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たったひとりの課題がファッションを変える。041×㈱ユナイテッドアローズが生み出した“最先端”ウェアとは?

長谷川茂雄

“WE”の力で社会の課題を解決していくソーシャルユニット“Social WEnnovators(ソーシャルイノベーターズ)”をご存知だろうか? 同チームが起点になって動き出した041(オールフォアワン)プロジェクトは、これまでスポーツやレスキューの分野で、“一人が直面している課題”にフォーカスすることで、画期的な解決策を見出してきた。そして2018年の4月にスタートを切った新プロジェクト“041 FASHION”では、賛同した㈱ユナイテッドアローズ(以下UA)と共同で障がいのある一人のユーザーの課題を掘り下げることで、これまでなかった服を開発し、販売まで実現した。それは、ある意味、トレンドやマーケティングに左右されない新しいファッションのかたちを提唱している。同プロジェクトのキーマンであるSocial WEnnovatorsの澤田智洋氏と、UAの栗野宏文氏にお話を伺った。

世の中のトレンドからではなく
ひとりの課題から始まる服作り

2016年に発足したSocial WEnnovatorsは、株式会社電通、日本テレビ放送網株式会社、一般財団法人ジャパンギビングに籍を置く複数の社会起業家が、互いの領域を行き来しながらアイデアを出し合い、“WE”の力であらゆる社会課題と対峙し、解決していくソーシャルユニットだ。

そのメンバーのひとりである澤田氏は、年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず、誰もが楽しめるスポーツをクリエイトする、一般社団法人“世界ゆるスポーツ協会”の代表でもある。

そんな多岐にわたる活動をしている澤田氏が、次なる社会課題のひとつとして着目したのが、障がいのある人が着る服に困っているという実態だった。それを解決すべく、日本を代表するセレクトショップ、UAに服作りの協力を依頼。新レーベル“UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.”が生まれた。

澤田「私は、障がいのある友達が多いんですよ。2016年の秋に立ち上げた041プロジェクトの話を彼らにしたところ、“実は僕らは服に困っている”という話をされまして。筋力が弱いと着脱できないとか、目が見えないと色が選べない、コーディネイトができないとか。それで消去法で着られるものを選んでいくと、選択肢が少なくて、デザインが良くない。だから、なんとかしてくれないかと言われたんですね。そんなときにUAさんとご縁を頂いたので、このプロジェクトを提案して、ご快諾いただきました」

澤田氏の提案がUAの共感を呼び、これまでになかった服作りが始まった。

栗野「自分たちだけで活動していたら、こういうチャンスはなかったと思うんですね。澤田さんのチームからお声がけをいただいて、自分たちの物の考え方や活動領域を広げるのに、絶好のタイミングだと思いました。一つのポイントとしては、これはビジネスとしてやろうということでした。これまで、服を上手に着たくても着られなかった、あるいは、お洒落したくてもできなかった人たちの具体的な不満の解消が主目的ではあるけれども、今回作ったウェアは、健常者と呼ばれる我々も着られるようにしよう、と。そこが一番新しいのではないかと思ったのです」

端的にいえば、“どんな人でも着られる服”。ただ、ひとりの不満や課題の解消から生まれたプロダクトだというのはユニークだ。それは、世の中の流れやファッショントレンドを考慮した王道の服作りとは、まさに真逆の発想だといえる。

栗野「たくさん作ってたくさん消費するという発想ではなく、本当に必要とする人だけに、本当に必要な量だけ届けたい。そう思ってスタートしたプロジェクトです。そもそもファッションとは、人と違う個性を追求するもの。我々としては、その個性に、これまでとは違うやり方や角度でコミットメントする大きな転機だと捉えました。身長が低いことも障がいがあることも個性だとしたら、その個性を輝かせたり、着る人が自信を持つことに関われたら、洋服屋として大きな意味があると感じたんです」

ファッション業界とSocial WEnnovatorsがタッグを組むことで、既存の価値観とは異なるプロダクトが生まれた。

“UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.”のブランドロゴ

供給する側と受け手の両者に
新たなハピネスをもたらした

背中のヨーク部分がボタン留めになっていて、背中の下半分が取り外すことができる2wayコート。こちらは、“車いすに乗っても着られるちょうどよいレインコートがない”という上原大祐さんの意見から作られた。30年以上車椅子生活をしてきたなかで感じた不具合を、細部まで解決している。¥23,760 ※商品の受注は一旦終了

