テクノロジー TECHNOLOGY

痛みをリアルに感知できるエレクトロニックスキン「e-dermis」とは?

岸 由利子 | Yuriko Kishi

「長年の末、私の義手は、空っぽの貝殻に再び生命が吹き込まれたかのように感じます」――こう語るのは、2018年6月20日、米サイエンス・ロボティクス誌で発表されたエレクトロニックスキン「e-dermis」の試験者として、米メリーランド州Johns Hopkins University生体医工学科の開発チームに貢献したひとり。e-dermisは、義手の指先に取り付ければ、痛みや触覚などのリアルな感覚を再現できるという画期的な発明。だが、あえてなぜ“痛み”を感じる必要があるのか?

エレクトロニックスキン「e-dermis」は、人間の神経システムのレセプターを真似たセンサーを埋め込んだ布地とラバーの2層で形成されている。このセンサーが刺激を感知し、義手を取り付けた腕の切断端を通じて、末梢神経に伝達することによって、触感や痛みまでも再現できる。例えば、触れたものが丸ければ掴み、尖っていれば、反射的に手放す。

従来、義手を含む義肢単体では、触覚はもちろん、痛みの感覚を伝達することはできない。ゆえに、知らず知らずのうちに、義手にダメージを受ける可能性もあるが、e-dermisを付けた義手なら、ダメージを受ける前に、痛みのサインによって、怪我などからも自分を守ることができる。つまり、ここでいう痛みは、これまでの義肢に欠けていた保護のための触感だ。

「心地良い触感から不快な感触まで、より人間の手に近いさまざまな知覚を義肢によって感じられるのは、初めてのことです」と話すのは、Johns Hopkins University生体医工学科教授であり、米サイエンス・ロボティクス誌で発表したe-dermisの論文のメイン著者Nitish Thakor氏。

ただし、今回の研究は、触感と形、痛みの知覚や鋭さの検出に集中したものであり、e-dermisは、温度に敏感ではないと報告されている。開発チームは、今後この技術をさらに進化させ、より多くの人に普及するためのシステム構築を検討している。宇宙飛行士の手袋や宇宙服への適用やロボット分野での採用など、大いに可能性を秘めたエレクトロニックスキン。今後の動向に注目したい。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=AJe3wC6tiJM

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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世界初!HDR対応の眼鏡型VRグラスで、仮想現実がより身近に

HERO X 編集部

4Kを超える高画質をVRで実現! しかも、HDR※ に対応した世界初のVRグラスを、パナソニックが開発した。リアルな映像を実現しながらも、装着に負担がない。米ラスベガスで実施の「CES2020」でも発表されたこの商品が、VRの世界を変えるかもしれない!? ※HDR (ハイダイナミックレンジ) =自然界の明暗差をより本物に近く再現する技術

日々進化するVR(仮想現実)の世界。しかし、高画質・高音質なVRデバイスは、本体が大型化してしまうのが難点だ。いくら高度なVRグラスがあったとしても、従来のようにヘッドバンドで頭部に装着するようなシステムでは、興味のある一部の人は飛びついても、一般の人には敬遠されがちだ。

だが、パナソニックが開発した眼鏡型VRグラスは、普通の眼鏡のように耳にかけるだけ。ゴーグル型のVRグラスよりもさらに気軽に装着することができる。なによりも、これだけ小型化していながら、4Kを超える画質を実現し、眼鏡型としては世界で初めてHDRに対応することに成功した商品なのだ。

世界トップクラスのVRグラス向けデバイスメーカーであるKopin社と共同開発を行い、パナソニックの持つテレビ、ブルーレイディスクプレーヤーなどで培った音響技術や、デジタルカメラの光学技術を結集。映像だけでなく、音質に関しても超低音から高音まで広い音域に対応している。

VRによる映像の再現は、スポーツ観戦や旅行の疑似体験などで、今後ますます提供されていくと予測されている。今までは、エンターテインメント施設で活用されたり、ゲームソフトに対応したりといった、限定された娯楽に使われている感があった。しかし、今後は、より日常的な体験に活用されていくだろう。

例えば、ハンデのある人々の生活を疑似体験するには、VR技術はうってつけである。株式会社ワン・トゥー・テンが開発したVRレーサー『CYBER WHEEL(サイバーウィール)』は、パラスポーツを疑似体験することで、車いすの人の世界を体感でき、さらにパラスポーツの面白さや迫力をより身近に感じることができる。

参考記事:サイバー過ぎるパラスポーツ体験が熱い!車いす型VRレーサー“CYBER WHEEL”

5G時代を迎え、優れたデバイスが次々と開発されることで、人間が得られる体験の幅は広がっていくことだろう。その結果として、豊かな感動を味わえるとともに、より様々な境遇の人々とつながれるとしたら、社会はより良い方向に進んでいくのではないだろうか。

(text: HERO X 編集部)

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