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置く場所がないなら、身に付けてしまえ!歩ける椅子「archelis」(後編)【株式会社ニットー:未来創造メーカー】

岸 由利子 | Yuriko Kishi

世界初の“歩ける椅子”『archelis(アルケリス)』―販売前から国内のみならず、海外からも大きな反響を得ているこのウェラブルチェアを医工連携で開発するのは、横浜市鳥浜町に拠点を置く株式会社ニットー。開発を担当する同社代表取締役の藤澤秀行さんと、アルケリス・プロジェクトリーダーの飯田成晃さんにお話を伺いました。


建築現場、農業、警備会社…医療以外の立ち仕事や足に障がいを持つ人にもニーズがあった

現在、アルケリス・プロジェクトリーダーを務める飯田成晃さん(以下、飯田さん)は、つい1年半ほど前までは、医療商社に務めていたのだそうです。「テレビやウェブで、アルケリスの存在を知ったのですが、調べれば調べるほど、素晴らしい器具で、大変興味を持ちました。医療現場に導入して、医師の方たちに使っていただくことも、当初の自分の立場としては考えられましたが、販売するというよりは、“アルケリスを世の中に広めたい”という想いが強くありました。もしその一助になれたら、これほど嬉しいことはない。そう思っていたところ、ニットーと私の住まいが、なんと同じ金沢区内にあることが分かって、これはもう運命だなと(笑)。アタックしなければ、自分は一生後悔するだろう。結果がどうであれ、まずは直接アプローチしてみよう。そう思い立ち、藤澤社長との出会いがあり、今に至ります」

アルケリスは、本来、医師をはじめ、健常者の立ち仕事をサポートするために開発された器具。それゆえ、国内外の医師や医療商社など、医療関係者はもちろんのこと、それ以外にも、建築現場や農業、警備会社、また美容師や料理人など、長時間の立ち仕事に従事する人たちからの問い合わせも相次いでいるのだそうです。

「私たちが思っていたのとは違うところにもニーズがあるということを、お問い合わせいただく方から教えていただいています」と飯田さん。中でも、予想をはるかに超えていたのは、足に障がいを持つ人やその家族からの問い合わせが多いことだと言います。

「怪我によって、車椅子生活になった母親がいるのですが、これ(アルケリス)があれば、母が大好きな料理をもう一度、楽しめるようになるかもしれません」

「私は、片足の骨盤から下を切断しています。座ることもきびしく、寝転んだ姿勢も痛みを伴うため、立ち姿勢が一番ラクなのですが、片足なのでずっと立っていることは難しい状況です。とにかく試してみることはできませんか?」

アルケリスを装着してトレーニング中のパラアーチェリー・服部和正選手

パラアーチェリー選手に競技のサポート器具として、アルケリスを提供

「足の不自由な方にとって、アルケリスが、日常生活でお困りのことを解決できる一助になれればとの想いから、今後、医療現場以外の他分野への展開も視野に入れています」と藤澤さん。その第一歩ともいえるのが、パラアーチェリー競技歴20年、日本代表歴10年の服部和正選手とのプロジェクトです。

今年還暦を迎えた服部選手は、数多くの国際大会経験を活かし、東京パラリンピックの出場を目指す熟練のアスリート。普段は松葉杖で生活していますが、競技中は、それなしで立たなくてはなりません。アルケリスの存在を知った服部選手より、「ぜひ使ってみたい」との問い合わせがあり、今年2月18日、世田谷公園にある洋弓場で、引き渡しが行われました。

もし出場が決まれば、アルケリスを身に付けて競技を行う可能性も。「今後も、服部選手を応援していきます。メダルを獲れたら、私たちも嬉しいですね」

ネーミングにも“遊び心”を忘れない

今年5月、中国淅江省政府後援の国際デザイン賞「Design Intelligence Award」 (DIA賞)を受賞したアルケリス。ネーミングにも、独自のこだわりがあります。

「歩ける椅子という機能が表せて、覚えやすく、遊び心のあるネーミングって、何だろう?そう考えた時、アルケルイス→アルケリスにたどり着きました。一瞬、ギリシャ神話の登場人物と思う方もいらっしゃるのですが、実は私たちが考えた造語なんです(笑)」

