テクノロジー TECHNOLOGY

コロナ第2波に間に合うか!?ワクチン開発に活用されるAI

HERO X 編集部

世界でロックダウンが段階的に解除され、日本でも緊急事態宣言が解除され徐々に規制緩和に向かっている。しかし、ドイツのように自粛を解除すると感染が増えてしまうケースもあり、一刻も早いワクチンの開発が望まれる。国内でのワクチン開発も進んできたが、創薬の分野で貢献していたAI技術が、新型コロナウイルスのワクチン開発にも活用されることになった。今後、期待がかかるテクノロジーとは?

COVID-19向けDNAワクチン
共同開発チームにAIを活用

フューチャー株式会社は、大阪大学などが手掛ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けワクチン開発に参画すると発表。大阪大学とファンペップ株式会社が取り組む抗体誘導ペプチドの開発と、アンジェス株式会社による臨床治験の推進において、フューチャーが有する抗体誘導ペプチド推定AI(人工知能)が活用されることになった。これにより、次世代ワクチンの開発スピードが向上する。

抗体誘導ペプチド推定AIとは、大阪大学、ファンペップ、フューチャーが2018年より協働で研究開発を進めてきたシステム。抗体誘導ペプチドは、今までも免疫疾患などの分野で開発が進められていたものだ。ワクチンの投与量や回数の減少、より強力な予防や重症化抑制などのメリットが期待されている。抗原配列をAIが予測する探索システムを構築することで、ワクチン開発のスピードアップがはかれる。

フューチャーでは今後も創薬分野でのAI技術開発に力を入れていく予定だという。早くても実用化は2021年といわれている新型コロナのワクチンだが、最新技術の導入による一日も早い完成に期待したい。

時間のかかっていた創薬の現場を
最先端技術で改革

IT技術により、薬の開発のスピードをアップさせる試みは、すでに始まっている。といっても、医薬品メーカーと高い技術をもつIT企業のマッチングは、なかなか難しい。その問題を解決するのが、京都大学大学院の奥野恭史教授が創設したライフインテリジェンス コンソーシアム(以下、LINC)だ。

過去記事URL:http://hero-x.jp/article/3991/

LINC では、AIやITのことがわからないという医療・製薬・ヘルスケア関連の企業と、医療のことはわからないがITやAIの開発は得意という異業種を、マッチングしていく。大学が助言、サポートをすることで、両者の橋渡しを推進していく取り組みだ。

現在、LINC ではCOVID-19対策の特別研究プロジェクトチームを立ち上げ、情報提供などのサポートを行っている。すでに会員IT企業のコロナ関連への研究貢献や、AIプラットフォーム提供が始まっている。

データ解析や開発プラットフォームにAIなどの技術を活用することで、今まで時間を要していた創薬の現場も、スピードアップがはかれる。近年では病原菌の出現サイクルが速まっているとの指摘もあり、ウイルスと人類との戦いはいたちごっこの部分もある。しかし、テクノロジーの進化により、ワクチン開発などのスピードが上がれば、疾病との戦いにも希望が見えるのではないだろうか。

(text: HERO X 編集部)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

テクノロジー TECHNOLOGY

オムロン×スクエニ!?異色のタッグが進化させた卓球ロボ「フォルフェウス」

Yuka Shingai

オムロンが「人と機械の融和」を目指して2013年より開発を続けている卓球ロボット「フォルフェウス (FORPHEUS)」。 2019年夏に行ったフォルフェウス第5世代の取材では、第5世代でまだ実現しきれていない、ロボットとラリーするプレイヤーのモチベーションをいかに向上させるか、感情の部分に踏み込むかが今後の課題としている旨を伺ったが、ついにこの度、その課題部分がアップデートされた第6世代がお目見えとなる。1月7日からアメリカ・ラスベガスで開催される、「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2020」に出展が決定している。

今回、オムロンが共同研究を行ったパートナーはスクウェア・エニックス。コンシューマーゲームから新型エンタテインメントまで、ゲーム業界の全分野を網羅するリーディングカンパニーとタッグを組んだ背景には、個々人のモチベーションを引き出すインタラクション技術の強化が求められていたことがある。

アスリートが競技に集中、没頭し、モチベーションが最大化されるさまを「フロー状態」→「ゾーンに入る」と称することがあるが、退屈気味の人には厳しい球を打ち込む、はたまた困惑気味の人には易しい球を返すなど、感情や能力に合わせてチャレンジ度合を調整することで、第6世代のフォルフェウスはモチベーションの向上を図るインタラクションを実現することを狙いとしていた。

スクウェア・エニックスはゲームプレイヤーの感情などを推定し、個々に適したコンテンツを提供することを目指すAI技術(メタAI)に関する技術と知見を豊富に備えている。ゲームAIはメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3つのAIが連携しているが、その中でも状況を監視し、ユーザーの心理を推測し、キーとなる役割を適切なタイミングでエージェントに指示するメタAIを活用することで、どのようなラリー計画が人のモチベーション向上に寄与するかを検証してきた。直近では、プレイヤーのスキルや推定した感情に基づいて返球内容を導き出しているが、今後はその人の性格や欲求も考慮に入れていきたいとのことだ。

また、超初心者から上級者まで対応できる柔軟なロボティクス技術、人の能力を向上させる知覚/身体拡張技術進歩を並行しながら、プロの球も返せる、そしてプロのような球も打てるロボットを目指す予定。

機械が人を追い越し、人の役割を奪うだろうとAIの台頭が脅威として語られる場面はこれまで幾度となくあったが、フォルフェウスが目指すのは、機械と人が共に高めあい、成長しつづける世の中だ。代替とも共存とも、また一味違う「融和」の発展を追い続けよう。

(text: Yuka Shingai)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー