体の動きでコントロールするという新たな発想

車いすは、通常両手で車輪を回して前進する。この常識をこれまでになかった構造とデザインで変えようとしているのが、スイスでデザインを学んだReto Togni氏だ。

同氏が開発した“The Reagiro”は、背もたれと前輪が連動する画期的な車いす。体を左側に傾けると右側の前輪が前に、左側に傾けると右側の前輪が前にスムーズに動く。すなわち、体を左右に動かせば、2つの前輪が交互に動くため、車いすは前進する。

その動きは、まるでノーズ(先端)をダイナミックに左右に動かすことで前進するスケボーのトリック、“チックタック”のようだ。

この人力で動く機能が備わったことで、“The Reagiro”に乗るときは、車輪を常に漕ぐ必要がない。それゆえ、従来の車いすとは違い、手を自由に使うことができる。傘をさしたり、スマホをいじったり、コーヒーを飲むことだって可能だ。

加えて、ひとたび車いすが動き出せば、体を傾けるだけで極端に減速することなく左右にターンができる。多少コツは必要だが、体の動きでこれだけ自在にコントロールできる車いすは、ユーザーのライフスタイルを大きく変える可能性を秘めている。

無駄がなく極めてシンプルで、洗練されたデザインも注目されている“The Reagiro”。自転車からインスピレーションを得たというフレームは、一部が3Dプリンターを使用して作られているという。最先端の技術を適度に取り入れた柔軟なモノづくりの視点は、ユニークなだけでなく、さらなる進化も期待させる。

現在、特許を申請中で、医学的な検証を待っている状態ではあるが、製品化が実現する日もそう遠くはないだろう。

TOP動画転載元:https://vimeo.com/241137824