの強みを生かしながら次なるステップにつなげていきたいと意欲を話した。

新型ウイルスの感染拡大という未曾有の時代に遭遇し、私たちはいま正解の見えない世界に生きている。一体どこに進んだらいいのか……。そんな時は、世界の叡智を集めて意見を聞いてみるのもひとつの手だ。柔らかな発想から生み出されるハイテクな防災プロダクトが世の中に出てくるのも楽しみ。日本発の果てしない可能性を感じたカンファレンスだった。

(text: 小泉 恵里)

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