テクノロジー TECHNOLOGY

視線入力技術でどんな姿勢もお手のもの!最強の車いす現る

Yuka Shingai

デザイン、スペック、機能の多様化、高度化とともに今日もまた進化し続けている車いす。その勢いはまだまだ止まりそうにないが、2019年9月に開催された「国際福祉機器展 H.C.R.2019」に登場した最新の車いすもまた、新たなイノベーションを起こすに違いない。

動画はこちらhttps://twitter.com/i/status/1177519985431760896

分身ロボット「OriHime」(オリヒメ)や重度肢体不自由患者のための意思伝達装置「OriHime Eye」(オリヒメアイ)などのプロダクトを開発するオリィ研究所は、孤独化の要因となる「移動」「対話」「役割」などの課題をテクノロジーで解決することをミッションとしている。

研究所を主宰するロボットコミュニケーターの吉藤健太郎氏(通称・吉藤オリィ)が国際福祉機器展でお披露目したのは、なんと、視線入力だけで自由自在に動き回れる車いすだ。

車いす工房「輪」と合同で開発した視線入力車いすには「OriHime Eye」の視線入力技術が使われており、視線を動かすことで立った状態から寝た状態まで体勢を自由に変えられることが特徴だ。

車いすユーザは寝返りなどの動作で行う「体圧分散」ができないために、床ずれが多発する。そのうえ介助者に気付いてもらえない場合もあるため、視線など自分の意思で姿勢を変えられることが重要だと感じていたと吉藤氏は語る。

具体的な発売時期や価格などはまだ明らかになっていないものの、その技術力の高さで国内外でも評価される吉藤氏が手がけていることから、今後の飛躍が期待される。

最強の車いすの到来と実用化が楽しみでならない。

(text: Yuka Shingai)

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テクノロジー TECHNOLOGY

究極の二脚ロボットを研究する「Amber lab」が、ロボット義足を開発中!

長谷川茂雄

“実世界で生活できるロボット”を目指し、二脚ロボットの研究を続けるカリフォルニア工科大学の研究所「Amber lab」。彼らは、ロボットを転ばせようとするなどして負荷をかけることで、ロボットの性能を高め進化させてきた。何度も繰り返すそんな実験は、ロボットの歩行に関する新しいアルゴリズムを最適化し、“どんな環境でも二足歩行できるロボット”を具現化しようとしている。さらにそこで得た知見は、ロボット義足の開発にも適用されているという。ロボットの歩き方の進化は、同時に義足ユーザーのあらゆる可能性も高めているのだ。

ロボットの可能性は、義足の可能性でもある

カリフォルニア工科大学にあるAmber(Advanced Mechanical Bipedal Experimental Robotics)Labが目指しているのは、人間が取り組めることであれば、なんでもできるというロボットの開発だ。

同ラボのロボット研究家、アーロン・エイムズ氏は、自分たちが作るロボットは、「芝生も砂利道も、雪や氷の上も歩けるものにしなければならない」と明言する。そのために歩行を数学的に理解し、常に改良を加えることで「ロボットを人間のように、効率的かつダイナミックに、そしてスムーズに歩けるようする」という。

それを実現させるために同氏が率いるチームは、トレッドミル(ウォーキングマシーン)の動きに合わせて歩くロボットを何度も転ばせようとしたりして、常にアルゴリズムを最適化している。ちなみに、歩行するロボットを転ばせようとすることは、「かく乱試験」と呼ばれる。

そうやって得られた数値をもとに、例えばミシガン大学では、ロボットに火の中を歩かせたり、セグウェイに乗せたりと、さらに多様な実験も行われているという。

ロボットにあらゆる負荷を与え、構造化されていない未知の環境でいかに機能させるかを模索する。そうやって人間のような歩行に近づけていくのだ。

さらにAmber Labでは、ジャンプする動作も追求するために、ピストンのように上下に跳ねるロボットの実験も盛んに行われている。それらの試みは、まず単純なロボットで行われ、得られた知見をもとに、より複雑なロボットへと応用されていく。そういった作業を繰り返すことで、ロボットの性能に何が足りないのかが明確化される。

さて、これらのロボットで獲得した成果は、電池式のロボット義足“Ampro”の開発にもすべて適用されているという。

アーロン氏は、「ロボットで目指していることは、すべて義足でも実現したいと思っている」と語る。“Ampro”は膝と足首にモーターが入っていて、バネが組み合わされた画期的なプロダクト。ユーザーの歩いている場所の状況をセンサーで検知して、必要な場合はモーターを作動させる。そしてユーザーと同期させることで動かすという仕組みだ。

「義足を装着した人が走ったり、サッカーをしたり、ジャンプをしたりできるようにする」。Amber Labの開発実験から、ロボットだけでなく、義足の新しい未来も見えてきた。

(text: 長谷川茂雄)

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