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シルクドソレイユが認めた、下半身麻痺のクレイジーダンサー

中村竜也 -R.G.C

自分にこれは出来ない。私の性格には向かないからやめようといった具合に、様々なシチュエーションや環境の中で、多くの人々が夢を過去に置いてきたことだと思います。しかし、今回ご紹介する松葉杖ダンサー・Dergin Tokmakは、自らの夢を実現するために、けして諦めることなく努力を重ね、結果に結びつけた素晴らしい人物なのです。

圧倒的な思いが導く成功への道

1973年、ドイツのアウスブルグで生まれたDergin Tokmak。1歳の頃に発症した急性灰白髄炎により、下半身に障がいを抱えたまま幼少期を過ごしてきました。そして、12歳の頃にブレイクダンスと出会い彼の人生は一変。下半身が動かなくても、踊りたいという彼の中に生まれた気持ちを大切にし、松葉杖を利用したダンススタイルにたどり着いたのです。たとえ下半身が動かなくても、ブレイクダンスという武器を身につけた彼は、仲間たちと切磋琢磨を繰り返し自らの技を磨き続けることで、そのハンディキャップを自信へと変えていったのです。

そして2004年31歳の時、人生を変える出来事が訪れたのです。ひたむきに続けてきた彼の活躍が認められ、芸術性の高さだけではなく、その人並み外れた身体能力と技術を持った者だけが入団を許される世界的エンタテイメント集団・シルクドソレイユのパフォーマーとしてのオファーを勝ち取ったのです。しかしそれは、成功への道であると同時に、今まで以上の努力が必要な世界。プロフェッショナルでいるために数々の苦難と向き合っていかなくてはいけないのです。名声を得るということの裏には、これまでにないプレッシャーが必ず存在するはずです。その孤独で長い闘いは、きっと我々の想像を絶することだと思います。

現在43歳になった彼は、その年齢によりもしかしたら体力の衰えを感じているかもしれません。しかし、これまでも数々の壁を乗り越えてきた彼なら「リミットを作るのも自分、リミットをなくすのも自分」と言い放つことでしょう。下半身に抱えた障がいをものともせず、ポジティブな発想と夢を叶えるために諦めない強い気持を持つ人間だけに、一流という称号が与えられるのです。

webside : www.stixsteps.de
Facebook : https://www.facebook.com/DerginTokmak.stix/
Instagram : Stixsteps
Youtube channel : Stixsteps

(text: 中村竜也 -R.G.C)

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情熱にとりつかれた義足のスケートボーダー、クレメント・ザンニーニ

Yuka Shingai

スポーツ界の明るい未来を担う存在として、義足のスポーツ選手が年代、国籍、競技のジャンルを超えて活躍している。今回紹介するスケートボーダー、クレメント・ザンニーニもそのひとり。ショートパンツとナイキのシューズ姿で華麗に宙を舞い、目を見張るような離れ技から等身大の素顔までSNSで披露する彼はまさにミレニアル世代を代表する義足のアスリートだ。

クレメント・ザンニーニはフランス、ヴィッテル出身の23歳。生まれながらにして右脚が不自由な彼は幼少期から活発でエネルギーに満ちた子どもだった。義足を使ってスケートボードに取り組む彼の表情は、いまもずっと少年のようにひたむきでピュアそのもの。「義足も、スケートボードも僕自身の延長にあるもの」と自分に与えられたものを謳歌する姿は、とびきりチャーミングだ。

エクストリームスポーツに属するスケートボードは、とにかく身体的にも精神的にも強靭さが求められる。町行く歩行者や車にぶつかることなく、4つの車輪がついた板の上で進み続けられるようになるだけでも何カ月もの練習を要するし、急な傾斜やエスカレーターの手すりの上を滑り降りたり、階段の上からジャンプする高度なトリックを成功させるには、体に不自由あるなし、若さに関係なく、相当のスキルが必要だ。派手に転倒することも珍しくはないし、長時間のセッションの後には痛みがつきもの。日常的にひび割れた皮膚をニッパーでケアするのも欠かせない。

右脚の義足では足首を曲げることができないために、ザンニーニには物理的に不可能なトリックも少なくはないが、それでも彼は来る日も来る日も練習し続ける。

「カウチに寝転がって一日中ゲームするなんて考えられないよ、ただ僕はスケートがしたいんだ」

その練習量のヘビーさで義足が壊れてしまうこともある。それも1カ月に1回は起こるのだと言う。

「僕には限界があることも分かっている、だけどそんなことは気にしていない。僕にはスケートボードが全て、それ以外はどうでもいい」

そんな一貫したアティチュードが示すように、スケートボードへの真摯な愛情、それだけが彼をボードに向かわせる。

「自分自身をロールモデルだなんて思わないよ、好きなことをやっているだけ。それだけのことさ」とあくまでも飄々と語る彼の言葉には勇気やくじけない心、しなやかさが秘められている。

スケードボードだけではなく、エクストリームスポーツ界のこれからを照らす存在として、ザンニーニの活躍に期待したい。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com

(text: Yuka Shingai)

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