対談 CONVERSATION

屈強なロボットに憧れた理由とは!?
“株式会社人機一体” 代表取締役社長・金岡博士【the innovator】後編

中村竜也 -R.G.C

“マンマシンシナジーエフェクタ(人間機械相乗効果器)”という独自の概念をベースに、ロボット開発を行う“株式会社人機一体” 代表取締役 社長・金岡博士。未来を劇的に変える可能性を秘めたロボット開発に至ったその起因、そして秘めた思いに、HERO X編集長・杉原行里(あんり)が迫る。

コンプレックスを強みに変え、
研究に活かすということ

杉原:金岡博士の根幹にある、屈強なフィジカルへの渇望や、ロボットで世界と人を変えていきたいという思いは、どこから来ているのですか?

金岡博士:恐らく子供の頃から「弱さに対する恐怖」があったのかもしれません。自分が弱い状態で社会を生きていかなくてはいけない、ということに対する恐怖や絶望感みたいなものが幼少期から強かったように思います。弱いままの自分でいるのは嫌だ。強くなるにはどうすればいいのか。みたいなことを幼い頃から考えていました。

そのために勉強するとか、武道やスポーツをやるというのは当たり前に思いついて行動に移しましたが、必ずしも一流にはなれませんでしたし、そもそもたとえ一流になったとしても、人間であることの弱さからは逃げられない、と気付いてしまいました。それでも、何としてでも、少しでも克服したいというのが、一番根っこにあるモチベーションかもしれません。

杉原:かなり長い間、そのモチベーションで来ているということですよね。

金岡博士:幼稚園とかそのくらいからでしょうか。

杉原:でも、今の話を聞いた子供や若い子たちは、すごくテンションが上がると思います。金岡博士のことをヒーローだと感じるんじゃないですか。みんな何かしら抱えているものは有るにしろ、普通はそこの部分を隠すというか、言わないようにするじゃないですか。僕は常に満足が出来ない部分があるんです。あれもやっとけばよかった、もっと出来たはずだとか。人がどれだけ褒めてくれても、天邪鬼なのかもっともっとってなってしまうんです。逆に言ったら、それがモチベーションになっているのかな。

金岡博士:そうですよね。私も弱いままでは満足できません。人間のレンジをはるかに超えて強くなりたいという超人願望があるんですよ。理系の研究者出身のくせに、その昔は、意外とオカルトが好きだったりもしたんです。スプーン曲げもしました()。改めて考えてみると、その根底にもきっと超人願望みたいなものがあって。

とはいえ、私は普通の人間で、全く超人ではなかった。我々の研究開発は、その絶望から始まっています。その絶望を克服する超人願望をいかに叶えるかが目的になってくる。そしてそこでは、よくある「綺麗な」欲望ではなくて、もっとドロドロとした欲望をちゃんと解放させられるような手段を求めているのだと思います。ロボットに対する思いやモチベーションを再確認するために自己と向き合い、弱さに対する恐怖を強みに変える。その作業こそが、新たな進化への確実な一歩となっているようだ。

人機一体に求められていること

杉原過去に農業革命、産業革命、そして現在のIT革命があるように、革命が起こるタイミングでその時の欲望や、それによって生じる障がいが変わってくると思うんです。そう考えると、今後ロボット革命というのが起きた時に、また何かしらの問題が発生すると同時に、新たな可能性も確実に生まれますよね。その時、現在人機一体に投資している企業というのは、何に期待をしているとお考えですか?

金岡博士:我々がやっていることは、ある意味浮世離れしていますので、前提として、短期ではなく5年から10年くらいまでの中長期的なスパンで見てくれていると思います。我々のビジネスプランは穴だらけでツッコミどころ満載、とても短期的に利益が出るようなものではありません。普通の投資家には相手にされないでしょう。それでも投資してくださる方々がいる。もちろんベンチャー企業である以上は当然ビジネスとして成功することに期待されているとは思いますが、まずはをちゃんと形にして見せてみろという部分が大きいと感じています。その夢を、言葉や絵だけではなく、見た目だけのハリボテでもなく、本物のロボットとして我々が皆さんに、新たな可能性を提示出来るかが問われているのではないでしょうか。

杉原:なるほど。そういう意味では、皆さん投資家であるとともに先生の考え方のファンなのかもしれませんね!

金岡博士:もしそうなら、とても嬉しいです。

杉原:ロボットって皆さん興味があるのに意外と調べないから、一般の方々に具体的に理解してもらうのは、まだまだ難しい分野ではありますよね。検索をかけても、ガンダムとかがどうしても先に出てきてしまいすし。フィクションとして人気のコンテンツが大量にあるので、どうしても金岡博士のロボットのような「リアルな」情報には届き難いですよね。逆に言えば、それだけフィクションのロボットが溢れているならば、みんながロボットに対し夢を持っていると言い方もできるのかなと。

そこで少し話を変えたいのですが、エクソスケルトン(外骨格)など福祉分野との融合が世界的にも盛んになってきていますが、具体的に人機一体ではこの分野に取り組まれていたりしますか? またどのような進化を遂げていくとお考えか聞かせてもらえると嬉しいです。

金岡博士:どう作るかによるとは思うのですが、現状のエクソスケルトンはあくまでも補綴ですよね。結局人間が持つ能力を大きく上回るということは最初から期待されていない。もちろんこれから技術の進歩はあると思いますが、エクソスケルトンである限り、最終的に目指すところはどうしても「歩けない人を歩けるようにしよう」的なところに落ち着くはずです。それはもちろん素晴らしいことですが、一方で、出力のレンジが決まっていることは明らかです。我々が目指す、「弱さ」の克服としての身体能力の拡張は難しい。

もうひとつは、補綴という目的でデバイスを使う以上は、どうしてもその補綴デバイスを隠す方向に行ってしまいます。本質的に「隠さなくてはいけない物」と「身体能力の拡張」は相容れないのではないでしょうか。自己矛盾を抱えているように思えます。具現化しても、拡張デバイスではなく、軽く、小さく目立たない服の一部みたいになってしまうと、技術側の人間としては辛いんですよね。我々のロボットは小さくして隠すつもりは全くなく、むしろもっと大きくなって目立っていきます。

杉原:歩くことを100とする考え方にするから、小さくするとか、隠しやすいという方向にいくんでしょうね。ただ、歩くという100を大きく超えて、例えば「飛べる」ということになったら、倫理的なことは別にして自分の体をどうにかしてもいいかなと、僕は思っていますよ。そういう意味では、人機一体と医療や福祉の分野がマッチングする時が来るんじゃないかと期待しているんです。

金岡博士:そこはやりたいですね。分かりやすく自動車で説明すると、人機一体としては自動車という「型」、すなわちプラットフォームを作ることが重要であって、障がいがある方だけのための移動手段を先に作るというのは、少し順番が違うと思っています。自動車という型があるから福祉車両が一般化するのであって、その逆ではない。まずはみんなが使えるインタフェースがあって、みんなが使いたいと思うこと。そして、それを使う能力がある上で、最終的にみんながちゃんと使えるようにプラットフォーム化するという順番だと考えています。

ですから、我々も人が思い通りに動かせるロボットを作って、その上で、身体能力が一部欠けている人たちにとっても思い通りに操縦できるようにすることが大切なんです。たとえ回り道に思えても、そういうインクルーシブな意味での研究開発を続けられるよう、最大限の努力をしていきたいですね。

人とロボットの相乗効果により創られる、人類の新しい未来のために、先端の研究・開発をしている金岡博士。だからこそ、誰よりも人間らしい一面を持ち合わせているのだなと感じた。けっしてロボットや人工知能には持ち得ない感情を大切にしながら、人機一体はさらなる進化を我々にもたらしてくれるのだろう。また、社員は随時募集中とのことなので、興味がある方は是非大きな一歩を踏み出して欲しい。

前編はこちら



金岡博士
(
株式会社人機一体 代表取締役社長 立命館大学 総合科学技術研究機構 ロボティクス研究センター 客員研究員)
ロボット制御工学者、発明家、起業家、武道家。専門は、パワー増幅ロボット、マスタスレーブシステム、歩行ロボット、飛行ロボット等。ロボット研究開発の傍ら、辛口のロボット技術論を吼えることがある。マンマシンシナジーエフェクタ(人間機械相乗効果器)という概念を独自に提唱し、あまり相手にされないながら、十年来一貫してその実装技術を研究・蓄積してきた。そして今、業を煮やして、ビジネスとしての社会実装に挑戦するため「株式会社人機一体」を立ち上げた。
http://www.jinki.jp/

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 中村竜也 -R.G.C)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

