近年、自動車業界のみならずIT業界なども注目しているのが「MasS=Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」。様々な交通サービスを情報インフラも含めて総合的に考える移動革命だ。今回紹介するのは『Whim(ウィム)』。フィンランドで開発され、ヘルシンキですでに実用化されているMasSプラットフォームが、いよいよ日本にも登場する。千葉県柏市のつくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅周辺で、今年から実証実験が開始されるようだ。
バスも電車もアプリひとつで!
決済まで一括できる移動サービス
MasS(Mobility as a Service)とは、様々な交通サービスを「移動サービス」というひとつの概念としてとらえる考え方だ。電車、バス、タクシー、自転車レンタル、カーシェアサービスなどの移動手段を統合し、ビッグデータを活用して一括でサービスとして個人に提供する。
フィンランドでは官民が共同し、2017年から首都ヘルシンキでMasSが実用化されている。このヘルシンキで使われているMasSアプリ「Whim」が、2020年から、いよいよ日本で始動することになったというのだ。千葉県柏市の「柏の葉キャンパス」駅周辺でスマートシティ構想を進めていた三井不動産が、「Whim」を展開するMaaS Global社に出資。いよいよ実証実験を開始する。
MaaSプラットフォーム「Whim」では、スマートフォン上のアプリに移動先を入力すると、目的地までの移動手段を一括で提示してくれる。ここまでは通常の経路提示アプリと同じだが、経路を決定すると、決済までスマホ上で出来てしまうのが大きな違いだ。移動先のタクシーなどではアプリ画面を提示するだけでよく、支払いのわずらわしさがない。
フィンランドでこの取り組みが進められた背景には、自国に自動車産業をもたないという点があるといわれている。市民は公共の交通機関を使うことも多く、また、高齢化社会でもあるため、バスやタクシーのニーズが高い。「Whim」には利用ごとに決済されるサービスのほか、月額の乗り放題サービス(サブスプリクション)も用意されていて、そちらを利用する市民も多いようだ。
フィンランドのMasS普及に寄与したのが、交通通信省や地方交通局などの官公庁も民間企業と提携したこと。この点が、日本での導入の障壁になっているといわれている。また、日本は地方都市が極端な「クルマ社会」で、「自家用車以外」を一括するMasSの概念の定着が難しい。ただ、前者はいずれ改善されていく流れにあり、後者に対しては自動運転車や自動運転バスの開発が進むことで、親和性が高まっていく可能性が高い。
いずれにしても、モビリティの将来は、今後さまざまに変革していきそうだ。MasSが提供する「移動革命」。まずは柏市での実証実験に注目していきたい。
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