コラボ COLLABORATION

新展開をみせるCHIMERA GAMES Vol.6に、HERO Xが遂に参戦!【エクストリームスポーツ文化の作り方】後編

中村竜也 -R.G.C

今回で3回目の登場となる『CHIMERA GAMES』エグゼクティブプロデューサー・文平龍太氏。前回のHERO X編集長・杉原行里(あんり)との対談で話していた「何かを一緒にやろう」という話が、今回のVol.6で遂に実現することに。この後編では、同じ価値観を持つ2人が、共通項である“ボーダレス”について、そしてHERO Xの参加について真剣に語った。

ボーダレスの意味を真剣に考える

杉原:よく話題に上がるボーダレスの定義というものがありますよね。そのなかでもHERO XCHIMERA GAMESが考えるボーダレスは近いものがあるのかなと感じているのですが、文平さんが考えるボーダレスとは何でしょうか?

文平:僕が考える究極のボーダレスは、「全員平等の責任を負う」ということです。出来るからこそ全員に責任がある。ということは、これだから許される、これだからダメだよ、という線引きはまだまだボーダーや壁があるということなんです。違う言い方をすれば、歩けようが歩けまいが、動けようが動けまいが、生きている以上、すべての責任を平等に感じられることが、人間社会でのボーダレスだと思っています。

障がい者も健常者も、みんな同じように暮らせる社会とか言っていますが、その意味を掘り下げていくと、結局、誰かが誰かのフォローをしているので、決して平等ではないんですよ。

杉原:そう考えると平等の定義って難しいですよね。先日、CHIMERAチームも参加したレーシングカート大会もそうなんですけど、HERO Xを通して出場してもらった車いすのパラアスリートチームの方たちに対して、僕なりの持論を展開しました。車椅子ユーザーが参加するからという理由で、レーシングカートのスピード設定を落としたりとかは絶対にしないよと。もしそれをしたならば、レーシングカート自体が持つ面白さエキサイティングな文化を失ってしまうだろうし、何より、面白くなくなりますよね。その代わりに足を使わなくても運転できるハンドカートを用意、安全面では特別なシートベルトを準備しました。そうしたら、イコールコンディションで一緒に楽しめる。ギアの在り方に幅を持たせることで、面白さとエキサイティングさを失わず、スタートラインに平等な環境を作り出すことができました。面白い方に歩み寄ること、それが僕の考えるボーダレスなんです。

文平:すごく似ているなって思うのが、各々が持っている精神を大切にするところですよね。

杉原:そうなんです! カートに限って言うと、危なそうだから他から止められたっていう人もいるんですよ。確かにそれも分かります。でも僕が言いたいのは自分で判断しなよ、ということなんです。危ないか危なくないかで言ったら、危ないに決まってるんですから。

HERO X“CHIMERA GAMES Vol.6”に初参加!


杉原:今回、文平さんからお誘いをいただき、“CHIMERA GAMES Vol.6”HERO Xとして参加させてもらうことになりました。まずは素晴らしい機会を与えていただきありがとうございます。

文平:こちらこそ、ありがとうございます。

杉原:今回出展を決めた大きな理由は、運営している方たち、参加しているプレイヤーの方たち、そしてトップに立っている方が人間として面白ければ、間違いなく出展することに意味が見出せるイベントだなという判断だったんです。

文平:すごく分かります。その人が持つマインドを共感出来る人が関わってくれた充実感の方が、僕に取っては大きいです。その信頼関係があれば、その先は続けていくうちに素晴らしいものになっていくはず。なぜなら、その関係にはストレスが少ないから。それがないと、一工程ずつ確認して、積み上げていかなくてはいけないじゃないですか。もちろんその作業は必要なことではあると思いますが、我々はそれが苦手なタイプです()

杉原:たしかに ()。そこで今回HERO Xが参加することで、CHIMERA GAMES自体にどのような変化が生まれるとお考えですか?

文平HERO Xが伝えようとしていることって、今後世の中の人々が必ず向きあわなくてはいけないことで、それを先駆けて発信していると思っています。でも正直なところ、一方では、まだまだ “?” と感じる人が多いジャンルでもあるわけですよね。そこを、まずはCHIMERA GAMESの来場者に届け、伝えたいというのが、一番の使命と感じていることです。

杉原:そう言っていただけると、すごく嬉しいです。

文平CHIMERA GAMES自体も尖ったことをやっているけど、それ以上にHERO Xも尖ったところで勝負しているじゃないですか。まだまだこのご時世だと、繊細な内容でもあるので大概の人は、躊躇してしまう分野だと僕は思うんでね。だからこそ、こうやって接点って出来るんだって感じてもらえたら嬉しいかな。