そんな“041 FASHION”とUAの取り組みは、福祉という観点だけではなく、純粋にモノづくりという観点でも非常に斬新なものだ。それゆえ関わった多くのスタッフは、あらゆる発見があったという。

澤田「かなり深く一人の課題を堀っていくと、モノづくりをするうえで、今までにないスタートラインが生まれます。しかも(モノづくりの)ゴールもユニークになる場合が多い。今回の企画も、側で見ていて、こういうものができるんだ、とすごく新鮮に感じましたし、作り手側であるUAチームの目つきや表情が変わっていくのもわかりました。もちろん、みんながスタートしたことのないスタートラインから、どこにあるかもわからないゴールに向かって走っていったので、葛藤もあったと思います。でも走っているうちに、霧が晴れていったんですよ」

栗野「このプロジェクトに関わったのは20人弱ぐらいのチームなんですが、デザイナーや、パタンナー、マーチャンダイザーなど、彼らは、もともと各々が違うチームに属していました。やってみたいと思う人が手を上げて自主的にチームが生まれて動き始めたんです。通常業務をやりながら、スケジュールを工面してこのプロジェクトを進めるなかで、誰も経験ができなかったことを経験できたことは、大きかったと思います。普段、お店でもお客様の声を細かくお伺いするのは、オーダー服の担当者ぐらいですから。みんなの発想が豊かになって、一歩も二歩も前に進めたんじゃないでしょうか」

澤田「今回、ニーズを聞いた障害のある方々は、ファッションに関して、ある意味では喉がカラカラに乾いていた状態なんですね。オアシスが欲しいと常に思っていた。だから、その乾きをUAのスペシャルチームに率直にぶつけて、試作品が上がるたびに、また乾きをぶつけるという独特のプロセスを繰り返したんです。そうしているうちに、体脂肪一桁台のアスリートのような服が出来上がったというような感じですかね(笑)。とにかく無駄がない。無駄がないけれど、ものすごく機能性も高い」

栗野「そういうプロセスを経てできたウェアは、供給する側と受け手のどちらにも、いままでとは違うハッピネスや共感をもたらしました。この様な落としどころがあるクリエイションってあんまりないですね

“ミッションとして物を買う”
モノサシを提案したい

関根彩香さんのニーズから生まれたスカートは、1本1本のプリーツにジップを配しているため、フレアにもタイトにもなる。しかもヒップ部分には、ふくらみを設けていて、車いすに座った状態でも心地よく臀部にフィットする。健常者がヒップのふくらみをサイドに移動させて着用すれば、曲線がアシンメトリーなデザインとなる。栗野氏いわく「一人のニーズが、新しいデザインと“美”を生み出した」。¥17,280 ※商品の受注は一旦終了

ユーザーの深刻な問題や課題を解決するツールでありながら誰にでも着られて、ファッショナブル。しかも作り手にも新たな発見や喜びがある。そんな洋服こそ、世の中に増えるべきだと思わせる。とはいえ、コスト面や製作期間、作り手に要求される技術など、少なからず課題もあるはずだ。

栗野「確かに新しいことにトライすることは、難しくないわけがないんです。でも、難しいからやらないとしたら、一つとして問題は解決されない。むしろ難しいからこそやるべきだと思っています。今回は、澤田さんからクラウドファンディング方式にしましょうという提案がありましたけど、そのトライもよかったですね。自分が一票を投じれば、自分だけじゃなくて、他の誰かも同じ物が手に入れられる。それは、社会との関わり方においても新しい」

「新しいトライは、難しいからこそやるべき」だと語る栗野氏。今後も新しいプランがいくつもあるという。

澤田「モノづくりのプロセスとして、今回のプロジェクトは効率が悪いですし、ある意味、資本主義的ではないかもしれません。国がいうような生産性を上げることに、ぱっと見は繋がっていない。でも、結果として、関わるすべての人を以前よりもいい状態にしているのであれば、むしろそれでいいと思うんです」

福山型先天性筋ジストロフィーを持つ加藤真心さん。全身の筋力が弱いため、8歳になった今でもスタイ(よだれかけ)が手放せない。とはいえ、スタイはベビー用デザインのものしかないため、彼女の意見をもとに“スタイにもなるエプロンドレス”を考案した。¥5,400 ※商品の受注は一旦終了

