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あなたは正しく歩けてる?歩行状態を見える化する「Q’z TAG™ walk」

田崎 美穂子

住友電気工業は、歩行状態を計測・評価するシステム「Q'z TAG™ walk(キューズタグウォーク)」の販売を、2017年6月30日から開始した。超軽量センサーを腰につけて歩くだけで、歩き方を分析して運動プログラムを助言してくれる、画期的なシステムである。

「Q’z TAG™ walk」は、15グラムの超軽量計測センサーを腰につけておよそ10メートル歩くだけで、歩行状態をグラフなどのレーダーチャートで評価し、その計測結果から、改善ポイントや個人に合った運動プログラムをアドバイスするシステム。

10メートル歩く間に、センサーがパソコンと無線通信し、歩行データを取得。それを独自のアルゴリズムを用いて数秒で解析、「動き」「バランス」「速さ」「リズム」などの指標で歩行状態を〝見える化″する。センサーは超軽量なうえに、Bluetoothと接続しているため、計測場所や通信環境を選ばず、簡単かつ気軽に計測できることも大きなポイントだ。

しかし、評価やアドバイスをもらっても、難しいのは「続けること」。「Q’z TAG™ walk」は、過去データとの比較、計測スタッフと計測対象者との対話を促すためのコミュニケーションシートなど、“継続”のための仕掛けづくりも、さまざまなツールでサポートしている。

この一連のシステムを、京都府立医科大学などと協力して実証実験した結果、「リハビリ、運動に対するモチベーションの向上」「適切な運動を重ねたことによる身体機能の改善」「挫折することなく運動を継続できた」など、大きな効果が確認された。

消費税抜きの価格は15万円から、介護施設やフィットネスクラブなどに提案しながら、2017年度内に300台の販売を目指しているところだ。

歩行改善や運動プログラムの助言だけではなく、加齢により身体機能が低下してしまった、あるいはケガや病気の後遺症で歩行が困難になってしまい、歩く楽しみを失ってしまった人が、再び自力で歩行できるようになる。歩く喜びを取り戻してくれる「Q’z TAG™ walk」は今、介護・リハビリ現場やフィットネスクラブにも大きな変革をもたらすであろう。

(text: 田崎 美穂子)

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点字への自動翻訳も可能!誰もが使える立体イメージプリンタ「Easy Tactix®︎」

今井明子

外国語表記と同じような感覚で、印刷物に点字が入れられたら、どんなに便利な世の中になるだろう。SINKA株式会社によって開発されたコンパクトな「EasyTactix®︎」なら、それが実現できるのだという。このプリンターの普及につとめる営業・マーケティング部長の高梨晴彦さんにお話を伺った。

プリンターだけでなく、紙もソフトも開発

驚くほどコンパクトでシンプルな見た目。そして、印刷するときの音はとても静か。確かにこれなら気軽な気持ちで使ってみたいと思ってしまう。それが、立体イメージプリンター「EasyTactix®︎」を最初に見た印象だ。

このプリンターによる印刷物は、点字だけでなく、写真や絵も立体的に表現できる。「EasyTactix®︎」が印刷できるのは凹凸だけだが、市販のインクジェットプリンターで文字や絵を印刷し、それから「EasyTactix®︎」で凹凸を印刷すれば、健常者も視覚障がい者も使える印刷物ができる。まさにボーダーレスなプリンターなのである。

このプリンターを開発したのは、SINKA株式会社。もともと、SINKAの技術者は、プリンター関連の企業に在籍しており、クレジットカードなどの凹凸を印刷する技術や、会社の社員証を印刷するためのコンパクトなプリンターの技術を持っていた。それらを何かに活かせないかと考え、コンパクトな立体イメージプリンターとして製品化したのが、「EasyTactix®︎」なのである。

あらたに開発したのはプリンター本体だけではない。プリンター専用の紙とソフトもだ。紙の開発にあたっては、10種類以上の紙を実際に視覚障がい者にさわってもらい、意見を聞きながら最適なものを選んだ。