杉原HERO Xを創刊し6月で1年経ったのですが、はじめ1年間はどこかと組んで何かをやることはまだしないと決めていたんです。放浪の旅じゃないですが、最初の1年の間に様々なジャンルの人に会って、まずHERO Xの輪を広げようと。光栄なことに様々なお誘いを頂いたりしていましたが、そんな理由で、勝手ながら僕の判断で実現には至りませんでした。

僕らがやっていることって、正直、自分事になりにくい内容だと思っていて。大概は、「すごいね」「大変だね」「こんなに頑張っている人たちがいるんだ」で、文脈が終わってしまい、しっくりこないことが多々あります。そういう状況の中で、何か物事を伝えようと思った時、必ずエンターテイメント、すなわちファンが必要。そこをCHIMERA GAMESとなら一緒に解決できるなと感じたので、今回参加させていただくことを決めました。さらに言うと、文平さんたちと一緒に、みんなが楽しめる新しいスポーツを作りたいくらい考えているんですよ、実は。

文平HERO Xの記事をいろいろと読ませてもらっていて、なんで自分にしっくりと来るのかと考え、出した答えは、目線がすごくフラットなんだなということ。すべてを面白がっているから、ワクワク感がある。そこですよ!

杉原:だからこそ、いま自分が持っている武器である、テクノロジーとスポーツを融合して何か新しいスポーツが作りたいと思ったんだと思います。みんなが楽しいというのがまさにポイント。そしてそこには、文平さんが持っているエンターテイメントの場所“CHIMERA GAMES”があるわけですから、このソフトをフルに使って何か表現したいな。

文平:もうさあ、このジャンルのオリンピックを作ろうよ、世界中を巻き込んでね。たとえ成功しなくても、そこには何かは生まれるし。何より、僕らは楽しいと思う()

お互いが持っているチャネルや価値観を無限に広げ、まだ見ぬ未来を目指すことに意味を見出し続ける2人。そして、さらなる進化をし続ける『CHIMERA GAMES』の世界観を体感しに、ぜひ足を運んでもらいたい。



前編はこちら

CHIMERA GAMES Vo.6
日程:2018929()2018930() 11:0019:30(開場10:00)
会場:お台場特設会場(江東区青海臨時駐車場NOP区画)
雨天決行・荒天中止
詳しくはCHIMERA GAMESオフィシャルサイトから
https://games.chimera-union.com/

エクストリーム×ストリート×ミュージック!究極のエンターテイメントを目指す「CHIMERA GAMES」とは?[エクストリームスポーツ文化の作り方]
http://hero-x.jp/article/1314/

CHIMERA GAMES」文平さん、次はどんな面白いことしましょうか?[エクストリームスポーツ文化の作り方]
http://hero-x.jp/article/1722/

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 壬生マリコ)

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選手と開発者をつなぐ“感覚の数値化”伊藤智也×RDS社【究極のレースマシン開発】Vol.2

岸 由利子 | Yuriko Kishi

北京パラリンピックで金メダル2個、ロンドンパラリンピックで銀メダル3個を獲得し、世界の頂点に立つも、引退を表明した車いす陸上スプリンター・伊藤智也選手。今夏、約5年の沈黙を破って、HERO X上で現役復帰を発表し、「57歳で迎える東京2020で金メダル獲得」を目指して、着々と準備を進めている。そんな伊藤選手と共に、RDS社は、エクストリーム・スポーツのマシン開発に精通したエンジニアや気鋭のプロダクト・デザイナーらと「チーム伊藤」を結成し、目下、通称“レーサー”と呼ばれる車いす陸上用マシンを開発中だ。世界に1台のレーサー・伊藤モデルの行方はいかに?今回は、RDS本社で開かれた2度目の研究開発ミーティングのもようをお伝えする。

東京2020に向けて極限まで進化する、
マシンと伊藤智也

本題に入る前に、前回までの内容を少しおさらいしておきたい。9月初旬に行われたキックオフ・ミーティングでは、伊藤選手を囲んで、開発の指揮を執る同社クリエイティブ・ディレクターで、HERO X編集長を務める杉原行里(すぎはら・あんり)をはじめとする「チーム伊藤」の主要メンバー5名が初顔合わせした。5時間以上に及ぶディスカッションでは、車いす陸上という競技そのものやマシンについての質疑応答などが行われたのち、「2018年夏、プロトタイプ完成」を一つの目標に決めた。が、ここで不思議に思う人もいるだろう。東京オリパラの開催は2020年夏なのに、なぜ2年も前にプロトタイプを作り上げるのか?