栗野「ソーシャルデザインという考え方で、世の中をより良くするために、自分が普段関わっている領域を起点に視点や手法を変えて関わること。そうすれば既存の選挙制度の中過度に困難な挑戦が無くても大げさな何かがなくても、世の中は変えられるような気がします。Social WEnnovatorsのような人たちがもっと増えればいいですし、難しいとされることこそもっとやってみればいいんですよ。難しいことだからこそ、乗り越えれば劇的によくなるかもしれない。洋服だってソーシャルデザインの一つになりうるかもしれません」

澤田「自分は、“ミッションで物を買う”というモノサシも提案したいですね。このプロジェクトでいえば、ミッションとは、服が生まれた使命です。その使命を自分がお金を出して買ったと思えば、絶対に大切にしますし、洋服もセンスだけではなく、新しい基準で選ぶことができる。共感できるミッションにお金を出すという感覚は、また違った消費の価値観を生み出すと思っています」

Social WEnnovatorshttps://wennovators.com/

041プロジェクトhttps://041.world/

澤田智洋(さわだ・ともひろ)
1981年、東京生まれ。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごし、17歳で帰国。2004年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社電通に入社。コピーライターとして活動しながら、数多くのスポーツ及び福祉のビジネスプロデュースを手掛ける。ソーシャルユニット“Social WEnnovators”に参画するとともに、 2016年に一般社団法人 世界ゆるスポーツ協会を設立。一人を起点にプロダクト開発を行う“041”、視覚障がい者アテンドロボット「NIN_NIN」、義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」等のプロデューサーでもある。

栗野宏文(くりの・ひろふみ)
1953年、東京生まれ。株式会社ユナイテッドアローズ 上級顧問 クリエイティブディレクション担当。大学卒業後、ファッション小売業界で販売員、バイヤー、ブランド・ディレクター等を経験後、1989年ユナイテッドアローズの立ち上げに参画。販売促進部部長、クリエイティブディレクター、常務取締役兼CCOなどを歴任。現在は、ブランドディレクションやバイイングに関わるほか、執筆やDJ活動を行う。2004年、英国王立美術学院より名誉フェローを授与。LVMHプライズ外部審査員。2011年よりツイードラン・トウキョウ実行委員長。

(text: 長谷川茂雄)

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空飛ぶタクシーも夢じゃない 官民一体となって進む「空飛ぶクルマ」の移動革命

吉田直子

2020年8月に、日本政策投資銀行等から39億円の資金調達を受けたことを発表した株式会社SkyDrive。産業用のカーゴドローンと並び、人を乗せて飛べる大型ドローン「空飛ぶクルマ」(SD-03)の開発で大きく注目されている。同機はこの夏、すでに有人実証実験も成功させた。エアモビリティ社会の実現を誰よりも待ち望む編集長・杉原行里が、SkyDrive代表の福澤知浩氏に「空飛ぶクルマ」の未来図を聞く。

「空飛ぶクルマ」にこだわるワケ

杉原:はじめに、人を乗せて飛ぶドローンについて伺いたいです。僕は福澤さんが描いているような未来を待ち望むひとりなのですが、一般への浸透具合としてはまだまだ「ドローンに人を乗せて飛べるの?」「ヘリコプターと何が違うの?」という方も多いので、初歩的なところからお聞かせいただけますか。

福澤:まず初めの質問、ドローンに人を乗せて飛べるか?というところでは、飛べます。通常、ドローンは5kgくらいですが、我々がいま開発しているカーゴドローンは、30~40kg程度運べます。プロペラの面積に比例して推力がほぼ決まるので、プロペラが大きいほど重いものが運べます。我々の製品は結構大きくて、人が乗っても問題ない推力になります。ですから、技術的な面から言えば、飛べるという答えとなります。

SkyDrive社の空飛ぶクルマ「SD-03」。2020年8月に、愛知県豊田市の豊田テストフィールドにて有人飛行試験が行われた。
©SkyDrive/CARTIVATOR 2020

ただ、やはり安全性が一番の懸念ですので、まずは、どんなシステムトラブルがあったとしても、飛び続けられるということを目指しています。その安全性レベルをボーイング、エアバスレベルに上げていくと、航空機とみなされて、一般の方を乗せて飛べるようになる。当社は2023年度にそこまで到達することを目指しています。

