医療 MEDICAL

レーザーで体温や血圧を測定!イスラエル発医療ベンチャーが開発する近未来の体内モニタリング技術

平山 麻衣子

イスラエルのテルアビブに拠点を置く「ContinUse Biometrics」社が、画期的な体内モニタリング技術を開発中だ。特殊なカメラとレーザーを使うことで、服を着たまま、体温や血圧、心拍数や呼吸状態など、あらゆるバイタルサインを測定可能だという。

近年、欧米や日本企業がイスラエルに注目していることをご存知だろうか。イスラエルの人口はおよそ850万人。神奈川県よりも人口の少ない国でありながら、毎年800社から1000社が新たに起業する、スタートアップ大国だ。特に、生命科学やナノテクノロジー、医療分野の革新は目覚ましい。

ContinUse Biometrics」社が研究しているのは、呼吸や心臓の鼓動、血流など体内で起こるわずかな振動を、特殊なレーザーとカメラで解析し、様々なバイタルサインをモニタリングするという技術だ。体温や心拍数、血圧、呼吸状態に加え、血中アルコール濃度やグルコースレベルまで測定可能だという。体温計や血圧計、血液検査などの多くの検査が、カメラでモニタリングされつつ、たった数秒間レーザーを照射されるだけで完了するといった現在の方法だけでなく、さらには、スマホやタブレットを用いた検査の実装に向け、研究も進められているという。

また、研究者のひとりであるZalevsky氏はこの技術の将来性について、在宅で医療を受ける人々のための遠隔医療システムの一部として活用することや、自動車と連動させ、運転手の異変を察知し、車を停止させるといった利用について言及している。

まだ研究段階である技術だが、もし実用化されれば私たちの暮らしになくてはならないツールになりそうだ。

参考:https://www.cu-bx.com

[TOP動画引用元:ContinUse Biometrics | Health Sensing Made Simple https://www.youtube.com/watch?v=4VvNCS1WrcY

(text: 平山 麻衣子)

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医療 MEDICAL

人工呼吸器不足が世界を直撃!供給を支える“車”と“掃除機”⁉︎

Yuka Shingai

新型コロナウィルスという未曽有の事態において、日々最前線に立つ医療従事者や医療機関を救うべく、いま、世界中の企業が動き出している。 患者の命綱にもなり得る人工呼吸器の製造・開発に関わる企業の取り組みを2回に渡ってお送りする。

F1チームや自動車メーカー
航空会社が人工呼吸器の製造にジョイン

コロナウィルスの感染拡大が大きく報じられてきた欧州の中でも、ボリス・ジョンソン首相や保健相など、主要な閣僚や担当者の感染が相次いだイギリス。男子ゴルフの全英オープンやウィンブルドン選手権、グランストンベリー・フェスティバルなどスポーツや音楽の大型イベントも開催中止となるなど大きく打撃を受ける中、F1チームが大きな活躍を見せている。

開発拠点を英国に持つレッドブル・レーシング、レーシング・ポイント、ハース、マクラーレン、メルセデス、ルノー、ロキット・ウィリアムズ・レーシングの7つのF1チームから成る「プロジェクト・ピットレーン」が始動し、英政府より要請を受けて人工呼吸器の製造に協力することとなった。

同プロジェクトがフォーカスする3つのワークストリームは、既存の医療機器のリバースエンジニアリング、既存の人工呼吸器の製造サポート、新機器の早急なデザインと製造。ロールスロイス、エアバス、BAEシステムズ、フォード、シーメンスなど14社が加わったコンソーシアム「Ventilator Challenge UK」の一部として、麻酔機器メーカーのPenlonとエンジニアリング企業のスミスグループが製造した既存の人工呼吸器の増産にあたって、1万台の受注を受け、生産がすでにスタートしている。

メルセデスが生産に協力した呼吸器「CPAP」

参加企業であるメルセデスが現在急ピッチで生産を進める機器、「CPAP (Continuous Positive Airway Pressure=持続的気道陽圧)」もそのひとつ。この人工呼吸器は、非侵襲的人口呼吸器と呼ばれるもので、自発呼吸に合わせ、鼻や口につけたマスクから気道を広げるための空気と足りなくなった酸素を持続的に送り込むことで、気道を開き、肺に届く酸素量を増やすものだ。一口に人口呼吸器と言っても呼吸機能の低下レベルにより様々なものがあり、このタイプは、弱いながらも残る患者の呼吸に合わせ空気を送り込むサポートを酸素吸入とともに行うことで換気の改善をする。

そのため、(手術のワンシーンにあるような) 気管にチューブを挿れるなど重篤な換気不全を管理するタイプの呼吸器に比べ、必要な医療スタッフの数や医療的処置の負担も少なくすみ、極めて重篤な患者を管理する集中治療室のベット数も最小限に抑えることができる。またイタリアからはこのCPAPで手当てを受けた患者の約50%が気道確保のための気管挿入などといった侵襲的処置を避けられたという報告も上がっている。

共同開発に携わったメルセデスは、装置の設計図を他メーカーに向けて無償公開する旨を発表、世界中での量産を後押しする一手となっている。

ハイパワー家電のダイソンは
10日で人工呼吸器を完成!

同じくイギリスでは、掃除機や扇風機、ドライヤーなどで知られるダイソンも人工呼吸器の政府の依頼を受け、製造に乗り出した。同社がすでに保持していたデジタルモーター技術をベースにしてわずか10日で完成させた人工呼吸器はベッドに取り付けられる、持ち運び可能なタイプ。
英政府からは1万台の生産受注を受けているが、追加で5,000台(うち1000台は英国内に)を寄贈することを誓約している。

政府及び医薬品・医療製品規制庁のMHRAから生産プロセスの承認を受ける必要がある点が既存製品との相違点だが、デザインの時点でヘルスケア企業やMHRAの識者を巻き込んでいたことから承認のスピードも速くなるだろうというコメントもあり、ダイソンならではのハイパワーをここでも期待したい。

人工呼吸器の不足が世界中で叫ばれるいま、製造業としての知見、ネットワークが最大限に活かされることを願う。

(text: Yuka Shingai)

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