テクノロジー TECHNOLOGY

義手からダーツを発射!?筋電位で動くバイオニックNERF

Yuka Shingai

義手のように取り付けて発射するビジュアルはまるでSFアクション映画に出てくるヒーローのようだ。スポンジ状の弾頭を持つダーツと呼ばれる弾を発射し、シューティングゲームを楽しむ銃型の玩具、NERFはサバイバルゲームにもよく用いられ、本国アメリカでは子どもから大人まで幅広く人気がある。今回、動画で用いられているのは腕に障がいを持つ人も楽しめるように作られたバイオニックNERF。オンラインストアで揃えたハードウェアから生まれたというこのアイテムは、いったいどのように作られているのか。

動画の男性、Nicolas HuchetさんはNERFを楽しむひとり。数年前に右腕を失った彼が装着しているのは、正規品のNERFではなく、前腕部の筋肉を収縮させることで射撃ができるバイオニックNERFだ。

片腕しかなくても発射できるNERFを開発したのはエンジニアとデザイナーによるクリエイティブ集団『Hackerloop』。ちょっと馬鹿げていて、そして創造的なものを作るのが大好きなHackerloopは、「Nicolasは片腕しかないから、NERFで負かすのは簡単だな」とジョークで言ったことを機に、片腕なしでも発射できるNERFを作れないかと開発に乗り出した。

まず初めに、3Dプリンターを使ってNicolasさんの腕にぴったりハマる円筒状のNERF銃を改造するところからスタートし、引き金をひき、発射する仕組みには、筋肉を動かしたときに生じる電圧、筋電位を計測し記録するEMGというテクノロジーを利用した。つまり、NERFを装着した前腕の筋肉の収縮に反応して弾が出るというわけだ。ここに、ハードウェアの電子工学を用いて、たったの2日間で完成させたNERFは、ハードウェアの部品全てがオンラインで入手できるものというのも特筆すべき点だと言える。まさにこれはDIY精神の賜物だ。

EMGは体とハードウェアを繋げる素晴らしい手段で、他にも使い道が山のようにあるらしい。

「体の不自由を解決することが第一の課題なのではなくて、こんな面白いおもちゃで友達と楽しめるってことが世の中の流れを変えるんじゃないかな」とHackerloopの責任者Valentin Squirelo氏は語っている。

”What could go wrong?(何か問題でもある?)”がモットーのHackerloop。とびきり楽しくて、そして徹底的に馬鹿馬鹿しい彼らの挑戦はこれからもまだまだ続きそうだ。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=45HNO8SIvSc

(text: Yuka Shingai)

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テクノロジー TECHNOLOGY

目は口ほどにものを言う!? 視線で操作できるPCが障がい者の日常を取り戻す

田崎 美穂子

目の動きだけでPCが操作できる ―まるで近未来映画のような話を、オリィ研究所の吉藤健太朗氏が実現させました。たとえしゃべれなくても、手足が動かなくとも、視線でPCを操作できる、これがもう「夢」ではなく、現実のものとなっているのです。

東京都三鷹市にオフィスを構えるオリィ研究所。たった一人ではじまったこの研究所が開発した視線で文字を打つことのできるソフトウェア「OriHime eye」が話題をよんでいます。
「車イスで視線入力をして、発話もできて、しかも前方も見えるようにしたい」というALS(筋萎縮性側索硬化症)患者さんの要望を実現するために生み出されたのがこのPC。透明な画面は、前方を見通すこともでき、さらに音声を発する機能も付いているので発話もできます。加えて、とてもシンプルで簡単に操作できるため、ALS患者さんの念願だった普通のコミュニケーションを取ることを可能にしたのです。

この研究所を立ち上げたのは吉藤健太朗氏。高校3年間、ものづくりの巨匠 久保田憲司師匠に師事し、電動車椅子の新機構の発明で、数々の賞を受賞。高専で人工知能を研究した後、早稲田大学にて独自のアプローチで、分身ロボットの研究開発進めました。小学5年~中学3年まで不登校だった、という自身の経験から、「孤独の闘病」という精神的ストレスの解消を目的に福祉機器の開発を志したそうです。「入院していても、動けなくても、家族や友人たちと日常生活を共にできる、人と人をつなぐ福祉デバイスを開発したいと思いました」。2010年、遠隔型分身コミュニケーションロボットOriHime人型バージョンが誕生。2012年には多方面からバックアップを受けてオリィ研究所を株式会社に。サークル的な活動で始まった研究室が大きな一歩を踏み出したのです。

ALS患者だけでなく、麻痺や肢体不自由などの障害で「動けない、しゃべれない」人にとっても、「会いたい人に会えて、行きたいところへ行き、伝えたいことを伝えられる」が実現可能となる視線入力。まるでSFの世界のような先進技術が、ベッドの上にいても、「親しい人とつながり、闘病生活が孤独でなくなる未来」を創りだそうとしています。

(text: 田崎 美穂子)

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