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未病対策装置はデザインも◎ 歩行解析ロボットが世界的コンペティションでゴールド受賞

HERO X 編集部

イタリアで開催される世界最高峰のデザインコンペティション「A’ Design Award & Competition 2020-2021」の受賞プロダクトが発表になり、株式会社RDSがエントリーした3つのプロダクト全てがゴールドを初めとする各賞への入賞を果たした。この特集ではそんな受賞作品をフォーカスしていく。

ゴールド受賞 社会課題解決型ロボへの期待
普段通りに歩くだけで健康課題を可視化

平らな直線を5メートル往復歩行するだけで、人の健康状態を測定し、さまざまな疾病や進行度を分析できる装置、健康寿命についてさまざまな課題を抱える現代社会において、そんなロボットが誕生したと聞けば、多くの人が関心を持たずにはいられないはずだ。そんなヘルスケア領域のプロダクトで、RDSが開発した歩行解析ロボット『Gait Analysis Robot Medical Health Measurement System』(仮)がメディカルデバイス・医療機器デザイン部門のゴールドを受賞した。

この装置のすごさはその測定方法にあると言える。従来の動作解析とは異なり、実に簡易的なのだ。3Dカメラを搭載したAGV(無人搬送車)ロボットが、歩く被験者の後ろを追跡しながら歩行中のデータを集め、歩行状況を正確に把握するというもの。あらゆる疾病の原因と密接に関係している「歩行」に注目し、これまで発見が難しかった病気の早期発見と予防に期待のかかるプロダクトだ。

歩行状況は、認知症、脳卒中、関節疾患及び骨折・転倒など、健康寿命を縮める原因として注目されている。たとえば高齢者の転倒による骨折から寝たきりというパターンも多いため、転倒予防(転倒リスク)の観点からも、簡単にセルフチェックできる歩行測定の必要性を感じる医療従事者も多くいた。こうした社会的な背景もあり、このロボットへの期待が高まっているというわけだ。

また、リハビリなどの機能訓練の場においては、その効果を測る手段としても有効だ。訓練を提供する施設や事業者にとっては、リハビリによって利用者の身体機能がどれくらい改善したのか、個別機能訓練加算という視点からも評価する必要がある。歩行状況を正確に把握することが、さまざまな観点から有効であることは広く知られるところであり、スマホの登場で歩行測定は簡便に実施できるようになっていた。だが、こうした簡易な方法によるデータは、精度の低さなど多くの課題もある。

確かなデータが取れる新たなプロダクト

一方で、歩行スピードや歩幅の計測だけでなく重心の移動まで推定するなど、本格的な歩行分析には、人にマーカーを装着して測定する光学式動作解析システムが必要だが、そのような高性能な機器を揃えている施設は限られている。さらに、一人当たりの測定準備にも手間がかかる。高価で手間がかかることから実施できる人数が限られ、分析に必要なデータを収集できないという課題もあった。

その点『Gait Analysis Robot Medical Health Measurement System』は、クラウドサーバー上で協力医療機関のもつ疾病データとAIで照合し、被験者のさまざまな疾病や進行度を測定する。将来的にはRDSが持つデータバンクと照合することで、歩行データからの疾患の発見を目指すことが開発コンセプトとなっており、従来は発見が難しかった脳卒中など多くの疾病の前兆となる体調の変化や未病対策への活用など大きな期待がよせられている。『Gait Analysis Robot Medical Health Measurement System』は歩行解析情報のデータバンク化に向けて、大きな一歩となった。

今回の受賞を称え、同プロダクトのネーミングを日本ヒップホップ界のレジェンドGAKU-MC(ガクエムシー)が担当するという情報もある。世界のリハビリを変えるとまで言われるこのプロダクトにどんなネーミングが付けられるのか、引き続き注目していきたい。

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(text: HERO X 編集部)

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たったひとりの課題がファッションを変える。041×㈱ユナイテッドアローズが生み出した“最先端”ウェアとは?

長谷川茂雄

“WE”の力で社会の課題を解決していくソーシャルユニット“Social WEnnovators(ソーシャルイノベーターズ)”をご存知だろうか? 同チームが起点になって動き出した041(オールフォアワン)プロジェクトは、これまでスポーツやレスキューの分野で、“一人が直面している課題”にフォーカスすることで、画期的な解決策を見出してきた。そして2018年の4月にスタートを切った新プロジェクト“041 FASHION”では、賛同した㈱ユナイテッドアローズ(以下UA)と共同で障がいのある一人のユーザーの課題を掘り下げることで、これまでなかった服を開発し、販売まで実現した。それは、ある意味、トレンドやマーケティングに左右されない新しいファッションのかたちを提唱している。同プロジェクトのキーマンであるSocial WEnnovatorsの澤田智洋氏と、UAの栗野宏文氏にお話を伺った。

