医療 MEDICAL

米粒にすら文字が書ける精密さ。医療用ロボット「ダビンチ」とは?

HERO X 編集部

これは、映画ではなく、近未来の話でもない。すでに世界中の先端医療の現場に配置がはじまっている手術支援ロボの映像だ。その名も「ダビンチ」。日本ロボット外科学会が紹介したデモンストレーション動画では、アームの先端で米粒に文字を書く映像や、小さなオリガミを折る映像も公開されている。患者の負担を最小限に抑えた手術ができるという手術支援ロボ、日本でも最新型の薬事許可がこの春、承認された。

2018年春、手術支援ロボ開発のリーティングカンパニー、アメリカのインテュイティブサージカル社は、最新型モデル「ダビンチ X サージカルシステム」の薬事許可を取得、5月から日本国内での販売を開始した。「ダビンチ」は1990年代にアメリカで開発され、89年代より臨床用機器として米国で販売がはじまった手術支援ロボ。人間の手よりもはるかに小さいアームは、内視鏡とともに使うことで、患者に負担の少ない低侵襲医療を行なうことができるというもの。内視鏡カメラから送られる映像は3Dモニターで映し出されるため、執刀する医師は術野が目の前に広がるような状態で「ダビンチ」を操ることができるのだという。

Da Vinci X[引用元: https://www.intuitive.com/

ダビンチサージカルシステムはすでに複数のモデルが販売されている。日本では2009年に厚生労働省から許可を得て実用化が進み、徐々に導入する病院が増えだしている。今回、販売になったのは「ダビンチ」の第4世代のモデル。「ダビンチX」は前立腺悪性腫瘍手術、腎部分切除手術、子宮悪性腫瘍手術をはじめとする一定の術野範囲で行われる手術に対応する。動画で紹介されているのは上位機種の「ダビンチ Xi」。サージョンコンソールとビジョンカート、共通 の鉗子類が使えるため、「ダビンチX」導入後に、上位機種の「ダビンチXi」にアップグレードすることも可能という。これらのロボはあくまでも手術の支援を行なうロボット。医師に代わり手術をするものとは異なる。

日本販売にあたり、インテュイティブサージカル合同会社社長の滝沢一浩氏は、「日本における外科手術は、治療の成績と患者さまのQOL向上のために絶え間なく進歩を続けており、そのためにロボット支援手術を選択される先生や病院が増えてきています。新たに手術支援ロボットの導入を検討している病院もあれば、より多くの症例を、より多岐にわたる症例で検討されている病院もあります。ダビンチ Xは、病院や地域医療におけるさまざまなニーズに対応する選択肢のひとつとして、先生方や患者さまに貢献できると確信しています」と述べている。ロボット技術と医師の力の掛け合わせは医療の未来を明るくしてくれそうだ。

[参考:日本ロボット外科学会
[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=_q-YQwFjIj0

(text: HERO X 編集部)

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医療 MEDICAL

新世代の担架「Lenify」は、患者を持ち上げずに“すくい上げる”

Yuka Shingai

常識は、いつ、どこで変化するか分からない。だから、世の中は面白い。事故現場やスポーツでの負傷をはじめ、急病人が出た際に迅速に患者を搬送する担架。この担架の常識を変えてくれる存在が出現した。担架をおろし、患者を担架に移動させる。一見、簡単そうに思えるこの動きだが、メディカル現場の人たちは細心の注意を払っていることをご存じだろうか。体位を動かした衝撃で、患者の様態が悪化するなど、二次被害が起きる危険性を孕んでいるからだ。注意を怠れば、患者を落下させてしまう可能性もあるという。専門的な知識がなくても患者の負担を最小限に抑えられる担架の開発が、アメリカで進んでいるようだ。

「Lenify」はアメリカのカリフォルニア州の美術大学、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインでプロダクトデザインを専攻していたDanny Ta-Chin Lin氏によるプロジェクト。幼少期から物を分解したり、組み立てることが好きだった彼が手がけた担架は頭部、上半身の右半分と左半分、下半身、と4つのパートに分離させることができる。この画期的なデザインは国際的なプロダクトデザイン賞で知られるレッド・ドット・デザイン賞を2013年に受賞したほか、同年のインターナショナル・デザイン・エクセレンス賞でファイナリストに選ばれるなど注目を集め、デザイン系のウェブサイトやビジネス誌でも特集が組まれた。

使い方はいたってシンプル、分離した担架を体の下にすべりこませ、ハンドルを回して結合するだけ。患者の体勢が崩れるのを最小限に留めつつ、体のそれぞれの部位をすくい上げることができるのは、このユニークな構造と形状によるもの。体を包み込むようにカーブがついていたり、持ち手がつかみやすくなっていたりと、きめ細やかな配慮がうかがえる。

旧来の担架は患者を持ち上げてから、搬送先で下ろす2ステップが必要だったが、「Lenify」は乗せるだけでOK。患者をより簡単に、安全に搬送することができるのだ。

近い将来、担架は「分離するのが当たり前」という“常識”が、世の中に普及するかもしれない。まだ一般市場での流通には至っていないが、患者の安全を担保する存在として実用化を期待したい。

[TOP動画引用元:https://www.dannylinconcept.com/lenify

(text: Yuka Shingai)

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