「プリンター用の紙は凹凸を押してもへこまないこと、指で読み取りやすい凹凸の高さが印刷できることが第一条件ですが、指でさわったときに滑りやすいかどうかも大切だということが、視覚障がい者にさわってもらって初めてわかりました。すべりにくい材質だと、指がひっかかってしまって読みにくいのだそうです」(高梨さん)

そして、プリンター用のソフトは、健常者がワードやエクセルで作った文書を点字に翻訳してくれるというもの。このソフトのおかげで、点字を勉強していなくても、簡単に視覚障がい者向けの印刷物を作ることができる。このように、誰にとっても取り扱いが簡単なのも、このプリンターの魅力のひとつなのである。

「本来なら、プリンターだけ弊社で作って、紙やソフトの開発は外注するという方法もあると思います。しかし、あえてそれをやらずに弊社ですべて開発したのは、外注するとそれだけ発売が遅れてしまうからです。なるべく早く、必要な人に届けたいという思いがあり、弊社ですべて開発することにしたのです」(高梨さん)

発売開始から半年。国内外で約700台が、学校や自治体などに出荷された。盲学校からは「簡単に素早く教材を作れて時間が節約できる、しかも質のよい教材が作れる」という評価をもらっている。

しかし、普及するには課題がある。最も大きな課題がその価格だ。発売当初の販売価格は448,000円(税別)、専用用紙200枚セット12,000円(税別)だった。今年の6月からは、一般向けには本体298,000円(税別)、学校や障がい者手帳を持っている個人向けには、本体価格を180,000円(税別)で提供することにした。

価格は原価ギリギリ。開発費はペイできないという。それでも値下げしたのは、「早く必要とされる人に届けたい」という思いがあるからだ。

「このプリンターは盲学校から『買いたい』というご要望をたくさんいただきます。しかし、盲学校での購入は予算的に厳しく、先生個人が購入して教材を作成されているケースもあります」(高梨さん)

今後生産台数を増やし、さらに価格を下げるためには、学校以外にも活躍の場を広げる必要がある。盲学校の次に活躍の場として見込めそうなのが、自治体、公共施設、図書館などだ。自治体、図書館、その他公共施設では点字資料や点字本を出すために、もともと点字プリンターが普及している場所である。しかし、従来の点字プリンターは大型で音も大きいため、バックヤードで印刷しなければいけないのが難点だった。その点、コンパクトで音が静かな「EasyTactix®︎」なら、窓口で職員がちょっとした案内をプリントして渡すような使い方もできるかもしれない。

ほかにも、「EasyTactix®︎」の活躍の場はまだまだありそうだ。たとえば、レストランのメニューに簡単に点字を入れたり、駅の構内の案内図に点字を入れて、視覚障がい者に配ったりすることもできるだろう。

「現状では駅の構内図は案内板に点字が表示される形式ですが、視覚障がい者が案内板にたどり着くまでがひと苦労です。今はそういった方が駅に入ったら駅員が付き添う場合もありますが、点字入りの案内図(触知図)を渡せたら、視覚障害者の方はより安心して歩行できると聞いています」(高梨さん)

とにかく、多くの人に「EasyTactix®︎」を知ってもらいたい。今の高梨さんの仕事は、営業活動2割、普及/啓蒙活動8割。さまざまな展示会に参加し、数多くの人に触ってもらって、どんなことに使えそうかを考えてもらいたいと思っている。

「健常者が使っている印刷物に点字が入っている。健常者も視覚障がい者も意識なく同じように使えるドキュメントが当たり前のように世の中に存在している。そういう世界を目指して活動しています」(高梨さん)

普及に力を入れる一方で、よりよいものへのブラッシュアップも欠かせない。まずはプリンターのスピードアップは課題のひとつだ。

点字と文字が併記され、文字がソフトで点字に変換される。2020年の東京オリンピック・パラリンピックが追い風になり、「外国語入りのパンフレットに点字も入れたい」というデザイン会社からのリクエストも聞くという。まるで点字が外国語のように身近な存在になる。それが「EasyTactix®︎」の示す可能性なのだ。

(text: 今井明子)

(photo: 増元幸司)

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