世の中のトレンドからではなく
ひとりの課題から始まる服作り

2016年に発足したSocial WEnnovatorsは、株式会社電通、日本テレビ放送網株式会社、一般財団法人ジャパンギビングに籍を置く複数の社会起業家が、互いの領域を行き来しながらアイデアを出し合い、“WE”の力であらゆる社会課題と対峙し、解決していくソーシャルユニットだ。

そのメンバーのひとりである澤田氏は、年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず、誰もが楽しめるスポーツをクリエイトする、一般社団法人“世界ゆるスポーツ協会”の代表でもある。

そんな多岐にわたる活動をしている澤田氏が、次なる社会課題のひとつとして着目したのが、障がいのある人が着る服に困っているという実態だった。それを解決すべく、日本を代表するセレクトショップ、UAに服作りの協力を依頼。新レーベル“UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.”が生まれた。

澤田「私は、障がいのある友達が多いんですよ。2016年の秋に立ち上げた041プロジェクトの話を彼らにしたところ、“実は僕らは服に困っている”という話をされまして。筋力が弱いと着脱できないとか、目が見えないと色が選べない、コーディネイトができないとか。それで消去法で着られるものを選んでいくと、選択肢が少なくて、デザインが良くない。だから、なんとかしてくれないかと言われたんですね。そんなときにUAさんとご縁を頂いたので、このプロジェクトを提案して、ご快諾いただきました」

澤田氏の提案がUAの共感を呼び、これまでになかった服作りが始まった。

栗野「自分たちだけで活動していたら、こういうチャンスはなかったと思うんですね。澤田さんのチームからお声がけをいただいて、自分たちの物の考え方や活動領域を広げるのに、絶好のタイミングだと思いました。一つのポイントとしては、これはビジネスとしてやろうということでした。これまで、服を上手に着たくても着られなかった、あるいは、お洒落したくてもできなかった人たちの具体的な不満の解消が主目的ではあるけれども、今回作ったウェアは、健常者と呼ばれる我々も着られるようにしよう、と。そこが一番新しいのではないかと思ったのです」

端的にいえば、“どんな人でも着られる服”。ただ、ひとりの不満や課題の解消から生まれたプロダクトだというのはユニークだ。それは、世の中の流れやファッショントレンドを考慮した王道の服作りとは、まさに真逆の発想だといえる。

栗野「たくさん作ってたくさん消費するという発想ではなく、本当に必要とする人だけに、本当に必要な量だけ届けたい。そう思ってスタートしたプロジェクトです。そもそもファッションとは、人と違う個性を追求するもの。我々としては、その個性に、これまでとは違うやり方や角度でコミットメントする大きな転機だと捉えました。身長が低いことも障がいがあることも個性だとしたら、その個性を輝かせたり、着る人が自信を持つことに関われたら、洋服屋として大きな意味があると感じたんです」

ファッション業界とSocial WEnnovatorsがタッグを組むことで、既存の価値観とは異なるプロダクトが生まれた。

“UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.”のブランドロゴ

供給する側と受け手の両者に
新たなハピネスをもたらした

背中のヨーク部分がボタン留めになっていて、背中の下半分が取り外すことができる2wayコート。こちらは、“車いすに乗っても着られるちょうどよいレインコートがない”という上原大祐さんの意見から作られた。30年以上車椅子生活をしてきたなかで感じた不具合を、細部まで解決している。¥23,760 ※商品の受注は一旦終了

そんな“041 FASHION”とUAの取り組みは、福祉という観点だけではなく、純粋にモノづくりという観点でも非常に斬新なものだ。それゆえ関わった多くのスタッフは、あらゆる発見があったという。

澤田「かなり深く一人の課題を堀っていくと、モノづくりをするうえで、今までにないスタートラインが生まれます。しかも(モノづくりの)ゴールもユニークになる場合が多い。今回の企画も、側で見ていて、こういうものができるんだ、とすごく新鮮に感じましたし、作り手側であるUAチームの目つきや表情が変わっていくのもわかりました。もちろん、みんながスタートしたことのないスタートラインから、どこにあるかもわからないゴールに向かって走っていったので、葛藤もあったと思います。でも走っているうちに、霧が晴れていったんですよ」

栗野「このプロジェクトに関わったのは20人弱ぐらいのチームなんですが、デザイナーや、パタンナー、マーチャンダイザーなど、彼らは、もともと各々が違うチームに属していました。やってみたいと思う人が手を上げて自主的にチームが生まれて動き始めたんです。通常業務をやりながら、スケジュールを工面してこのプロジェクトを進めるなかで、誰も経験ができなかったことを経験できたことは、大きかったと思います。普段、お店でもお客様の声を細かくお伺いするのは、オーダー服の担当者ぐらいですから。みんなの発想が豊かになって、一歩も二歩も前に進めたんじゃないでしょうか」

