テクノロジー TECHNOLOGY

世界初!HDR対応の眼鏡型VRグラスで、仮想現実がより身近に

HERO X 編集部

4Kを超える高画質をVRで実現! しかも、HDR※ に対応した世界初のVRグラスを、パナソニックが開発した。リアルな映像を実現しながらも、装着に負担がない。米ラスベガスで実施の「CES2020」でも発表されたこの商品が、VRの世界を変えるかもしれない!? ※HDR (ハイダイナミックレンジ) =自然界の明暗差をより本物に近く再現する技術

日々進化するVR(仮想現実)の世界。しかし、高画質・高音質なVRデバイスは、本体が大型化してしまうのが難点だ。いくら高度なVRグラスがあったとしても、従来のようにヘッドバンドで頭部に装着するようなシステムでは、興味のある一部の人は飛びついても、一般の人には敬遠されがちだ。

だが、パナソニックが開発した眼鏡型VRグラスは、普通の眼鏡のように耳にかけるだけ。ゴーグル型のVRグラスよりもさらに気軽に装着することができる。なによりも、これだけ小型化していながら、4Kを超える画質を実現し、眼鏡型としては世界で初めてHDRに対応することに成功した商品なのだ。

世界トップクラスのVRグラス向けデバイスメーカーであるKopin社と共同開発を行い、パナソニックの持つテレビ、ブルーレイディスクプレーヤーなどで培った音響技術や、デジタルカメラの光学技術を結集。映像だけでなく、音質に関しても超低音から高音まで広い音域に対応している。

VRによる映像の再現は、スポーツ観戦や旅行の疑似体験などで、今後ますます提供されていくと予測されている。今までは、エンターテインメント施設で活用されたり、ゲームソフトに対応したりといった、限定された娯楽に使われている感があった。しかし、今後は、より日常的な体験に活用されていくだろう。

例えば、ハンデのある人々の生活を疑似体験するには、VR技術はうってつけである。株式会社ワン・トゥー・テンが開発したVRレーサー『CYBER WHEEL(サイバーウィール)』は、パラスポーツを疑似体験することで、車いすの人の世界を体感でき、さらにパラスポーツの面白さや迫力をより身近に感じることができる。

参考記事:サイバー過ぎるパラスポーツ体験が熱い!車いす型VRレーサー“CYBER WHEEL”

5G時代を迎え、優れたデバイスが次々と開発されることで、人間が得られる体験の幅は広がっていくことだろう。その結果として、豊かな感動を味わえるとともに、より様々な境遇の人々とつながれるとしたら、社会はより良い方向に進んでいくのではないだろうか。

(text: HERO X 編集部)

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テクノロジー TECHNOLOGY

集中度もストレスも読み取るイヤホン「VIE ZONE」

Yuka Shingai

パンデミックを契機に、大きく変化し始めた私たちのライフスタイルやワークスタイル。 なかでもリモートワークの普及は、フレキシブルな働き方を可能にし、大きなメリットを与えたと同時に、オンオフの切り替えが難しい、集中力が持続しない、コミュニケーション不足に陥るなどのデメリットも散見されている。ヒトの脳波と生体情報を取得するイヤホン型ウェアラブルデバイス「VIE ZONE」はこれらの課題解決に大きく寄与してくれるかもしれない。製造・開発を手掛けるVIE STYLE株式会社の代表取締役・今村泰彦氏に話を伺った。

体と心の充実が生産性を向上させる。
テクノロジーでその手伝いがしたかった

「創業した時に考えた言葉が今の社是にもなっている『味わい深い人生を。』だったんです。多分、当時は味わい深くない人生だったんだろうなあ」と今村氏は笑った。

ミュージシャンとして活動しながら、大手レコード会社で勤務。その後、シリコンバレー発のIT企業に勤めていた今村氏。社風は非常に先進的でオフィスへの通勤やコアタイムなどの制約もない、“自由”そのものである一方で、徹底した成果主義があることを痛切に感じていた。

「仕事はとても楽しいんだけど、働き続けることで消耗していく実感があったんです。こういう人生を生きていくために自分は働いているんだっけ?と疑問に感じて、自分でビジネスを興すなら違うことをやりたいなと思いました」

成果や結果を出すことは、ビジネスにおいて不可欠である。しかし自分の内面にフォーカスし、自分の体と心が充実したら生産性は自ずと上がるのではないか。綺麗ごとではなく、「後から結果が付いてくる」ための手伝いをするテクノロジーが必要だと考えた今村氏。
音楽業界でのキャリアと、ミュージシャンとしての経験から、“音楽”に着目。音楽をアウトプットにすれば、集中力が高まる、リラックスするなどの効能が得られるという学術論文が発表されているが、課題は一人ひとりの目的・要望に合った適切な音楽を選ぶことだ。そこで、センサーから生体情報を取得し、行動変容や意識の変化をもたらすことにフォーカスしたサービスを模索し始めた。

