東日本大震災から10年。復興の途上にある東北で、新たな産業の構築に駆け回る起業家、島田昌幸氏。彼が目指すのはアナログ×デジタルで行う東北発の防災産業だ。島田氏が考える産業とはどのようなものなのか。島田氏自身が語る。
新型コロナウイルスの影響が、あらゆる産業界に出ているなかで、新しい概念や価値観が求められている。私たちは、東日本大震災を通じて今までの暮らしや仕事、家族・仲間のあり方を考えさせられ、困難を経験し乗り越えてきた。被災地域の1次産業は壊滅的被害をうけ、人口流出は免れず、一気に高齢社会は加速した。こうした中で、その時々の対応をした企業と次に訪れる未来を予測し、動いた企業の差が大きくなっている。
つまり、この新型コロナウイルスの影響を新しい機会として捉え、10年後を見据えて動き出していく企業や個人と、今の足元の対応をしていく人たちの差が大きくなることが予想される。東日本大震災は東北の課題に対して、日本・世界が支援をするという矢印だったことから、支援という枠組みを超えることが難しく、新しい仕組みや社会システムの創造ができなかったと振り返る。
一方でこの新型コロナウイルスは日本だけではなく、世界共通の課題であることから、ここから生まれる新しい暮らしや生活の在り方は世界規模で通用するチャンスがあり、それらを下支えするのがテクノロジーだと考えることができる。
私は、四半世紀以上変わらないし、成長もしない災害対応をあらゆる産業と手を組み、宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ)ともプロジェクトを立ち上げ、自らの災害体験や経験をテクノロジーの力を使って、災害時でもいつもの暮らしができるように、新しい商品やサービス開発を推し進めている。
私なりに考えるnew normal × technologyは、災害や疫病下においても普段と変わらない生活、暮らしを過ごせることが重要であると考えている。
社会には、子ども、高齢者、ハンディキャップのある方々など、普段の暮らしにもストレスを抱えている人がたくさんいる。これらの課題をテクノロジーの力を使って解決することがあらゆる人たちの利便性の向上につながると考えている。
災害、疫病下の時だけではなく、日ごろから災害、疫病対応の暮らしをデュアルユースによって生活をしていくことが重要であり、コスト面から見ても非常に重要な考えだと思う。
今回、新型コロナウイルスの影響で子どもの教育機会は著しく奪われたが、日ごろから教育×テクノロジーの力を使って授業が推進していれば、これらの課題は解決できた。この件については、日本共通の課題であることから、文部科学省はGIGAスクール構想を前倒しで着手している。つまり、こういった難局によって新しい基盤が作られ、新しい社会が生まれていく。その中でまた新しい課題が生まれ、ビジネスとなっていく。
私は、社会の在り方が、人肌を感じ、思いやりの精神によって新しいビジネスが生まれると考えている。最後に、テクノロジーの力を使って、社会課題を解決するためには、あらゆる企業の経営資源をつなぎ合わせることによる、産業の枠を超えたの再結合が重要で、日本の底力を見せる時ではないだろうか。
島田昌幸(しまだ・まさゆき)
株式会社ワンテーブル代表取締役CEO。大学在学中に教育ベンチャーを創業。2005年、経済産業省チャレンジコミュニティプロジェクトに参画、最年少プロデューサーとして、日本全国の地方創生に関わる。2007年から国土交通省認定の観光地域プロデューサーとして活動し、数々の地域プロデュースを手がける。2011年には日本CSR大賞準グランプリを受賞。企業イベント、商品・サービス開発、事業開発など数多くのプロデュースを手掛けている。2016年11月、ワンテーブルを設立。