澤田「今回、ニーズを聞いた障害のある方々は、ファッションに関して、ある意味では喉がカラカラに乾いていた状態なんですね。オアシスが欲しいと常に思っていた。だから、その乾きをUAのスペシャルチームに率直にぶつけて、試作品が上がるたびに、また乾きをぶつけるという独特のプロセスを繰り返したんです。そうしているうちに、体脂肪一桁台のアスリートのような服が出来上がったというような感じですかね(笑)。とにかく無駄がない。無駄がないけれど、ものすごく機能性も高い」

栗野「そういうプロセスを経てできたウェアは、供給する側と受け手のどちらにも、いままでとは違うハッピネスや共感をもたらしました。この様な落としどころがあるクリエイションってあんまりないですね

“ミッションとして物を買う”
モノサシを提案したい

関根彩香さんのニーズから生まれたスカートは、1本1本のプリーツにジップを配しているため、フレアにもタイトにもなる。しかもヒップ部分には、ふくらみを設けていて、車いすに座った状態でも心地よく臀部にフィットする。健常者がヒップのふくらみをサイドに移動させて着用すれば、曲線がアシンメトリーなデザインとなる。栗野氏いわく「一人のニーズが、新しいデザインと“美”を生み出した」。¥17,280 ※商品の受注は一旦終了

ユーザーの深刻な問題や課題を解決するツールでありながら誰にでも着られて、ファッショナブル。しかも作り手にも新たな発見や喜びがある。そんな洋服こそ、世の中に増えるべきだと思わせる。とはいえ、コスト面や製作期間、作り手に要求される技術など、少なからず課題もあるはずだ。

栗野「確かに新しいことにトライすることは、難しくないわけがないんです。でも、難しいからやらないとしたら、一つとして問題は解決されない。むしろ難しいからこそやるべきだと思っています。今回は、澤田さんからクラウドファンディング方式にしましょうという提案がありましたけど、そのトライもよかったですね。自分が一票を投じれば、自分だけじゃなくて、他の誰かも同じ物が手に入れられる。それは、社会との関わり方においても新しい」

「新しいトライは、難しいからこそやるべき」だと語る栗野氏。今後も新しいプランがいくつもあるという。

澤田「モノづくりのプロセスとして、今回のプロジェクトは効率が悪いですし、ある意味、資本主義的ではないかもしれません。国がいうような生産性を上げることに、ぱっと見は繋がっていない。でも、結果として、関わるすべての人を以前よりもいい状態にしているのであれば、むしろそれでいいと思うんです」

福山型先天性筋ジストロフィーを持つ加藤真心さん。全身の筋力が弱いため、8歳になった今でもスタイ(よだれかけ)が手放せない。とはいえ、スタイはベビー用デザインのものしかないため、彼女の意見をもとに“スタイにもなるエプロンドレス”を考案した。¥5,400 ※商品の受注は一旦終了

栗野「ソーシャルデザインという考え方で、世の中をより良くするために、自分が普段関わっている領域を起点に視点や手法を変えて関わること。そうすれば既存の選挙制度の中過度に困難な挑戦が無くても大げさな何かがなくても、世の中は変えられるような気がします。Social WEnnovatorsのような人たちがもっと増えればいいですし、難しいとされることこそもっとやってみればいいんですよ。難しいことだからこそ、乗り越えれば劇的によくなるかもしれない。洋服だってソーシャルデザインの一つになりうるかもしれません」

澤田「自分は、“ミッションで物を買う”というモノサシも提案したいですね。このプロジェクトでいえば、ミッションとは、服が生まれた使命です。その使命を自分がお金を出して買ったと思えば、絶対に大切にしますし、洋服もセンスだけではなく、新しい基準で選ぶことができる。共感できるミッションにお金を出すという感覚は、また違った消費の価値観を生み出すと思っています」

Social WEnnovatorshttps://wennovators.com/

041プロジェクトhttps://041.world/

澤田智洋(さわだ・ともひろ)
1981年、東京生まれ。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごし、17歳で帰国。2004年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社電通に入社。コピーライターとして活動しながら、数多くのスポーツ及び福祉のビジネスプロデュースを手掛ける。ソーシャルユニット“Social WEnnovators”に参画するとともに、 2016年に一般社団法人 世界ゆるスポーツ協会を設立。一人を起点にプロダクト開発を行う“041”、視覚障がい者アテンドロボット「NIN_NIN」、義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」等のプロデューサーでもある。

栗野宏文(くりの・ひろふみ)
1953年、東京生まれ。株式会社ユナイテッドアローズ 上級顧問 クリエイティブディレクション担当。大学卒業後、ファッション小売業界で販売員、バイヤー、ブランド・ディレクター等を経験後、1989年ユナイテッドアローズの立ち上げに参画。販売促進部部長、クリエイティブディレクター、常務取締役兼CCOなどを歴任。現在は、ブランドディレクションやバイイングに関わるほか、執筆やDJ活動を行う。2004年、英国王立美術学院より名誉フェローを授与。LVMHプライズ外部審査員。2011年よりツイードラン・トウキョウ実行委員長。

(text: 長谷川茂雄)

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