福祉 WELFARE

グローバルの次はスマートインクルージョン。障がい者の視点が日本を変える

田崎 美穂子

東京2020に向け、「インクルーシブ・スマート化 プロジェクト」が動き出しています。BBT大学講師の竹村和浩氏と、元Google米国副社長村上憲郎氏とで立ち上げた「スマートインクルージョン研究会」。いったいどんな会なのでしょうか。

スマートインクルージョン―あまり聞き慣れないワードですが、「障がい者の視点からIoTやAIを開発することにより、本当の意味での“ソーシャルインクルージョン”を実現する」というコンセプトワードです。障害は本人ではなく、社会にこそ存在する。それをITの力でスマートに取り除き、障がいのある人もincludeされる社会の実現を目指す研究を進めています。

スマートインクルージョン研究会の主な活動は、「障がい者の視点からの技術開発提言」「企業での障がい者雇用の調査提言」「インクルージョンのための政策提言」「プロジェクト実施(移動支援ツール開発等)」。この活動を東京2020に活かしていきたいと思ったきっかけが、かつての「ロンドン オリンピック・パラリンピック」の成功だったそうです。オリンピックよりパラリンピックに重きを置いたPR によって、ロンドン市民だけでなく、全世界の人々の心をつかみ、バリアフリーなどの実現化が急速に進みました。テレビCMにもパラリンピアンが多く出演し、オリンピック選手よりむしろパラリンピック選手にスポンサーが多くついたほど。まさに障がい者の視点に立った方法を採ったことで、オリパラの成功を勝ち取った例と言えます。


2020東京において、中央区の晴海地区に建設予定の「オリパラ選手村」が、日本のAI/IoT技術の集積による「スマート・シティー」「スマート・コミュニティー」のモデルルーム(showcase)として打ち出せることを目標に活動を進めていく、これこそが「インクルーシブ・スマート化 プロジェクト」なのです。さらにその先に、「東京オリパラが終わった後、選手村跡地をIT、ICTの技術で、障がい者の視点からのスマート・ハウス、スマート・コミュニティーのモデル地区にしたい」という壮大な構想もあります。

オリパラ開催こそが、よい日本社会、真のインクルーシブ社会を形成する、そして障害を持つ人々が心から安心して暮せる安全な街・社会を実現させる千載一遇のチャンスとなるのかもしれません。

(text: 田崎 美穂子)

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福祉 WELFARE

リハビリの世界に革命を起こすー トヨタ「ウェルウォークWW-1000」がもたらす、限りない可能性

田崎 美穂子

「歩けるようになる」と「歩ける」とはまったく異なること―脳卒中などで歩行困難となった患者がリハビリを受けながら「歩けるようになる」だけでなく、ポジティブな「歩く意識」を育んでいくパートナーロボット「ウェルウォーク WW-1000」。2017年秋から、レンタルが開始されます。

トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、脳卒中などによる下肢まひのリハビリテーション支援を目的としたロボット「ウェルウォーク WW-1000」のレンタルを、2017年秋より開始すると発表しました。トヨタは、1980年代に自動車生産用に導入した産業用ロボットの技術や自動車の開発技術を応用して、人の活動をサポートし、かつ人と共生する「パートナーロボット」の開発を進めてきました。「すべての人に移動の自由を、そして自らできる喜びを」というビジョンのもと、「シニアライフの支援」、「医療の支援」、「自立した生活の支援」、「介護の支援」の4本柱を軸に開発に取り組んできました。

そのパートナーロボットである「ウェルウォーク WW-1000」は、運動あるいは歩行困難となった患者のそれぞれの状態に合わせ、難易度の調整や歩行状態のフィードバック機能など、運動学習理論に基づいたさまざまなリハビリテーション支援機能を備えたリハビリテーションロボットです。
簡単に装着でき、タッチパネルで一括操作ができるなど、シンプルな構造と機能。また、患者の病態に合わせて「うまく補助し、補助しすぎない」ようにアシストを調整することができ、さらに患者の身体をしっかりと支えるため、従来のリハビリの「転倒の恐れから歩行練習がうまくできない」という問題もクリアになりました。このため、患者が「自分で歩く」という意識を持ちながら、積極的にリハビリに取り組むようになるという効果も得られたのです。

さまざまな臨床的研究を通じ、かつ患者や医療関係者から得た意見をもとに、「ウェルウォーク WW-1000」は下肢の機能回復に大きな期待ができると判断されました。2017年の秋、医療機関に向けて100台を目標にレンタルが開始されます。

これからますます少子高齢化が進む時代、何らかの障がいを持って暮らす人々は増加していき、それを介護する側もまた高齢化が進んでいきます。現役世代人口は減少の一途をたどり、介護側の負担がさらに増えていくことも確実です。「ウェルウォーク WW-1000」をはじめとする「パートナーロボット」を導入することでこのような状況が改善され、未来に向けて自助生活や移動の自由が広がろうとしています。

(text: 田崎 美穂子)

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