現在は、量産に向けた製品開発を行っている最中なのだそう。「開発にも色んなフェーズがあって、これまでは、ウェアラブルチェアというものを実現するためにどういう機能にすべきかという部分に注力してきました。これからは、どうすれば適正価格で提供できるか、品質が安定するかといったことに力を注いでいきます」

幼少の頃から絵を描いたり、機構を考えたり、モノづくりが大好きだったという藤澤さん。「ただ作って、満足するのではなく、それを見てくれた人が“面白いね!”と感想をくださったり、驚いてくれたり…。反響をいただけることが、今も昔も、何より自身にとっての喜びです。まだ具体的には決まっていませんが、本年度中には、発売したいと考えています」

アルケリスがお目見えする日は、そう遠くないよう。待ち望む人も多い中、今後の動向に、さらなる注目と期待が募ります。

(※前編はこちら)

archelis
https://www.archelis.com/

株式会社ニットー
http://nitto-i.com/

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 壬生マリコ)

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次世代ロボットセンター・4REが巨大ロボを携えて未来を切り拓く!

HERO X 編集長

ロボットと一口に言っても様々なものがある。一般に思い浮かべるのは工場や倉庫などの労働現場で稼働する産業用のロボットだろう。ごく一部のエンターテインメント系ロボットを除けば、ニュースになるのもそういった“役立つ”ロボットたちだ。そんな中、新しいロボットとのかかわりを提案しているラボが、株式会社4REだ。イベント用巨大ロボ「MEGABOTS」を擁する彼らの動きに注目!

日本でいち早くアメリカの巨大ロボ「MEGABOTS」を取得、カスタマイズして展開している4RE。制御盤のエンジニアリングメーカーであり、自動配達ロボ「HAKOBOT」なども開発する株式会社三笠製作所と株式会社RDSが新たに立ち上げた次世代型ロボットセンターだ。立ち上げにあたっての話しはHERO Xで行なった対談に詳しく掲載されている。

MEGABOTS社の巨大ロボットが、
あなたの街にもやってくるかも!?

「MEGABOTS」は、人が操縦席に座って操作する「ガンダム」のようなロボット。まるでアニメや特撮映画に出てくるような「コックピット」型の、SF感溢れる機体が魅力のロボット。高さ4.5メートルの大型ロボットで、実際に操縦できるというのは国内ではまだ珍しい。格闘家の朝倉未来のYoutubeを始め、人気Youtuberの動画などでも紹介され、また去年10月にはフジテレビの人気番組『逃走中』にも登場した。

最近はロボットというと、何に役立つのか?とすぐに考えてしまうが、4REが提案しているのは、ロボットとの新しいかかわり。前述の「MEGABOTS」はイベントなどのシーンで、ゲストが実際に試乗でき(操縦は4REのドライバーが担当)、ランチャーからTシャツなどの景品を発射することができる。エンジニア・ドライバーを派遣しての純粋なレンタルとして稼働させているのだが、主催者側のニーズに応じてカラーリングなどのカスタマイズにも対応している。

「MEGABOTS」だけではなく、4REではオリジナルロボットの製作を受注する「ロボット製作所」のプロジェクトも実施している。この取り組みのユニークなところは、単にロボットを作るというだけでなく、ロボットを使ったソリューションや広告展開、プロモーションの提案までを行なっていることだ。

同社によれば、「ロボット」を核とした、様々なビジネスの展開をパートナーと考えていくという。また、ロボットビジネスのコミュニケーションのありかたも提案したいのだとか。

小さい頃には誰もが憧れていたロボットという存在。それがいつの間にか、味気ないものになってしまってはいないだろうか。もちろん、実用ロボットの存在は今の日本の産業には欠かせない。しかし、夢を描くことで切り拓かれていくテクノロジーもあるだろう。まずは「MEGABOTS」の操縦席に座り、失われていたロボットへの夢を取り戻してみたい。

問い合わせ先
株式会社4RE:info@4re.tokyo
公式サイト:https://4re.tokyo/

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(text: HERO X 編集長)

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