テクノロジー TECHNOLOGY

ワン・トゥー・テンが、またパラスポーツを進化させた!“CYBER BOCCIA”が超楽しそう

岸 由利子 | Yuriko Kishi

東京パラリンピックの正式種目にも選ばれている「ボッチャ」。リオパラリンピックで、日本代表チームが初の銀メダルを獲得したあの競技と言えば、記憶に新しい人も多いのではないだろうか。ボッチャのルールはそのままに、デジタルテクノロジーの力でその面白さを拡張し、まったく新しい“ナイトエンターテイメント”の形に昇華させたのが、今回ご紹介する『CYBER BOCCIA<サイバーボッチャ>』だ。

ワントゥーテンが生んだ、パラスポーツの新しいかたち

まず、ボッチャについて触れておこう。ボッチャで使うのは、ジャックボールという白い“目標球”と、赤と青の各6個のボール。ジャックボールに向かって、それぞれのボールを投げる、転がす、他のボールに当てるなどして、相手よりいかに多くのボールをジャックボールに近づけられるかを競う、戦略的かつ頭脳的なパラスポーツ。

ボッチャの魅力は、障害の有無に関係なく、誰でもどこでも手軽に楽しめるところ。その良さを活かしつつ、本来のボッチャを「ビジュアライズ」「センシング」「サウンド」の3つにより拡張したのが、プロジェクション&センシング パラゲーム『CYBER BOCCIA<サイバーボッチャ>』だ。

この新しいエンターテイメントスポーツの開発を手掛けるのは、株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス(以下、ワントゥーテン)。パラスポーツを“自分ごと化”させることを目指して同社がスタートした『CYBER SPORTS<サイバースポーツ>』プロジェクトの第二弾として、今年8月23日にお披露目されたばかり。

ボッチャの本質であり、醍醐味ともいえる“戦略性”は、リアルタイムトラッキングとプロジェクションで、エモーショナルに美しくデータビジュアライズ。試合を盛り上げてくれるのは、一投ごとに生成されるサウンドと、それに連携して変化するLEDライト。サウンドはプレイの流れに応じて変化しながら、クライマックスに向けて、高揚感をたっぷり演出してくれる。

ボールのトラッキングをベースにしたゲームの自動進行により、得点も自動計測されていく。1対1、2対2、3対3と、各チーム同人数での対戦が2〜6人で楽しめるのだ。

世の中を巻き込むことで初めて伝わる、ボッチャのリアル

ワントゥーテンによると、今後は、『CYBER BOCCIA<サイバーボッチャ>』を各種イベントやアミューズメント施設、飲食店などに設置し、ナイトエンターテイメントの一つとしての新しいパラスポーツとして展開していく予定だ。その収益の10%が、一般社団法人ボッチャ協会へ寄付される仕組みもすでに作られている。つまり、『CYBER BOCCIA<サイバーボッチャ>』をリアルに体験できる機会を作り出すことによって、より多くの人にパラスポーツの魅力を知ってもらうと共に、東京パラリンピックに向けて、日本のボッチャ選手の強化・育成の支援も行っているということ。後者については、金メダルの獲得を狙うことが目標だ。

今日本では、2020年に向けて、パラスポーツの理解促進施策がさまざまな角度から行われている。しかし、それらによって、競技を観戦しようと自らアクションを起こす人が増えたかといえば、中々厳しいのが現状だ。そこで求められるのは、新しい概念のプロモーションだという。

「この状況下において、エンターテイメントコンテンツの力を使い、一般市民を巻き込む形で、また多くの企業を巻き込む形で、ボッチャ、そして、パラスポーツを盛り上げていければと考えています」と話すのは、ワントゥーテンCEOの澤邊芳明氏。パラスポーツをナイトエンターテイメントの一つとして発信するという同社の試みは、世界初の挑戦。ものは試しと、巻き込まれてみてはどうだろう。想像もしなかったニュー・ワールドを通じて、真新しい自分に出逢えるかもしれない。

ワン・トゥー・テン・ホールディングス
http://www.1-10.com/

CYBER SPORTS プロジェクトページ
http://cyber.1-10.com/

CYBER BOCCIA公式サイト
http://cyber.1-10.com/boccia/

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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【HERO X × JETRO】たった30分で食の品質検査を可能に スイス発の驚くべき技術

HERO X編集部

「New Normal (ニューノーマル) 社会と共に歩む」をテーマに昨年開催された日本最大級のテックイベント『CEATEC 2020 ONLINE』にて、17カ国・地域から45社の有力スタートアップが集結した、JETRO設置の特設エリア「JETRO Global Connection」。参加した注目の海外スタートアップ企業を本誌編集長・杉原行里が取材。ブランドに深刻なダメージを与える恐れのある食品の品質を追求し、世界の食品サプライチェーンの信頼性を確保するためにDNA検出技術の開発に邁進するSwissDeCode社。信頼性のある食品とは? スイスの新興企業トップ100の一つにも選ばれた同社CEO・Brij Sahi氏に話しを聞いた。