対談 CONVERSATION

「HERO Xに、人を変える力はありますか?」 “ROCKET”の精鋭2人が編集長に逆取材!【異才発掘プロジェクトROCKET】Vol.4 前編

中村竜也 -R.G.C

日本財団と東京大学先端科学技術研究センターが共同で進める異才発掘プロジェクト“ROCKET”。現状の教育や環境に馴染めない、あるいは、物足りなさを感じている「ユニーク」な子たちを支援する取り組みだ。彼らの中には、何かしらの突出した能力を持つ子が少なくない。今回はそんな彼らに「インタビューをしてみないか」と提案してみた。果たして、どのような結果となるのだろうか。

編集部が提案したのは編集長・杉原行里(以下、杉原)への逆インタビュー。異才発掘プロジェクト“ROCKET”からインタビュアーに立候補したのは、ともに高校1年生でROCKET 一期生の、大阪市在住・山下泰斗くん(以下、山下くん)と、ベトナム在住・野中宏太郎くん(以下、野中くん)2人だ。大人ではきりこめない鋭い質問が飛び交った。

左  山下泰斗君(一期生 大阪在住:高1)、右  野中宏太郎君(一期生 ベトナム在住:高1)

我々編集部のある東京と、それぞれが暮らすベトナム、大阪をインターネットを介して繋ぎインタビューははじまった。実は編集長の杉原は野中君とは面識がある。

杉原:今回の対談を決めたきっかけにもなった出来事が、実は僕の中でありまして。それは、現地で野中君とも会った2016年にスイスで開催されたサイバスロン(http://hero-x.jp/article/538/)。あの時、ROCKETのメンバーに大人たちが質問攻めにあっていたんですけど、そのあまりの鋭さにその場にいた大人たちが、1人また1人とその場から逃げるように去っていくのを見て、頑張れ大人たち!負けるな!と感じた反面、この子たち面白い!と思って。

やはり子供たちが持っている素直な感性に対して、大人はしっかりと答え、そして知らないことは知らないとちゃんと伝えるべきだと改めて感じたのが、今回の逆取材を受けたきっかけなんです。

そんな前振りが降られると、いきなり山下くんから質問がはじまった。

なんで?の重要性を改めて感じる

山下くん:それではまず僕から質問させていただきます。世界一ボーダレスなメディア“HERO X”は、どのようなきっかけで作ろうと思ったのですか? 

杉原:僕は15歳の時からイギリスに高校、大学と留学し、日本に帰国後、父が創業した車の先行開発やF1などの設計を行うRDSという会社で工業デザイナーという立場で仕事をしていました。最悪にもその時がちょうどリーマンショックのタイミングで、会社の業績もおもわしくなかったんです。そんな状況だったから、もうがむしゃらにやるしかなく、大学で学んだことを活かす余裕なんて全然ありませんでした。

そんななか、2012年に、寺崎さん(http://hero-x.jp/article/2202/) という方から「自分に合った松葉杖を作って欲しい」という内容のメールが突然会社に届いたんです。こっちとしても急なことだから、この人何を話しているんだろう? 自分に合った松葉杖ってないのかな? くらいの知識しか当時の僕にはなくて(笑)。それをきっかけによくよく調べていくと、今の松葉杖の市場っていうのが、レンタルユーザーをターゲットとしたプロダクトの流通がメインとなっていて、個人所有を目的とした製品がないことに気が付いたんです。

車いすや松葉杖をはじめとするや、またそれらを使う人の定義って、みんな平均値で色々なことを言うけど、一体誰のことなんだろう? 言葉が先行してしまっているけど、車いすって何で足が悪い人が使う物って決めつけるんだろう? という疑問を持ち始めたのと、障がいを持っている人をジロジロ見てはいけない風潮ってあるじゃないですか。お互いに落とし所を見つけて社会を何となく上手く回そうとしている姿に違和感を覚えたのが理由で、このHERO Xというメディアを立ち上げました。もうひとつ言うと、僕らが企業としてその都度何かを発表しても一過性でしかないけれど、メディアとして表現すれば、より多くの人にこの考えが訴求できるんじゃないかなって。

野中くん:今のお話を聞いていて、僕の中で質問が出来たんですけど聞いてもいいですか?