禅発祥の地、鎌倉だから発信できる
倫理観のあるビジネス

VIE STYLEが拠点を置く鎌倉は禅発祥の地。建長寺にて禅とITを掛け合わせたハッカソン(ハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語。ソフトフェア開発の関係者が、 短期間に集中的に開発作業を行うイベント)「ZenHack(禅ハック)」を主宰していた今村氏のもとにイスラエルの脳科学者、ダン・ファーマン氏が訪ねてきた。本場シリコンバレーではエナジードリンクや濃いコーヒーを片手にコーディングし、イノベーションを創出するイベントだが、ZENHACKはひと味違う。その名が示す通り、早寝早起きして座禅を組み、精進料理を食べ、緑茶をたてるという禅の世界を味わいながらITの課題解決に臨むのだ。このファーマン氏との出会いをきっかけに「脳」へ関心を寄せるようになった。

「ファーマン氏に脳科学の技術や可能性を教えてもらっているうちに、脳に関するビジネスは悪用されるリスクが内包されているだけに、倫理観が重要だと気づいたんです。その点、禅は倫理の塊ですからね。近年、海外でも瞑想がブームになっていますけど、シンプルに生きることとか殺生しないとか、伝統的な価値観を受け継いでいる鎌倉から最先端のテクノロジーを発信することが世界にインパクトを与えるんじゃないかと思いました」

自分が一番集中している脳波を計測、
解析して「ZONE状態」を学習

耳が痛くならないワイヤレスエアーヘッドホン「VIE SHAIR」、カスタムフィット完全ワイヤレスイヤホン「VIE FIT2」に続き、現在開発中の「VIE ZONE」は外耳道および耳たぶのセンサーから、脳波をはじめとする様々な生体情報を高精度に取得することができる。取得した生体データは専用アプリ「ZONEアプリ」に転送され、ストレスや感性、眠気・疲労などがAIによるパターン学習を経て計測される。“自分の脳専用”に解析モデルがカスタマイズされていき、映像・音声などの刺激により脳を理想的な状態に導く「ニューロフィードバック」と呼ばれる技術を使ってトレーニングしていく仕組みだ。

「やっていることはとても単純なんですよ。音楽を流して、どのトラックが一番集中力を高める脳波を出しているか計測して解析する。そして集中できる音楽だけをかける、もしくはかけないということです。たとえば原稿の締め切りが迫っているのに集中できないことってあるでしょう? しかし実際は集中できている瞬間があるはずで、『この時間、この状態では集中できている』と自分で確認できれば、限られた時間の中でも作業を終えられるようになります。ダッシュボードでリアルタイムに波形を確認することで、集中できる状態、自らの『ZONE状態』を学習していく。2時間ならその時間内で、やるべき仕事が完了するよう最適化できる状態を目指しています」

元々、一度集中してしまうと何十時間でも没頭してしまう過集中タイプで休むことが下手だったと自らを分析する今村氏。VIE ZONEで学習し続けた結果、現在は集中とリラックスを適宜切り替えられるようになったとのことだ。

「一番重要なことや、やらなきゃいけないことを、一番集中できる時にエネルギーを注ぎこむことができたら1日8時間拘束されるとか、時間効率みたいなことってあんまり関係なくなるんですよ。朝起きてすぐの頭がまっさらな状態でアイデアを考えるクリエイティブな作業に集中して、午後、疲れてきたら情報収集とかメールとかリアクティブな作業をするとか。よくそんなに仕事量をこなせますねと言われるんですけど、エネルギーを無駄遣いしないことが重要なんです」

10年後にはヒットチャートがなくなる?
音楽のあり方は変化するはず

現代人にとってストレスは切っても切り離せないもの。脳が発しているメッセージを受け取って、自分で解釈してほしいと今村氏は主張する。

「発汗や動悸は計測しやすいんだけど、その指令を出している脳ってすごく複雑な器官にも関わらず、活動していてもなかったことにされがちなんですよ。なぜなら脳は触覚じゃないし、計測器が埋められないから。加えて好き嫌いや快・不快を感じても、前頭葉の働きで衝動が抑えられてしまうので、ストレスや疾患を引き起こしてしまうわけです。それをもっと可視化、数値化できたら、ストレスが溜まっている自覚がなくても、存在していると納得できるんではないでしょうか」

VIE ZONEは、未病領域も視野に入れている。日常生活で軽視されがちなマインドヘルスの改善に脳計測を活かす上でカギとなるのがエンタメだろうと今村氏は語る。音楽がウェルネスに貢献するというのは今村氏らしさに溢れる持論だ。

「ヒット曲ってバブルっぽい価値観が生み出したものだと思っているんです。だけどこれからはもっと日常の重要な部分やウェルビーイングのためにエンタメが機能する、よりパーソナライズドな方向に進むだろうと考えています。音楽の目的やあり方がどんどん変化していけば10年後にはヒットチャートと呼ばれるものはなくなっているかもしれないですよね」

現在はコア技術の開発は完了し、デバイスのローンチ後は音楽配信サービスにも参入する予定だ。ウェルビーイングに賛同してくれるアーティストとのコラボレーションも計画中だという。しかし、あくまでもスコープはBtoBtoCで個人が楽しむサービスにしたいため、企業への導入は当面考えていないという。

「イヤホンをつけられて、より集中して働きなさいって管理社会みたいで嫌でしょう(笑)。企業への啓発よりも、自分が自分を高めるために、自分のマインドを大事にしてほしいんです。これだけテクノロジーやAIが発達しているんだから、人間にしかできないクリエイティブなことや、食べる、寝る、運動するといった生命活動の優先を体現するプロダクトにしていきたいですね」

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(text: Yuka Shingai)

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