理由は、主に二つある。まず、乗り心地やポジションなど、選手側からの細かな要望を反映するべく、マシンには、極限のレベルまで改良・調整が加えられていくからだ。RDS社のエンジニアたちは、これまで手掛けてきたチェアスキーのマシン開発を通じて、この段階がいかに重要で、かつ膨大な時間を要するかを熟知している。

もう一つは、伊藤選手がマシンに体を慣らせるために、十分な時間が必要だからだ。とりわけ今回は、自分の体にぴったり合ったオーダーメード・マシンに乗るのは、20余年のアスリート人生の中で、伊藤選手にとって初めての経験であり、新たな挑戦でもある。パラリンピックが「身体と技術の融合」と言われるように、最高のパフォーマンス力を発揮し、勝利を掴み取るためには、自分の体の一部となって共に疾走するマシンと、寸分の狂いなく一体化するレベルに到達するまで、馴染ませていくことが不可欠なのだ。

トップアスリートとの共同開発は、
『感覚の数値化』から始まる

秋晴れの空が美しい10月の朝、チーム伊藤のメンバーがRDS本社に集まり、第2回目となる研究開発ミーティングが行われた。今回、メインとなる課題は「計測」。まず、マシンの“動き”や“しなり”を計測すること。伊藤選手が長年使用してきた長距離用のマシンを3Dスキャナーでスキャンし、走行中の力の分散バランスなども含めた力学的なデータを、モーションキャプチャやフォースプレートを使って計測し、解析していく。次に、伊藤選手の走りを同様の機器を使って計測する。ハンドリムをこぐ時、腕や首、肩などの部位が、どのような角度で、どのように動いているのかということをエンジニアリングの観点から解析していく。

「往々にして、アスリートと開発側のコミュニケーションは一方通行になりがちです。例えば、“こんな感じになれば、もっといい”と選手が言う時の感覚は、当然ながら目に見えるものではなく、いわば、本人にしか分からない体感的なもの。それらを開発側の僕たちがきちんと理解するためには、『感覚を数値化する』ことが不可欠です。そうすることで、選手の意図をより正確に捉えることができると共に、数値という明らかな指標があれば、伊藤選手と開発チームの互いにとって、現状を把握する助けにもなりますし、ひいては、最大限に力が発揮できるマシンの開発に活かすことができます」とクリエイティブ・ディレクターの杉原は話す。

いざ、感覚の数値化へ。伊藤選手の頭、肩、肘、手首などの可動部と、ホイールなど、マシンの各部には、“マーカー”と呼ばれるモーションキャプチャの計測点が取り付けられた。伊藤選手が、100m走を想定して、屋内練習用マシンをこぐ間、天井の四方に設置したカメラが、伊藤選手とマシンの動きを多方向から撮影すると、認識されたマーカーが、パソコンを介してデジタル化した動作として取り込まれ、スクリーン上に映し出される。

車体のフレームに鼻がぴったりつきそうなほど頭を深く下げた前傾姿勢で、伊藤選手が全力疾走を繰り返す間、計測は続けられた。固定された屋内練習用マシンが、今にも超高速で走り出しそうなパワフルな動きに、開発チームの視線が釘付けになる。「マシンとグローブが“ギア”なら、伊藤選手の腕は“車のエンジン”」と杉原が語る意味が腑に落ちてくるようだ。測定したデータを解析用ソフトに取り込むと、各マーカーの変位量が表示され、それらを繋ぐと、車体や伊藤選手のフォームや動きが浮かび上がる。インターバルを挟みつつも、立て続けに走った伊藤選手の額は、汗でびっしょりだった。

ここで一旦、計測は終了。今回、モーションキャプチャで取得したデータを基に、ハンドリムをこぐ時のフォームや、グローブとの整合性を解析するなどして、伊藤選手にとって最適なハンドリムとグローブの開発が進められていく予定だ。

vol.1  獲るぞ金メダル!東京2020で戦うための究極のマシン開発に密着

vol.3  100分の1秒を左右する“陸上選手のためのグローブ”とは?

vol.4  フィーリングとデータは、分かり合えるのか?

伊藤智也(Tomoya ITO)
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。若干19歳で、人材派遣会社を設立。従業員200名を抱える経営者として活躍していたが、1998年に多発性硬化症を発症。翌年より、車いす陸上競技をはじめ、2005年プロの車いすランナーに転向。北京パラリンピックで金メダル、ロンドンパラリンピックで銀メダルを獲得し、車いす陸上選手として、不動の地位を確立。ロンドンパラリンピックで引退を表明するも、2017年8月、スポーツメディア「HERO X」上で、東京2020で復帰することを初めて発表した。

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 増元幸司)

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