DNA検査で食の信頼性を高める

杉原:まずは御社の事業内容について、どのようなことをされているのかをお聞かせください。

Sahi:2016年にSwissDeCodeを設立し、主に食品の信頼性を確保することを目的として農家や食品メーカーの安全な食品の栽培および生産を支援しています。そして世界の食品サプライチェーンの信頼性を確保するために迅速でポータブルなDNA検出技術『DNAFoil®』を開発しました。また同年には、アメリカで開催された「MassChallenge」(世界最大級のピッチコンテスト。アーリーステージの起業家たちが資金調達を目的として参加するコンテスト)に参加し、金賞を受賞しました。

杉原:素晴らしい。御社の取り組みが、多くの企業から共感を得たということですよね。その『DNAFoil®』というのは一体どういったものなのですか?

Sahi:ターゲットのDNAのコピーを数百万のコピーに増幅する弊社独自の革新的なDNA検出技術です。最初のクライアントはスイス政府でした。チーズの安全性を高めるために、チーズに生息するバクテリアを検出し、農場から販売するまでのすべての工程で追跡できるようにして欲しいと依頼されました。

また、西アフリカのチョコレート製造工場では、カカオ植物を枯らしてしまうウイルスに長年悩まされており、年間生産量の10%が被害にあっていました。それにより、世界中にカカオを(安定)供給するために農園の拡大を余儀なくされ、広大な森林伐採にも繋がっていました。そこで我々はこの工場で『DNAFoil®』のテストをし、(このような問題の解決のため)植物が症状を示す前にウイルスの存在を検出することに成功しました。我々がこの迅速なオンサイトのDNA検出技術を開発した世界初の企業なのです。

杉原:検査からデータが出るまでに、どのくらい時間がかかるんでしょうか。

Sahi:わずか30分で結果を出すことができます。

杉原:なるほど。思ったよりもスピーディーですね。具体的にはどのような検査方法なのですか?

Sahi:このDNAテストには、以下の4つのステップがありますが、一般的な妊娠検査薬をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。非常に簡単にテスト結果が出るようになっています。
1. DNAサンプル準備、2. DNAの抽出、3. DNAコピーの増幅、4. DNAの検出、という流れです。

杉原:これなら、簡単に取り入れることができそうですね。

Sahi:はい。しかしあるクライアントからテストの要望がきたのですが、『DNAFoil®』だと(テストに)35時間もの時間を要すだろうという状況でした。そこで新たに開発したのが『BEAMitup』(EUが資金提供するISO認定のDNAスクリーニングプラットフォーム)です。採取したサンプルを専用デバイスにセットしてボタンを押すだけで簡単にDNA検出ができるというものです。検査に要する時間は1分足らず。農場、倉庫、スーパーマーケット、レストランなど、様々な場所で簡単にテストができるようになったのです。

BEAMitup

杉原:それは素晴らしい!!

Sahi:そして、弊社の研究所は「ISO17025」に認定されています。これは、試験結果が信頼性のあるものかどうかを判断するための世界基準で、世界中の大きな研究所が認定されているものと同様です。通常は、まず企業がサンプルを研究所に送り、その試験結果とともにISO17025証明書を得るのですが、『BEAMitup』のプラットフォームを使用すると、研究所にサンプルを送らずして、同じISO17025証明書付きの結果を30分以内に得ることができます。

杉原:時間の短縮に加え、顧客からの信頼性の獲得にも繋がるということですね。

Sahi:その通りです。

杉原:『BEAMitup』を使って DNAを検出することによって、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか?

Sahi:現在はPCR検査がDNAを検出するための世界標準になっていますよね。DNAというのは食品だけではなくどこにでも存在するものなので、『BEAMitup』を使うことによって、あらゆる場所で簡単にさまざまなウイルスの存在を証明できるということなんです。

我々が描く未来は、『BEAMitup』が使用されることで、あらゆる場所でISO17025証明書付きの迅速なオンサイトテストが実施できるようになるということです。

コーンの検査にも使われている『BEAMitup』。検査から30分以内に「ISO17025」証明を受け取ることができる。

杉原:御社のテクノロジーはとても革新的だと感じているのですが、今後、このテクノロジーは食品以外の分野にも活かされていくのでしょうか?

Sahi:医療分野でもこのテクノロジーを使用することができると思っています。しかし、これにはまた別の認証を取得する必要がありますがかなり複雑で、残念ながらまだ少し時間がかかりそうです。

杉原:なるほど。レストランなどには導入される可能性はあるのでしょうか?

