ジャスパル・ダーニ(Jaspal Dhani)。彼の話に耳を傾けていると、どんよりとした冴えない気持ちが晴れ、私たちを明るい未来に導いてくれる気がする。だが、彼は宗教の指導者ではないし怪しい予言者でもない。

それでは彼はいったい何者なのか。

ジャスパル・ダーニ氏は2020年のオリンピック・パラリンピック開催を控え、世界中の注目が東京に集まりはじめた2019年に来日。そのインタビュー記事によれば彼は「ロンドンパラリンピックの仕掛け人」といわれている。

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1980年代は車いすバスケットボールのプレイヤーとして活躍、その後は車いすバスケットボールチーム『ロンドン・タイタンズ』を共同創設しコーチ兼経営者として強豪チームに育て上げている。また、24歳の時からインクルーシブ社会の実現に尽力するかたわら、チャリティ活動にも熱心に取り組んできたという。

ここまでの情報だけでも彼がなぜ「ロンドンパラリンピックの仕掛け人」と言われるのか、その理由は充分であり、東京で開催されるパラリンピックのアドバイザーとして、適任の人物であることにも納得がいく。

さらに素晴らしいのは、彼の話が単なるロンドンパラリンピックの成功秘話に終わらないところだ。前述したように、彼は車いすバスケットボールのプレイヤーとして活躍するかたわら、24歳の頃から一貫してインクルーシブ社会の実現をめざしてきた。若いころから、障がいのある人もない人もお互いに尊重し支え合う共生社会に向けて、さまざまな活動に取り組んできたのである。ロンドンパラリンピックは、その取組の一つにすぎないのだ。

自分の障がいに向き合い、高みを目指すパラアスリートであり、めざすべき社会のあり方を示す国際的な指針ともいわれるインクルーシブ社会を目指す活動家としての実績を考えれば当然のことかもしれないが、彼が行ってきたことは地道に日々トレーニングを重ね、そして深い洞察力を基に行動してきただけだ。

誰にでも簡単にできることではないと敬遠する人もいるだろう。だが、彼の歩んできた足跡を見れば「今からはじめることで明日を変えることができる」ことは誰にでも可能なことだと教えてくれる。

インタビューで語られる彼の言葉を聞いていると、私たちも「今からはじめることで明日を変えることができる」という気持ちになる。

答えはいつもシンプルだ。何もしなければ何も変わらない。だが、今起こした行動で明日は変わる。誰もが忘れがちな、こんなあたりまえのことを思い出させてくれる情熱が、彼のしてきたことの中にはある。

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