医療 MEDICAL

包帯が医師との通信デバイスに。5Gを使った「スマート包帯」とは?

岸 由利子 | Yuriko Kishi

今後、IoTの普及に必須となる5Gインフラ。 イギリスウェールズ州南部にあるスウォンジー大学では、この技術を使った“スマート包帯”の研究開発が着々と進められている。患者の状態をリアルタイムで経過観察できるウェアラブル医療機器の登場によって、ヘルスケアの未来はどう変化していくのだろうか。

スウォンジー大学が研究開発中のスマート包帯は、火傷や糖尿病などによる創傷を負う患者のために考案された。病院から遠い場所に住んでいたり、何らかの理由で通院できない患者など、遠隔での経過観察を実現するために、5Gをベースに、患部の状態を感知するナノセンサーを採用している。そのデータは、3Dプリント技術によって、微細に視覚化され、スマートフォンを通じて、直ちに医師側に送信される仕組みだ。

「スマートフォンを通じて、5Gインフラと創傷を繋ぐことによって、その人の居場所や健康状態を把握することも可能にします」と、同大学Institute of Life Science学部長のマーク・クレメント教授は話す。

感染症や慢性創傷を抱えている患者は、病院に再診する前に病状が悪化することもあり、最悪の場合、切断に至るケースも多々ある。リアルタイムで経過観察できるスマート包帯なら、患者の状態に応じて、その都度、必要なカスタムメイドの治療を提供できるので、不測の事態を防ぐことにも繋がる。

2017年4月、12ヶ月以内に臨床試験を開始すると発表されたスマート包帯。13億ポンド(約1859億7997万円)を費やして行われているこの研究開発が成功し、実用化が実現すれば、医師は、患者の自己申告によるデータに頼らずとも、より正確なデータを得られるようになり、効率的な病状の改善が期待できると共に、患者それぞれのライフスタイルに合ったヘルスケアの提供が可能になる。

今、メディカル・イノベーションが、健康の新たな時代を拓こうとしている。

[TOP画像引用元:https://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-south-west-wales-39590851

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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医療 MEDICAL

メンテナンス手術が不要に。3Dプリンター技術による新たな乳房再建方法

HERO X 編集部

女性のがんの中で罹患率が最も高いとされる乳がん。乳がんによりなくした乳房を再建する手術を受ける女性も多い。しかし、一般的に行われているシリコン・インプラントを使った再建では、数年ごとにインプラントを入れ替える必要があったのだが、近い将来3Dプリンター技術を使った乳房再建方法が生まれるようだ。

開発を手がけているのは3Dプリンターを独自開発するドイツのBellaseno社。ポリマー材を3Dプリンターで精巧に印刷したインプラントを製造し、インプラントを患者自身の体脂肪で組織形成する技術の開発により、長期的な投薬や度重なる手術によるリスクを回避することが可能だという。この特殊な3Dプリンティングを可能にしたのが日本の技術だった。精密さを要する治工具などを手掛ける企業のテクダイヤ株式会社は、インプラントの材料となるポリマーを巧みに積み上げていくためのディスペンサーノズルを開発、3Dプリンターの開発を成功に導いた。インプラントの材料となるのはポリマー(ポリカプロラクトン)と呼ばれる素材だが、形成にはディスペンサーノズルからこのポリマーを早いスピードで正確に吐出し積み上げていく必要があった。人の体に入れるもののため、その構造は非常に精密で複雑。小径のノズルかつ高精度な塗布ができるノズルが求められていた。 同社は先端わずか150μmのディスペンサーノズルの先端端面を液状の研磨材を使って研磨する「ラップ研磨」によりさらに加工、流動性を高めるためにシリンジとノズルを同口径化することでBellaseno社が手がける3Dプリンターに必要な部品を作り上げた。

これまで乳房再建に使われてきたのは主に2つ。「シリコン・インプラント」と呼ばれるものを乳房を切除したところから入れ込む方法と、お腹や背中の組織を使い再建する「皮弁(ひべん)法」という方法だが、シリコン・インプラントは10年ごとにインプラントの入れ替えが必要となり、「皮弁法」では乳房切除部分以外にも傷が残るなどのネックがあった。

また、今年に入り、乳がんによる乳房再建手術などでも使われる人口乳房が原因で血液ガンになった症例が国内でも発見され、乳がんの再建手術についてはより安全な方法を求める声が高まっている。 Bellaseno社が開発中の3Dプリンターを用いた乳房再建技術は現在、前臨床段階で来年には順次病院へと展開される予定だ。この技術が導入されれば、メンテナンスのための再手術の必要もなく、患者の体の負担も減る。新たな技術の力でまたひとつ、最新医療が日本でも生まれようとしている。

[TOP画像引用元:BellaSeno

(text: HERO X 編集部)

(photo: テクトダイヤ株式会社)

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