Sahi:もちろんです。まずは大きな産業からはじめて、そこから小さなユニット、例えば小さな工場やレストランに導入したい。そしていつかは家庭にも入れていきたいと考えています。

杉原:それはどのぐらい近い将来でしょうか? 5年後? もっと先?

Sahi:そうですね…、実現するためには…まずは資金が必要になりそうです(笑)。

いま我々は、食品の品質と信頼性にフォーカスしています。なぜなら、現在の食品の安全性が非常に不安定だからです。例えば、法律ではサルモネラ菌やリステリア菌は25グラムの食品に対してゼロであるということを証明しなければなりません。しかし、ゼロであるということを証明するためにできる唯一の方法は、サルモネラ菌やリステリア菌の“分子のひとつがある“ことを証明することなのですが、実は現在のテクノロジーではまだそれは不可能なのです。そこで我々は、その菌を培養するのですが、現状では培養に約6時間かかってしまう。もう少し改善が必要だと思っています。

杉原:日本ではどのようなアライアンスパートナーを探していらっしゃるのですか?

Sahi:わたしたちの理想のパートナーは、穀物やデリ、肉などの事業セグメントを持ち、既にそれらを食品業界に供給している企業や、自社で食品の成分を分析する機械、研究所を持っている企業です。今年の12月には、遺伝子組み換えトウモロコシを検知するため、農産物・食品分野をリードする世界的なサプライヤーと共同開発した試験的プログラムをヨーロッパで実施する予定です。もし日本でパートナー企業を見つけることができれば、日本でも実施したいと考えています。

栄養価や安全が食品の価値を上げる

Sahi:食品の安全について、もう一つ、私のビジョンをお話してもいいでしょうか?

杉原:ぜひ聞かせてください。

Sahi:消費者が何か商品を購入したとします。その箱にはQRコードが記載されていて、スマートフォンでスキャンすると、その箱の情報だけでなく、商品の成分まで知ることができる。食品アレルギーについて知りたいと思えば、例えばアーモンドなどのナッツ類について、自分の口に入る前に何回のテストを受けたものなのかを知りたいとします。『BEAMitup』」デバイスが、農場、倉庫などに設置され、それぞれの場所で得られたデータがクラウドに集積される。その情報を消費者に提供したいと考えています。

杉原:僕たちも人の体をセンシングするという技術を持っていて、歩くとか座るという人間の動きのデータから特徴が可視化されて、その人が今後どのような病気にかかる可能性があるのかといったことがわかるシステムを開発しています。様々なデータをクラウドに集積管理して統括的に健康管理ができるようにしていきたい。Brijさんがやろうとされているところと近しいところがありますよね。

Sahi:そうですね。

杉原さんはA2ミルクというものをご存じでしょうか? 実は牛乳にはA1・A2という2つのタイプがあるんです。

杉原:それは初めて聞きました。

Sahi:A1ミルクは、人間の体内では消化できないタンパク質が含まれています。A2ミルクにはそのようなタンパク質は含まれておらず、母乳に似た成分が含まれているのです。A1とA2は牛の品種に応じて異なる割合で存在するものなのですが、弊社が世界で初めて、A1とA2を識別するテストの開発に成功しました。その結果、世界中の乳牛のたったの9%のみがA2、91%がA1だということがわかりました。そこで我々はA2ミルクにQRコードをラベリングし、消費者がウェブ上で情報を見られるようにする仕組みを作りました。A2ミルクが何なのかを知ってもらうと、A2ミルクの価値も上がると考えたのです。

杉原:なるほど。データを使って付加価値を付ける。

Sahi:そうです。その食品がどこから来たのか、どのようなものが使用されていて、どんなテストを受けたものなのかなど、消費者が安全な食品を選ぶためには、できるだけ多くの情報が必要だと考えています。

杉原:今はアレルギーの方も多い。消費者にとって食品の安全というのは、健康な生活を送る上で大変重要なテーマです。

コロナのパンデミックが収束したら、ぜひ日本にいらしてください。素晴らしいレストランでおもてなしさせてください。そこでBrijさんのポータブルオンサイトシステムを使って一緒にDNAテストをしましょう!!

Brij Sahi(ブリッジ・サヒ)
Swiss De Codeの共同創設者、兼取締役。航空宇宙、エンタープライズ、ITや電気通信の分野において営業、マーケティング、ポートフォリオマネジメントや事業開発の経験を積む。またヨーロッパとアジアにおいて、グローバルで商業的かつコーポレートなバックグラウンドを持ち、投資、スタートアップ企業の創造と管理、発展中のB2B組織をよりカスタマー市場に一変、継続的な起業家として名を成している。

(text: HERO X編集部)

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