テクノロジー TECHNOLOGY

人工筋肉ベンチャー「s-muscle(エスマスル)」に、世界が注目する理由

岸 由利子 | Yuriko Kishi

ついに、人間の筋肉を超える!? 細く、軽く、しなやかな人工筋肉の誕生 「大学発のベンチャー企業が、新たな人工筋肉を開発した」ーそんなニュースが話題になったのは、ちょうど1年ほど前のこと。s-muscle(エスマスル)とは、2016年4月1日に誕生した東京工業大学と岡山大学の両大学発のベンチャー企業で、その動向に国内外から注目が集まっています。同社の代表である東京工業大学工学院ロボティクス研究分野の鈴森康一教授によると、同社が開発している人工筋肉は、“マッキベン型”と呼ばれるものだそう。今回は、この人工筋肉の特徴と共に、s-muscleの活動についてご紹介します。

s-muscleが開発しているマッキベン型人工筋肉の大きな特徴のひとつは、その細さ。従来の人工筋肉の外径が約10~40mmであるのに対し、わずか2~5mmほど。ゴムチューブの外周にメッシュを編んだ構造で、ゴムチューブ内部に空気を送ることで軸方向に収縮します。

マッキベン型人工筋肉の原理は、1960年頃にアメリカで開発されたもので、現在、複数のメーカーが製造しています.そのほかにも高分子材料や静電気力を使ったものなど、さまざまな人工筋肉の研究が行われていますが、現段階では唯一、実用レベルの収縮率や力の大きさを持つのが、マッキベン型人工筋肉。同教授によると、「収縮率(収縮した長さを元の長さで割った値)が25%程度で、人間の筋肉に比べて3~5倍の力がある」とのこと。どれほどしなやかな人工筋肉であるかーなんとなく想像できたでしょうか?

新型ロボット、福祉介護パワースーツのブレイクスルーに

こちらは、鈴森・遠藤研究室がマッキベン型人工筋肉を使って開発した「人間型筋骨格ロボット」の紹介映像。ご覧になると、しなやかさをはじめとする機能の素晴らしさが、より腑に落ちるかと思います。太りながら収縮を繰り返す様は、人間の筋肉の動きをしのぐ精緻さ!

従来にない、細さ、しなやかさ、軽さ。さらに、力強さも兼ね備えたマッキベン型筋肉は、人間と同じようななめらかな動きを行う人型ロボットや超軽量ロボットなど、新しいロボットへの応用をはじめ、軽く、柔らかく、着心地の良い福祉介護パワースーツやコルセットの開発など、さまざまな用途が期待できます。

2017年春ごろには、顧客メーカーや研究機関と協力して、ロボットや福祉用具などのプロダクトの普及に努めていく予定だそうです。さらに、一般の小口ユーザーにもネット販売を開始する予定とのこと。マッキベン型人工筋肉が、私たちの社会の未来を変える日は、そう遠くないかもしれません。

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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テクノロジー TECHNOLOGY

自ら起き上がり方を学ぶ 犬型四脚ロボット“ANYmal”の未来とは?

長谷川茂雄

数々のメディアで取り上げられ、その高い能力が世界で認知されている犬型四脚ロボット“ANYmal”。そもそもは、被災地での救助目的で、研究、開発されたこのプロダクトは、これまで、悪路を難なく移動するだけでなく、荷物を運搬したり(10kg程度まで可能)、音楽に合わせてダンスを創作したりと、ユニークなパフォーマンスを披露してきた。そしてこの程、スイスのチューリッヒ工科大学の Robotic Systems ラボが発表した論文によると、進化途上の ANYmal は、開発されたシミュレーション・システムにより、転んでも自分で起き上がることを学習するようになったという。その驚くべき能力とは?

ロボットが強化学習すれば
これまでにない進化が得られる

スイスのチューリッヒ工科大学の Robotic Systems ラボで開発されたANYmal は、防水・防塵性能に優れ、あらゆる地形に対応してスムーズに移動できる画期的な犬型四脚ロボットだ。

高度な自律性を持つことから、オペレーターが操作せずとも、人間が踏み入れることができない場所で作業をしたり、物資を運搬したりすることができる。それゆえ、被災地での救助作業を中心に活躍が期待されている。

2016年に設立された会社、ANYbotics で商品化されると、常にその機能をアップデートさせてきた。とはいえ、ロボットに新たな動作を教え込むには膨大なコストと時間、そして労力がいる。

その問題をある程度解決するには、適切なシミュレーション・システムを備えて、ロボット自らが強化学習することが求められる。Robotic Systems ラボは、それが可能だと実証する論文を発表した。

この論文のなかには、「シミュレーションデータを、以前よりも簡単に、ロボットへ変換できるニュートラル・ネットワークが開発できた」と書かれている。

このネットワークにより、同時に2000台の ANYmal の動作を、リアルタイムでシミュレーションすることができるという。それはつまり、どんなアルゴリズムがどんな結果をもたらすのかを、短時間で調べることが可能になったということだ。

さらなる進化を果たした ANYmal は、エネルギー効率がアップし、スピード・ウォーキング記録を25%上回り、加えて、一定の速度で動くという命令にも従うことができる。

しかも人間がどんなに転ばそうとして蹴ったとしても、常に直立状態を保つことができるばかりか、驚くべきことに、転倒させた場合は、どんな姿勢であっても自ら起き上がる能力を獲得したのだそうだ。

この従来の方法では得られなかった進化は、同様の複雑さを持つ他の四脚ロボットにはないものだ。これからも強化学習によって ANYmal がいったいどんな進化を遂げるのか? 期待せずにはいられない。

 

(text: 長谷川茂雄)

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