テクノロジー TECHNOLOGY

ウェアラブルなロボットアーム「SPL」は、第3の腕と成り得るか?

Yuka Shingai

忙しいときに口をついて出る「猫の手も借りたい」という言葉も、これからは「ロボットの手も借りたい」になるかもしれない。今回、紹介するロボットは、なんと身に着けられる「ウェアラブル」なロボットアーム。「第3の目」ならぬ「第3の腕」は私たちの生活をよりイージーにしてくれそうだ。

アリゾナ州立大学の研究チームが開発した『SPL』はその見た目が、映画「ゴーストバスターズ」に登場する幽霊退治&捕獲装置のプロトンパックのようでちょっとユーモラス。背負ったバックパックからは内部が液体で制御された弾性素材のホースのようなロボットアームが伸びている。

アームの先に配したバキュームで物を吸いつけ、リンゴやコップ、ボールなどをつかむことから、カードキーをドアにかざしたり、ドアを開けることまで可能。アームは3パーツに分かれ、それぞれのパーツの結合部分をリングで補強することで、柔軟性と強さを保ち、自由自在に動かせるようFEM(有限要素法)と呼ばれる数値解析を用いている。

全体で包み込むようにつかむと、そのものの重さの2.35倍の重量まで持ち上げられる『SPL』は両手がふさがっているときにドアを支える、高いところに置いたものを取る、素手で触るには危険なものをつかむなど日常的な動作のサポートはもちろんのこと、障がいや体の不自由を抱える人のほう助までこなしてくれそうだ。

同チームはまだデバイスの改良にあたっているため、今すぐに使用開始というわけにはいかないが、便利グッズとしてのポテンシャルも高く、一般市場への公開が心待ちにされている段階だ。

(text: Yuka Shingai)

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テクノロジー TECHNOLOGY

ロボットと人間の未来を予感!?アイコンタクトができるロボット『SEER』

HERO X 編集部

その幼子のような表情には、誰もが引き込まれてしまうだろう。日本のアーティスト・藤堂高行氏が開発した『SEER(Simulative Emotional Expression Robot)』は、向かい合う人の視線をとらえ、アイコンタクトができるロボットだ。人々と視線を交わし、うなずくような表情を見せるロボットは、「不気味の谷」を越えるものとなりそうだ。

SEERはロボットの「視線インタラクション」をテーマに作品をつくり続けている藤堂高行氏が制作したヒューマノイド型のロボットヘッド。目の前にいる人間を知覚し、そこに視線を往復させるカメラが組み込まれている。表情は、うなずくような頭の動きと、ワイヤーで作られた眉毛、眼球の動きで表現される。目を合わせた人の表情を模倣して見せることも可能だ。3Dプリンターで製作されたヘッドが、特定の性別や民族を反映していない点も、大きな特徴だ。どの文化圏の人々が利用したとしても、違和感はないだろう。ニュートラルで穏やかな表情は人間に敵意を抱かせず、優しさを感じさせる。

人間がロボットを見るとき、そこには「不気味の谷」が存在するという。ロボットが人間に近すぎると感じたある時点で人々はロボットに不快感を抱き、それを越えて人間と見分けがつかなくなると、再び共感が高まるという現象だ。アイコンタクトを獲得したことで、SEERは「不気味の谷」を軽やかに越えているように感じる。現在はアートプロジェクトとして発信されているが、今後は様々な活用法が考えられていくかもしれない。

一方で、ロボットが実用的な部分で、かなり人間の生活に入りこんでいる実例もある。株式会社ATOUNが制作するパワーアシストスーツは重い荷物の上げ下げをサポートする。

参考記事:ロボットを着て動き回れる世界を夢見る、社会実装家・藤本弘道【the innovator】

工場などで大きなニーズがあり、「腰」をサポートするパワードウェアは累計270台ほど売れているという。働き方改革の面からも、作業アシストロボットは今後大きく注目されそうだ。

実用的なものから人に癒しを与えるロボットまで、ロボット技術は日進月歩ですすんでおり、すでに私たちの生活の中で無視できない存在になっている。SEERがとらえる視線の先には、ロボットと人間のどんな共存が待っているのだろうか。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=opjXuy5uHBo

(text: HERO X 編集部)

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