2つ目の質問、ヘリコプターとの違いをお伝えするために、まずヘリコプターが優れている点を挙げると、遠くまで行ける、重いものを運べるという点ですね。それに対し、空飛ぶクルマの利点は、電動なのでエンジンがなくて静か、着陸スペースが少なくて済むこと。ヘリコプターは斜めに降りたりしますが、空飛ぶクルマは完全に垂直に降りるので、離発着のスペースが確保しやすい。また、ヘリコプターはホバリングがかなり難しいのですが、空飛ぶクルマはホバリングが自動ですから、行きたい方向だけ操作すればいい。ヘリコプターのラジコンよりもドローンを操縦できる人が圧倒的に多いというのと同様に、空飛ぶクルマの操縦は簡単で自動化もしやすい。そのあたりが強みですね。

杉原:「エアモビリティ」「共生社会」などの表現もありますが、御社が空飛ぶクルマという表現にこだわっている理由はありますか?

福澤:理由は2つあります。飛行機はハレの日に使うモビリティで、それに対して、車は日常的に使えるモビリティですよね。車のように使えるということで、「クルマ」と名付けています。もう1つは、今は飛ぶだけの機体を作っているのですが、サイズがコンパクトなので、実は地上も走れるんです。地上も走って空も飛べる、現在の車の延長線上という位置づけです。

杉原:今、一気に世界各国でエアモビリティ競争が始まっています。その中で御社が掲げた「2023年度に人を乗せる」という目標は、市場調査などを見たなかではかなり早い方だと思いますが、それは可能なんでしょうか?

福澤:そうですね。可能だと思っていて、僕たち以外にもいくつかのプレイヤーがそれを目指しています。モーターやバッテリーを中心とする部品の成熟度と、それの組み合わせが要素だと思うのですが、ここ3~5年くらいで急激に部品の成熟度が上がってきて、さらに、スマホの普及で精度の高いセンサーの価格が100分の1とか10000分の1とかに落ちている。

杉原:今の質問は意地悪な意味ではなくて、僕は必ずエアモビリティ社会は起きると信じているんです。世界的には同じような競合他社がすでにサービスを展開したりしているんですか?

福澤:人を乗せている会社は、今はないです。ただ、我々が認識している限り、2020、23年あたりにスタートすると宣言している会社が2、3社あります。といいつつも、この手の開発分野のものはだいたい遅れるのですが(笑)。

杉原:宇宙開発と一緒で、遅れますよね。

福澤:はい。それで、みんなが同じようにスタートするとしたら、僕たちもトップ集団にはいるかなと。最初は運航の環境を限定して、安心・安全をキープしながらデータを蓄積しつつ改善し、アップデートしていくのが早いのではないかと思います。100%の機体を作る、そのぶん遅くなっても仕方ないという考え方もありますが、やはりベンチャーなので早めに出して回しながら圧倒的に拡げていくほうが当然よいと考えています。

杉原:それはそうですよね。だって大企業ができないことをやらないと意味がないですよね。大企業はエビデンスがないことに対して投資できない、稟議を通せない。でも、稟議なんて、我々のような規模の会社だったら福澤さんや僕だけじゃないですか。

福澤:そうだと思います。

ドクターヘリの代替にもなり得る

杉原:例えば電気自動車が流行ってきた理由に、電源供給のポートがどんどん増えてきたことがあると思うのですが、日本のエアモビリティ社会でのポートはヘリコプターと共有ですか。それとも遊休地を使っていくのでしょうか。

福澤:僕らが最初に飛ばすことを考えているのは、大阪の海上飛行ルートなんですね。大阪湾周辺にはポートとして活用できるスペースと場所がいくつかあって、そこを転用しようと思っています。ある意味、遊休地ですね。川や海の上の方が非常時に着陸しやすく、住んでいる人たちの理解も得やすいという観点で選んでいます。それ以外はヘリポートだったらどこでも止まれますし、あとはヘリ―ポートほどの面積が不要なので屋上が余っているところなどを使えるのではないかと。

