テクノロジー TECHNOLOGY

幻肢痛の緩和にも効果大!歩行の感覚を脚に伝える義足の開発が進行中

Yuka Shingai

ロボットや義手を使うことで、手に触覚フィードバックを与える研究はこれまでも数多く発表されてきたが、脚の切断患者に感覚を取り戻させるという試みがスイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究チーム内で進行している。既製品の義足にセンサーや電極を取り付けて、膝を曲げたとき、足裏が地面に着いたときの感覚をユーザーに返しているとのことで、まだ、サンプル数は少ないながらも、今後の期待値は高い。

今回の被験者は膝上からの切断患者と太ももからの切断患者の2人。使用した義足は膝の結合部分にマイクロプロセッサとセンサーが搭載されており、研究チームはさらに、足首につないだコントローラーにBluetooth経由で信号を送る7個のセンサー付きのインソールを追加した。

このコントローラーが、太ももの背面にある脛骨神経に埋め込まれた電極を通じて、神経系に感覚を伝達する仕組みを果たし、脳が膝や足からのフィードバックとして情報を認識できるようになるようだ。

被験者はこの義足を使うことで、歩行時のスピードが上がった、疲れにくくなった、より自信をもって動けるようになったなど回答しており、酸素消費量の減少も見られた。また、多くの切断患者を苦しめる幻肢痛についても、神経に電気による刺激を与えることで大幅な緩和が確認されている。

現時点ではまだラボ内でデバイスの接続が必要だが、同チームは今後、より多くの患者への技術提供とラボの外での使用を目指して更にテストを進めていきたいと語っている。切断患者のQOL向上に大きくインパクトを与えてくれる存在として、続報を待ちたい。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/fVvvwENkXFA

(text: Yuka Shingai)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

テクノロジー TECHNOLOGY

PUMAとMITメディアラボが共同開発した、“生きたスニーカー”ってなんだろう?

中村竜也 -R.G.C

約100年にわたる歴史の中、定番といわれるものから、時代ごとのテクノロジーを詰め込んだものまで、様々な名品が世に送り出されてきたスニーカー。街を歩くほとんど人の足元を飾るだけではなく、多くのコレクター存在するほどマーケットは拡大され、今や一大産業として世界的なブームが続いている。そこで今回HERO Xが注目したのは、スニーカーをはじめとするスポーツウェアを製造・販売するPUMA(プーマ)と、技術の応用から、斬新かつ芸術的な研究を行う「MITメディアラボ」がタッグを組んだ実験的なプロジェクト「Adaptive Dynamics: Biodesign project」が開発した“生きたスニーカー”である。

プロジェクトの主役は、
人間でなくバクテリア

なんでスニーカーにバクテリアなの? って思いますよね。このプロジェクトはバイオテクノロジーを活用しバクテリアに呼吸させ、学習させるのが目的。

もう少し詳しく説明すると、スニーカーのアッパー部分にある無数の空洞に、使用者の熱で活性化するバクテリアを住まわせることで、その人が持つ足の形状からわずかに生じる隙間を抜ける熱の通り道に合わせ変形させる。そして下からは、3層からなるソールの最上部にもバクテリアを生息させ、使用者の汗に反応することでph由来の化学物質を放出しながら生体情報を学習させ足にフィットさせていくというのが、どうやらこのスニーカーのからくりのようだ。

そして、ソール部分の第2層には薄型の電子基板、第3層には電池とマイクロコントローラーを埋め込むことで蓄積されたデータをグラフ化し、スマホなどのデバイスに情報を送信。活動パターンを分析しながら自分に合った運動を可能としている。

また、熱により二酸化炭素で袋を膨らませるイースト菌と、2種類のバクテリアが、靴の形状にフィットしていく「アダプティヴ・パッケージング」と名の付いたスニーカーの梱包袋もすごい。

このような開発が行われていることにより、人間が持つ創造力の素晴らしさにあらためて感動できた。将来的に、この“生きたスニーカー”がスポーツ界の常識を変えることを想像すると、夢は膨らむばかりである。

[画像、動画引用元:MIT Design Lab https://design.mit.edu/projects/puma-biodesign]

(text: 中村竜也 -R.G.C)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー