高校時代は州大会の800メートル、1600メートルで優勝を収めるも、7年前、コンパートメント症候群により右足を余儀なく切断することに。「足を失ってから、世界で一番速いスプリンターになりたいと思っていました」―そう語るウォレス選手が、新たに手を組んだパートナーは、Xiborg(サイボーグ)社。なんと、競技用義足の主流を担う欧州企業ではなく、日本でその開発を独自に行うメーカーだったのです。
多くのトップアスリートと同じように、アイスランドのオズール製の競技用義足を長年使用していた全米王者のウォレス選手ですが、どうやら、“履き替え”の時が来たようです。Xiborg社との出会いが実を結び、今年5月に共同開発契約を締結。2017年シーズンから、ウォレス選手が、同社製の義足で試合に出場することはもちろん、練習や試合での使用感などのフィードバックを活かした義足開発を進めていく方針です。
5月21日(日)に等々力競技場で行われた「セイコー ゴールデングランプリ陸上2017川崎」では、同社製の義足を履いたウォレス選手が、パラリンピック種目男子100メートルT44(下肢切断)で初のお目見えをし、11秒17でみごと優勝。
リオパラリンピック同種目では、金メダル最有力候補と叫ばれていましたが、悔しくも、結果は5位に終わりました。「それはもう過去のこと。今年からXiborg社の義足を使うことを決め、これまで以上コンスタントに早く走れるように頑張ります」と前向きな姿勢で未来に挑むウォレス選手。
「私たちの競技はトレーニングするだけでなく、義足というテクノロジー、またそれを扱う技術が非常に重要です。Xiborg社が持つ技術と経験は、私の夢の実現、つまり世界が見たこともないくらいに速い義足スプリンターになるための重要なパートナーになることでしょう。この義足とともに東京パラリンピックで私たちの夢を叶えたいと思います」
「最近は日本人選手の活躍に注目されがちですが、“日本の技術”が世界の舞台で活躍し注目される場にもなって欲しいと考えています」と語るのは、同社代表の遠藤謙氏。全米王者のウォレス選手のさらなる活躍によって、“メード・イン・ジャパン”の競技用義足テクノロジーの素晴らしさに、スポットライトが当たる日は、そう遠くないのかもしれません。