杉原:もちろん。

野中くん:真逆な話になるかもしれませんが、最近ベトナムでベトちゃんドクちゃんのドクさんと知り合う機会がありました。僕自身、実際にベトナムに来て感じていたのが、路面状況の悪さと、例えばバイクが歩道を逆走するなどの日本とは違う交通事情を見たときに、義足よりも安全に乗れるバイクが一番ベトナムという環境にあっているんじゃないかなと感じたんです。

そう思っている時にドクさんが、かっこいい三輪バイクを乗っているのを見て、国やその場の環境によって必要とされる物って違うんだと思ったんです。今の杉原さんの話を聞いていて、すごく僕が感じていたことと似ているなと思いました。

杉原:まさにそういうことで、義足ってこんなでしょうって、みんな固定概念がある。ある1つの形をしていなくちゃいけないの?とか思いますよね。

山下くん、野中くん:思います。

杉原:例えば、義足にモーターなんかを入れたら、健常者よりも早く走れるかもしれない。でもそうなると、その足ほしさに「そっちの足の方がカッコイイ」って、モーター付きの義足に足を変えたいと言い出す人も出てしまうかもしれない。そこは倫理的なベースが必要になる。

山下くん:速さだけを求める人ならば交換してしまうかもしれないですね。

杉原:僕もそう思います。それとアキレス腱って消耗品なので、足が遅くなる原因でもあのだけど、それを交換できたらお年寄りの方とかも、もしかしたら100m15秒とかで走れたりするかもしれないじゃないですか。良い悪いは別としても、僕はそんな世の中も白いと思うんです。

野中くん:他の分野でも役立つかもしれないですしね。

山下くん:それこそ、水圧で飛ぶやつとかもありますしね。

杉原:そう! 誰が引いたか分からないネガティブなボーダーに対する発想の転換というのかな。ふたりみたいな若い世代の子がそういう発想を持っていることが大事なのに、そういう純粋な考えを日本は煙たがる気がしていて。マイノリティーとマジョリティーの関係で、多数派の意見が全てではなく、様々な意見があることが面白い、そんなメディアで在りたいなとも思っています。

僕たちにできること

野中くんドクさんの三輪バイクはもっとかっこよくできるし、改良次第でいろんな障害のタイプに対応するポテンシャルを持っていると思います。

杉原:そう思った時に、野中くんならどこを改良する?

野中くん:そうですね、両腕がない、両足がなくても介助者なしで乗れる、そんなボーダー(限界)レスなバイクにしたいです。最低限サドル、サイドブレーキの改良や、バランスよく走ってちゃんと止まれるようにまずしたいかな。

杉原:それなら、ジャイロを入れてサスペンションを良いものに変えたら、もうでこぼこな道なんて関係無くなるね。そういう発想から、誰もが安心して乗れるマシンが出来たら素敵だと思う。ちなみに山下くんは、将来的にどんなことをしたいとかありますか? 逆に聞いてしまって申し訳ないけど()

山下くん:僕はモノづくりに関わりたいなと思っています。なかでも、趣味である模型とかそういうものに。それと、急速に普及している3Dプリンターを使って、何か面白いことができないかなって考えたりもしています。

杉原:模型! 今何か作品見せてもらえたりする?

山下くん:これなんですけど。

がさごそと音がしたかと思うと、画面の向こうには彼が自らの発想で造り上げたロボットの模型が登場してきた。どうやら塗装にもこだわりがあるらしい。

山下くん:小さい頃から紙工作が好きでして。設計図を描いてみて自分なりに作って楽しんでいます。

杉原:物事を考えたり判断する時に 2Dで考える人と3Dで考える人がいるんだけど、山下くんは完全に3D派ですね()3Dの頭の持ち主は僕の経験上、物体の裏側まで見える人なんだと思います。

山下くん:自分では、そういうのが苦手な方かと思っていました()

杉原:どう考えたって、全然苦手な人じゃないですよ!()普通は作れないから!

野中くん:僕はちょっとそういうのが作れないタイプです()


杉原:ね。3人しか居ないのにタイプが分かれるでしょ。ちなみにこの模型には何の塗料を使っているんですか?

山下くん:塗装はTAMIYAカラーを調合しながら使っています。僕にとってTAMIYAカラーは、もちろん色付けの意味合いもあるのですが、少し厚塗りをすることで紙の補強にもなるので、そういう意味でも使用しています。

杉原:塗料を塗料として使うのではなく、他の用途で同時に使うような物の考え方はすごくいいですね。僕も興味あることがたくさんあったから、自分の持っている能力を他のことにどう活かそうかと試行錯誤していたな。

3人が醸し出す不思議な時間はまだまだ続いていくことになる。

後編につづく

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 河村香奈子)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー