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BMXライダー宇野陽介が見つめるエクストリームの新境地【エクストリームスポーツ文化の作り方】

朝倉 奈緒

「エクストリームスポーツ」とは何でしょうか?言葉の通り「extreme=過激」な、刺激的で、観る側もプレイする側にとってもエクサイティングなスポーツであることは間違いありません。欧米の若者を中心にファッションや音楽とリンクし、「スポーツ」というよりは「ストリートカルチャー」のベールを纏い、日本にもそのスタイルと共にやってきました。2020年の東京五輪で、新たにスケートボードやサーフィン、スポーツクライミングなどに加え、BMXフリースタイル(パーク)が正式種目に決定したことで、今後ますます注目が集まり、プレイヤーも増えることが期待されます。今回エクストリームスポーツの代表競技”BMX”国内トップライダーである宇野陽介(YORK UNO)さんに、日本におけるエクストリームスポーツ文化を作る第一人者として、その魅力について伺いました。

創作活動によってBMXのパフォーマンス力をあげる

BMXは、20インチの子供が乗るような小型自転車です。宇野さんが主にプレイする“フラットランド”は、平らな地面があればどこでも楽しめるので、普段は駐車場や公園などで練習するそう。BMXを華麗に乗りこなす宇野さんを見て仰天する人たちの顔が目に浮かぶようです。

BMXのフリースタイルは、「表現力」がとても重要な要素です。宇野さんはBMXライダーのプロであると同時に、DJ、楽曲・映像制作、イベント企画など、幅広く創作活動をしています。同じ「表現力」が問われるそれらの活動が 、BMXのパフォーマンス力を上げる役割を担っているのです。
「例えば、映像を制作しながら自分や他のライダーのライディングを研究できます。また、トリックとトリックを繋ぐルーティーンの部分とDJプレイにおける曲を繋ぐことは感覚的にとても似ています。イベント企画に関しては、表現者としてお互いの難しさや素晴らしさを体感する事で、より本質を理解できると感じてます。」フィジカル面は、BMXを乗ることでスキルアップできますが、「表現」面でのクリエイティブ力を上げるためのトレーニングが、DJプレイや楽曲・映像制作といった創作活動なのです。


日本のエクストリームカルチャーの現在を見事に表現した映像。シーン国内トップレベルのメンバーが出演している。

2020年東京五輪はエクストリームスポーツの新境地

宇野さんは2020年東京五輪の正式種目にスケートボードとBMXのフリースタイルが採用されたことで、プレイヤー自身はもちろんのこと、エクストリームスポーツに対する周りの意識が大きく変わると予想します。
「より多くの人達がエクストリームスポーツの魅力を知る大きなきっかけになると思います。頑張って街中で練習している若い世代にも“オリンピック”という大きな目標地点があることで、社会的信頼度は高まると思います。」

逆に、オフィシャルのスポーツとして広く認知されることで、「本来のカウンターカルチャーから生まれたBMXやスケートボードの様々な表現の自由が奪われる」ことも懸念されます。具体的には、エキサイト出来るスポットでのライディングを求めるプレイヤーによるけがや事故がニュースで報道され、エクストリームスポーツに馴染みのない人々が、不安や戸惑いを感じてしまうことなどです。
「まずは2020年東京五輪を機に、競技人口が増加することで、社会的な認知度と地位が向上され、プレイヤーの競技に対しての自尊心やカルチャーとしてのルールが生まれることを期待しています。」

学校のクラブや部活動にも、将来的にはBMXやスケートボードのようなエクストリームスポーツが追加されることを目指して活動している宇野さん。子どもたちにBMXを教える姿は最高に生き生きとしていて、子どもたちをはじめ、彼らの両親やその周りからもサポート体制が徐々に整い始めていることが伺えます。

表現者とは、挑戦し続ける人のこと

車いす版BMXであるWCMXライダーについては「ハンディキャップを武器に果敢に攻めるスタイルにたくさんの人々が惹きつけられるのだと思います。正にエクストリームスポーツの本質的部分が伝わるプレイヤーだ」と評価します。
表現者として、限界に挑戦し続ける姿勢は、観客や周囲を感動させ、時に勇気を与えてくれます。エクストリームスポーツは、挑戦する気持ちがあれば、誰にでも開かれているものです。本当にボーダレスな社会になくてはならないもの。エクストリームスポーツは、そのひとつなのではないでしょうか。


YORK UNO promotion movie in Katsuyama
「今後エクストリームスポーツやストリートカルチャーが広がる為の祈りを込めた作品です。by YORK UNO

(text: 朝倉 奈緒)

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“マーダーボール(殺人球技)”のジャンヌ・ダルク。日本代表、史上初の女性選手【倉橋香衣:HEROS】前編

岸 由利子 | Yuriko Kishi

「マーダーボール(殺人球技)」の異名を持つウィルチェアーラグビーは、車いすを激しくぶつけ合い、突き飛ばすこともあれば、吹っ飛ばされることもある凄まじい競技。それでいて、れっきとした男女混合の団体球技だ。昨夏のリオパラリンピックで銅メダルを獲得したウィルチェアーラグビー日本代表は、2020年東京パラリンピックの金メダル獲得をめざして、新たなスタートを切った。そんな中、今年1月、女性としては、史上初となる代表候補に選ばれたのが、倉橋香衣(くらはし・かえ)選手(商船三井)。プレー中も笑顔を絶やさず、生き生きとコートを走る倉橋選手の魅力に迫る。

唯一、本気の激突が許されたパラスポーツ

ウィルチェアーラグビーは、唯一、車いす同士のタックルが認められたパラ競技。通称「ラグ車」と呼ばれる競技用車いすは、敵から引っ掛けられないように、車体の前面をウィングで囲ったハイポインター用と、長い車体に相手の車いすを食い止めるためのバンパーが付いたローポインター用の2種類がある。いずれも、激突に耐えうる強靭な構造だ。ボールを運んで、ゴールへと向かうハイポインターに対し、倉橋選手は、味方のためにディフェンスに徹するローポインターの役割を担っている。

「ウィルチェアーラグビーの一番の見どころは、タックルのぶつかる音や衝撃の迫力。吹っ飛ぶくらい、本気でぶつかり合うことが許されたスポーツって、他にはないと思います。特に外国人選手は、体も大きく、スピードもパワーもあるので、バーンと当たってきますが、それが面白くて。控えめに当たってくる選手もいますが、容赦なく当たってくれた方が、私は楽しいですね。あ、来た来た!みたいな感じで。ぶつかっても、怒られませんし(笑)」

さらに、この競技は男女混成。男性選手と女性選手が同じコートで戦えることも、ウィルチェアーラグビーの魅力のひとつだと倉橋選手は話す。

「まだ本当に怖い目に遭ったことがないからかもしれませんが、怖いと感じることはないですね。転んでも、頭や顔を打つ程度なので、“あ、ちょっと痛いな”と思うくらいで。試合中、ハイポインターたちが、物凄いスピードで走って、ぶつかり合って吹っ飛ぶ時、その振動を感じつつ、“今日も、めっちゃ飛んでるわ~!”とつぶやきながら、次のポジションに移動しています(笑)」

女性初、2020東京パラリンピックの日本代表候補に選ばれたからには、チームに貢献できる強さを鍛えたい

小学1年から高校まで、体操ひと筋の少女時代を過ごしてきた倉橋選手。教師をめざして進学した大学ではトランポリン部に所属し、大学2年の時には、全日本インカレBクラスに出場した。その翌年の春、次のAクラスの出場を目標に公式練習に励んでいた矢先、背中で弾むはずが首から落ちて、頸髄(けいずい)を損傷し、車いす生活になった。

「四肢にまひが残る人ができるスポーツって、本当に少ないんですね。リハビリ中に、陸上や水泳などいくつか体験しましたが、その中でも競技としてやってみたいと思ったのがウィルチェアーラグビーでした。あの激しさに惹かれました」

2013年10月からウィルチェアーラグビーを始め、東京に拠点を置くクラブチーム「BLITZ」でプレーする中、今年1月、2020年東京パラリンピックの日本代表候補に、女子選手として初めて選出された。

「いつかはそこにたどり着きたいと思っていましたが、最初、呼ばれた時は、“なんで、私が?”という感じでした。でも選ばれたからには、もっと上手くなりたいです。私は0.5ですが、実質0なので、それもメリットとして呼ばれた部分は大きいと思います。0.5の男性選手に負けないくらいにならないと意味がないから、本当に頑張らなくちゃダメです」

ウィルチェアーラグビーには、最も軽度な3.5から最も重度な0.5まで、障害のレベルによって異なる7段階の持ち点がある。コートに入る4選手の持ち点は、8.0以内でなければならない。だが、そこに女性選手が加わる場合は、1名につき合計点から0.5マイナスされる。倉橋選手の言う実質0とは、このルールに依るものだ。

3月に、カナダのブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市オリンピックオーバルで開催された「バンクーバー・インビテーショナル・ウィルチェアーラグビー・トーナメント」をはじめ、5月はアメリカ、8月はニュージーランドで開かれた国際大会に出場するなど、今年に入って、海外に行く機会が増えた倉橋選手。アメリカの「トリ・ネーションズ・ウィルチェアーラグビー・インビテーショナル」では、所属する日本代表チームが優勝を果たし、ニュージーランドの世界選手権アジア・オセアニア地区予選では、持ち点「0.5」の最優秀選手に選ばれた。

優勝できて嬉しい気持ちはもちろんありますが、それよりも、色んな経験ができたことが一番大きな収穫でした。試合に出場する度に、新しい何かが見えたり、知れることが楽しかったです。今まで海外旅行に一度も行ったことがなかったので、各国を旅して周るという初めての経験は、スタンプラリーみたいでワクワクしました」 

後編へつづく

倉橋香衣(くらはし・かえ)
1990年、兵庫県神戸市生まれ。小学1年、須磨ジュニア体操クラブで体操を始め、市立須磨高(現・須磨翔風高)まで体操選手として活躍し、文教大進学後はトランポリン部に所属。2011年、全日本選手権に向けた公式練習中に、頸髄損傷し、車いす生活となる。2013年10月よりウィルチェアーラグビーを始め、現在は、埼玉県所沢市に拠点を置くクラブチーム「BLITZ」でプレー。2016年4月に商船三井に入社し、人事部ダイバーシティ・健康経営推進室に所属。2017年、ウィルチェアーラグビー界史上初の女性日本代表候補に選ばれた。

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 壬生マリコ)

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