杉原:面白いですね。日本はヘリコプターを導入している実績が世界ランキングのトップ5、トップ10レベルだと思います。ですから、上空を飛ぶことに対する理解はあると思うのですが、さきほどおっしゃった周辺に住んでいる人たちの理解度という話でいえば、倫理観とかと戦っていかなきゃいけないと思います。そのへんは、どれくらいの早さで受け入れてもらえると思いますか。

福澤:2023年度に大阪で飛ばすことに関しては積極的に官民の関係者と協議を進めているので、実現可能にかなり近いと考えております。ただ、見上げたらたくさん飛んでいる状態になった時に「落ちてこないの?」「空が汚くなっちゃうね」「うるさいんじゃない?」という懸念が出てきますが、そこはなかなかコントロ―ルできません。「空飛ぶクルマ」という単語を使うのは、その観点でも利用者側のイメージが湧きやすく、新しい移動モビリティだけどなじみやすいと考えています。

杉原:僕は緊急性を有している所にイノベーションが起こりやすいと思っているのですが、御社は災害に対するアプローチはされていますか。

福澤:ドクターヘリの代替はあり得ると思っています。ドクターヘリは運航費だけで年間約2億円かかるのですが、空飛ぶクルマは1台あたり約3千万円程度を想定していて、買ってしまえば終わりです。俄然コストパフォーマンスがいいので、そういう観点ではアリですよね。

杉原:どんどん普及していけば価格が落ちて、その時に車と一緒で、軽自動車を買って、ハイブリッドを買って、スポーツカーを買って、みたいになると思うのですが、狙うところはどのへんですか?

福澤:やはり小型乗用車のトヨタ・ヴィッツ系ですね。誰でも簡単に乗れる手軽なものです。主婦のかたや子どもでも興味を持つようにしたいと思っていて、デザインも、クールなフォルムでありながら、日常になじみやすい感じをだすようにしています。

杉原:ということは、フェラーリやポルシェのようなものが出てくると、より比較がしやすくなりますよね。

福澤:そうなります。僕たちのゴールは、日常的に空を自由に使えるようになるということ。コンパクトで誰もが使いやすくて、買いやすいモビリティであり、サービスがいいなと思います。

杉原:今後もうひとつ必ず出てくるのが、ライセンスだと思います。ライセンスは、航空機を運転するときに付帯するラインセンスになるのか、それとも新しくライセンスを発行していくのか。

福澤:現時点では、ライセンスは不要にしたいと考えています。自動運転だからそもそもライセンスはいらない、という方向にしていきたい。逆に操縦者は誰かというと、遠隔のパイロットか、完全にAIか自動運転という感じになるだろうと。ただ、最初の数年間は安全性担保のためにパイロットライセンスを持った人が万が一のために操縦できるようにしたいと考えているので、新しいライセンス基準を作っていきたいと考えていますが、基本的にはドローンの操縦スキルと危険・緊急時の回避ができるスキルというふうにできると思うので、結構ライトなものになると思います。

誰もが気軽に
空を飛べる社会をめざして

杉原:2030年度くらいには多くのエアモビリティが地方や海上を中心に制空権をとりながら、2040年度くらいには当たり前の文化になっているとされています。結構遠いですね。もう少し早められませんか(笑)。

福澤:スマホと一緒でスマホが登場したのはもう10年以上前で、今は誰でも持っているじゃないですか。アーリーアダプターな人は購入も早かったと思うんです。ですが、そうでない方たちはこれでいうと「いまだに空飛ぶクルマっていう単語すら聞いたこともない」という人たちだと思うので、その方々が使うまでが2030年度と考えています。

杉原:最後に、御社のめざす未来というのをお聞かせください。

福澤:みんなが気軽に、安全に安心して空を飛べるという時代をもってくることですね。

杉原:ぜひ、早くお願いします!(笑)

福澤:はい。ぜひ2023年度に大阪で乗って頂けたら嬉しいです。

<プロフィール>福澤知浩(ふかざわ・ともひろ)
株式会社SkyDrive代表取締役。東京大学工学部卒業。トヨタ自動車にて自動車部品のグローバル調達に従事。同時に多くの現場でトヨタ生産方式を用いた改善をし、原価改善賞受賞。2014年にCARTIVTORに参画、共同代表に。2017年に独立、製造業の経営コンサルティング会社を設立後、20社以上の経営改善を実施。2018年にSkyDrive創業、代表取締役に就任。

(text: 吉田直子)

(photo: 増元幸司)

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